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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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消えたモータル

「……ん」


 本へと没入していた意識が、部屋に差し込む夕日で急速に現実へと引き戻される。


「あー……持って帰れたらすっげぇ助かるのにな」


 そんな事を言いながら立ち上がると、見張り役のようなギルド員と目が合い、ギロリと睨まれる。


「あ、あはは……」


 睨みを愛想笑いで流しつつ、本が元あった棚へと向かい、戻した。


「……宿に戻ってモータル連れて夕飯食って……さーてと、明日の予定はどうするかなぁ」


 長時間同じ姿勢でいたせいか、凝り固まった全身を伸ばしゴキゴキと音を鳴らす。


 そして、ギルド員に会釈をした後、資料室を出た。







タカ:はい。宿に帰還しましたよ、っと


ガッテン:おつ


ほっぴー:なんかモータルが揉め事起こしたみたいだけど大丈夫か?


タカ:は?


タカ:詳しく


ほっぴー:いやなんか、チンピラに絡まれたって


タカ:もしかして殺したのか


ジーク:選択肢の一つにそれが浮かんじゃう時点でお察し


ほっぴー:分からん


タカ:分からんって何だ!?分からんとかあるの!?


ほっぴー:追っ払ったとしか聞いてない


ジーク:この世から追っ払った可能性


スペルマン:モータル氏、言い聞かせられてるから渋々報告やってるだけで、基本伝える気がないからなぁ


ガッテン:むしろチンピラの件を報告した事その物が奇跡じゃないか?


タカ:勝手に自己完結して話さなかったりするのザラだしなぁ


ほっぴー:お前も大概ですが


ジーク:オマエモナー


ガッテン:ブーメラン三銃士やめろ










「おーい、モータル。入るぞー」


 隣の部屋をノックした後、扉を開けようとするが、鍵がかかっており開かなかった。


「……居ないのか?」


 途端に焦燥感に襲われる。


 もしかしなくても滅茶苦茶やばい状況じゃないか?



 いや待て。

 一度掲示板に報告をしているという事は、一度は宿に帰っているはず……ああいや、やむを得ず外で使用した可能性もあるか?

 

「どっちのパターンでもやばい状況ってのは変わらないな」


 結論ってのはいつだってシンプルだ。


 やべぇ。


 この一言に尽きる。



 俺は鞄を背負い直し、夕日の差す街へと駆けだした。








 慌てた形相で走る俺に、道行く人々から奇異の視線が浴びせられる。


「……チッ、見世物じゃねぇぞ」


 通行人に話を聞こうにもどう聞けばいいのか分からない。


「だから俺ぁ知人がいっさい居ない土地に旅行すんのが嫌いなんだよ……!」


 いざという時にその土地を知る頼れる人間が居ないというのは、かなり辛い。

 

 異世界でそんな場所を求める事自体間違っているってのは理解の上だ。せめてこれが三日目辺りで、多少顔見知りが出来てきた頃だったら……!


 そんな事を心の中で呟きつつ、周囲を見渡す。

 すると、そこに見知った顔があった。


「ギルド員さん!」


「ひゃ、ひゃい!?」


 資料室で俺を睨みつけてきたギルド員さんだ。


 仕事終わりで帰宅中なのか、ギルド員の制服から私服っぽい服装に変わっており、先ほどは掛けていなかった眼鏡をかけていた。


「俺と一緒に資料室に来た奴がいつごろ出て行ったかって分かりますか!?」


 質問してから思ったが、掲示板で聞けば済む話だったな。ちと慌て過ぎだったかもしれん。

 そんな事を考えていると、ギルド員から返答があった。


「え、えと、貴方が二冊目の本……王都の祭り・風習、って本を読んでる途中で資料室から出て行ってました!」


 あの野郎、割と早めに飽きやがったな。

 はー、まいった。探索範囲が広すぎるぞこれは……


「ありがとうございます!えーと、明日もおそらく顔を合わせる事になると思いますので!よろしくお願いしますね!」


 ペラペラとよく分からんことを口走ってしまったが、まあいい。


 ギルド員さんに手を振り、駆け出す。その行き先は……


「最悪のパターンではあるが……可能性は高いよなぁ、やっぱ」


 王都西区。いわゆる、スラム街と呼ばれる場所である。








 スラム街に到着するなり、辺りに怒号が響いた。


「追えーーーーッ!」


 別に酔っ払いが盛大に嘔吐したとかではない。

 その証拠に、俺の曲がろうとした道から一人の男が飛び出してきた。

 しめた!モータルに違いねぇ!

 俺はすかさずその男へタックルを繰り出し、そのままホールドした。


「捕まえたァ!……誰だお前!?」


「こっちのセリフだよ!?誰だお前は!?」


 だが俺が捕まえたのは、褐色肌の額に薄汚れたタオルを巻いた少年だった。


「おおい、誰かが捕まえたみたいだぞーーー!」


「……!チッ!離せよ!」


「離すかボケ!こんな金の臭う案件……!うまく取り入れば……」


 食材大量購入のコネをゲットするチャンスかもしれねぇ!


「こいつ最低だ!?……あー!クソ!なんでこんなに力つえーんだよ!離せーーーーーッ!」


 暴れる少年を取り押さえていると、路地からまさにチンピラといった身なりの男達が四人ほど出てきた。


「おお!あんた、誰か知らないが助かるぜ!」


「てめぇ、マジで無関係な人間かよ……!離せってば!」


 少年を取り押さえる力を強めつつも、やってきた男達を眺める。


 明らかに、負傷の跡がある。


 これは……


「なあ、アンタら。髪ぼっさぼさでやたら強ぇ男がそっちの世話になってないか?」


「……」


 俺の言葉を聞くなり男達が一斉にナイフを構えた。

 短剣はいいぞ。


 ……じゃなかった。


「おいおい。いいのかぁ?お前らってのは、借りを大切にしなきゃならん世界に身を置いてるんじゃねぇのかよ?俺ぁコイツを捕まえてあげたんだぜ?」


 俺の言葉に、先頭にいたチンピラの眉がピクリと反応する。


「それに、正当防衛に近かったんじゃないのか?どうする?やるってんならやるぞ。ただ、まあ、このガキはその隙に逃げちまうだろうがな」


 正直現地人の戦闘力が掴めない間はあまり戦いたくない。

 俺のセリフは、ブラフに近い。


「……てめーら、武器下ろせ」


 先頭のチンピラ……剃り込みをしているので仮にソリコミくんとしておこう。ソリコミくんの一声で後ろのチンピラ三人がナイフを下ろした。


「確かに、お前の言い分は一理ある。そのガキを渡せ。お前さんの友達と交換だ」


「現物見るまで信用できねぇな」


「なら付いて来い」


「誰がてめーらのホームになんぞほいほい付いていくか。ここで待ってるから連れて来い」


「……」


 ソリコミくんが鬼の形相でこちらを睨む。


 はー、怖い。怖い。レイドボスの咆哮の0.01倍くらい怖い。


「……てめぇら、そこに残れ。俺が連れて来る」


 俺が余裕綽々なのを見てか、諦めた様子でソリコミくんが路地の方へ歩いていった。



「……おいガキ。何やらかした」


「いででで!言うから!言うから二の腕つねるのやめろ!」


 それと同時に、俺は小声で尋問を開始した。



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