第567話 ある大魔王の墓参り2
トラルティール王国の、王都トラルティア。
その一画、ティアムル宗家の墓地の最もさびれた場所に、勇者エミアと夫ヘイゼルの墓はあった。
「墓碑の文字がわからんが・・・」
ウォルストがつぶやくと、墓碑が光り文字が浮かび上がった。
「「レイスト・エミア・ティアムルここに眠る。」・・・
お前は、生涯傷を癒せずに生きたということか・・・」
「私にはわかるわ。
彼女の気持ちは。」
「・・・・・?」
「この墓碑は、恐らく彼女が編み出した魔術。
あなたのような経緯で、混沌神波動に覚醒した人でなければわからない仕掛けよ。
死後ももてはやされたくなかったようね。」
そうして、勇者の一族としての栄光は、分家のさらに分家筋にあたる「ライテス家」に「譲渡」されていく・・・
「ライテスめ・・・
地球での前世での経験だけでなく、いわば「先人の負の遺産」を受け取りたくなかったということか。」
ウォルストは、続ける・・・
「私がかつて、人間だったころ・・・
レイスト一族・・・
光の勇者の一族は、三大宗家を除いて腐りきっていた。
優秀な騎士や魔導士、錬金術師になれるのは当たり前だった。
なにせ、学んだり鍛えたりすればそれはそのまま力になっていたのだからな。
中には、事業を興して大成した者もいたらしい。
だが・・・
そこまでいかずとも、世間で通用する力を得られていたのだが。」
ふと思ったことを、聞いてみる。
「アレね・・・
テストで70点取れればいいのに、「500点取らなきゃぶっ殺す!」って親ばっかだった?」
「よくわかったな。」
「私の前世の学生時代、そんな親が特にエリートに多かったのよ。」
こいつ・・・
酷い親に育てられたと違うか?




