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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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40/339

ようこそ魔王軍研究部練成科

「一旦帰還したい?」


「はい」


 アルザの前に俺とほっぴーで並び立ち、頭を下げる。


「「スマホ使えないのすっげぇ暇なんで帰らせて下さい!!」」


「……正直なのは良い事だ。まずはそこを褒めよう。……おい、そこのバンシー!僕の研究道具に触るな!隣に居る君も……君、名前は」


「蝙蝠屋敷の主です」


「名前じゃなくて種族名じゃないか。……もしかして名前が無い?」


「え、ええ、まあ」


 その言葉を聞いた瞬間アルザの目が爛々と光りだした。


「君、ネームドに成りたい、なんて思ったりはしないかい?」


「アルザ、そいつは俺の魔物だ」


「分かってるさ。だからもし僕がやるとしたら、お膳立てだけ。名付けは君に任せるよ」


 名付け。名付けねぇ……



 ゲーム時代、名付けは有料コンテンツの一つだった。

 その事が、無意識に「名前を付ける」行為を避けさせていたのかもしれない。


 名付けを行った魔物は、ステータスに若干の補正がかかるようになる。

 だがそれは微々たるモノであったし、無いと言ってしまっていいような数値だった。



 ……いや、御託を並べるのはやめよう。

 何故、俺が、いや十傑が。名付けを忌避していた(若干数名の異常者共を除く)のか。その真の理由は別にある。



 恥ずかしかったのだ。


 通常のMMORPGであればたかが自分一人が、お気に入りの魔物に名前をつけていたとしても、大して目立ちはしない。

 だが、残念な事にあのゲームは……どうしようもなく、過疎っていた。


 10人だけの集団という狭いコミニティーの中、自分だけガチ臭プンプンの名付けなんてしようモノなら、即座に全体チャットで「昔好きだった人の名前かなんかか?」等と揶揄される事は想像に難くない。というかそれで一度ガッテンが晒し上げられて憤死した。


 七色の悪魔さんの魔物への名付けに関しては皆で微笑ましく見守るという措置が成されたものの、俺含む他のメンバーはその限りではなかった。


 俺もガッテンの晒し上げに尽力した側だからよく分かる。アレはマジでキツい。

 アイツら、ああいう時だけ急に生き生きし始めるんだよな。どうしようもねぇ奴等だよほんとに。


「……タカ?どうしたんだい?」


「ああ、いや、ちょっと思い出を振り返ってて、な」


 俺がそう答えると、アルザは頭上に疑問符でも浮いてそうな顔をしながら、首を傾げる。

 まあアルザは俺がどんな名前を付けようが野次をとばしたりはしないだろう。問題は……


 チラリ、と隣を確認すれば、ほっぴーがニヤニヤしていた。


「タカ、丁度良いじゃねぇか。名付けてやれよ。お前の渾身の名前をよぉ」


 この野郎……!精神が腐りきってやがる……!


「おい、おっさん」


「なんですかな……じゃない、なんでしょう」


「名前、“おっさん”でいいか?」


「もうちょっとマトモな名前にしてあげなよ!?」


 アルザからすかさず突っ込みが入る。クソ、マトモな名前が一番恥ずかしいんだよ。


「まあ聞けよアルザ。俺はな、おっさんの事をいつだっておっさんと呼んできた訳だ」


「どう話を着地させるつもりか知らないけど却下、却下!名付けって結構コスト食うんだからおざなりにやってしまおうってんならやらせないよ!」


 んだよ畜生。お前が言い出した事じゃねぇか。


 ……別にこのまま諦めても良いのだが、課金コンテンツが無料で使える!という誘惑に未だ逆らえずにいるのも事実。

 というかアルザの様子を見る限り、名付けはゲームの頃とはまた少し仕様が異なっている感じがする。


 己のプライドと、戦力の増強。秤にかけるまでも無い事柄だが、それでもなかなか踏ん切りがつかない。


「……ウォッサン、なんてどうだ?」


「主殿。出来ればもうちょっとマシな名前に……」


「じゃあもうお前が決めろよ」


「名付けは主人が決めてやらないとなぁ。僕としてもお膳立てする気が失せる」


 なんだってんだよ。


 

 ……ああ、もう!分かった、分かった。決めてやるから!


「セバスチャン!で、どうだ!」


「ヒュー、お決まりだねぇ」


 ほっぴーには後で臓物の位置ズレるくらいのボディーブロウをかましてやろう、と決意しつつ、アルザとおっさん……もとい、セバスチャンの……いやー、駄目だな。


「やっぱおっさんはおっさんだな……止めとくわ」


「主殿!?」


「……まあ、僕も無理に、とは言わないよ。いきなり言ったせいで混乱させてしまったようだね」


 本当だよ。


 ……ん?


「あう!あう!」


 くい、くい、と袖を引っ張られ、その方向に顔を向けると、バンシーが何やら必死な形相であうあう言っていた。かわいい。


「もしかして名付けか?」


「!……がるぅ!」


「あー……そうだな、なるべく可愛い名前が良いよなぁ……」


「主殿!?我輩の時と対応が!かなり!違うんですが!」


 当たり前だろ。

 バンシーちゃんだぞ?


 お腹ぐにぐにやぞ?分かってんのか?


「おお、タカの目が本気だ……!これは期待できるかもしれない!」


 というか何でアルザはここまでして名付けをさせようと……

 いや待てよ……?ネームド狩り……


「アルザてめぇ、名付けた瞬間殺すつもりじゃねぇだろうな」


「僕をどんなサイコ野郎だと思ってるのかな!?君達とは違って僕は普通の感性をしているよ!?」


「あう……あう……」


 俺の心労を悟ってか、バンシーが俺にしがみつき髪をわしゃわしゃと擦り付けてきた。

 かわいいなぁ。


「こんなところでイチャつき始めるなんて神経を疑うぞ……というか、突っ込み所が多すぎてスルーしてたけど、さ」




「あの部屋から出てきて良いなんて一言も言ってないよね?そしてあの部屋からここまで、誰に道を聞いて来たのかな?」




 ……いや、だって。出ちゃ駄目とも言わなかったじゃん?



「普通出たら駄目だろう!?そして開口一番、帰りたい、ときた!連れてる魔物は勝手に僕の研究道具に触るし、しまいには主人とイチャつきだす!ハッキリ言おう!こんな奴の相手は初めてだ!いや、面白い連中だとは思ってたし、時折、狂気が見え隠れはしていたけども!こんな、こんな有様だなんて思わないだろう!?常識ってものが君たちには一切無いのかい!?」


 アルザはそう一気に捲し立てると、肩で息をしながらドサリ、と椅子へと座り直した。


「でも名付けの話になったら結構ノリノリだったよな」


「タカ。追撃はやめとけ」


「うわあああああああああん!!!!」


 とうとうアルザは泣いた。







ようこそ(不法侵入)

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