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第597話 春闘その二

結果として、キティルハルムは退いた。


しかし、気は抜けない。


私は、春闘の会場のキティルハルム闘技場の女王席に腰を降ろした。


すでに観客や審判員が観客席に詰めていた。


「新任商工ギルドマスター・ナキ・ミケランジェロ!

新任宰相フェリーナ・エラル!

入場してください!」


やがて、評議員のローブを着たナキとまだ少女の風貌の宰相が進み出る。


ドンッ!


私は、至宝・黄金の熊(ベア)を置く。


これは、初代騎士団長アルムが仕留めたクマのそれを、石膏取りして鋳造した由緒正しいシロモノだ。


建国期から伝わるそれは、まさに至宝といえる。


「今年の春闘となりました。雇用者代表・新任商工会ギルドマスター・ナキ・ミケランジェロ。

労働者代表新任宰相・フェリーナ・エラル・・・

この「黄金の熊(ベア)」を擬似的に落札してください。

勝った方が、雇用賃金案を提出できます。」


「一万にゃ!」


ナキが、先手を打つ。


「三万です。」


「五万!」


「八万!」


「十五万!」


「二十万!」


「三十万!」


新任宰相フェリーナは、母親似で才能ありとされる・・・


「五百万!」


「ぐッ・・・」


「もう出ませんか?」


私は、声をかける。


「・・・・・・」


「では、勝利は「宰相」です。労働者の最低賃金は、時間当たり五百ノワールの法案が、評議会に提出されます。そして、お金はこの場合必要とされません。

来年の春闘まで、「黄金の熊(ベア)」は、王家の預かりとなります。」




「ぐはーッ!

商工ギルドマスターは、やっぱり負けるのかにゃーッ!」


ナキが吠えた。



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