第566話 ある大魔王の墓参り1
「ミリアム様。
大魔王ウォルスト様がお見えです。」
執務が終わったころ、イリアが報告してきた。
「応接間に通して。」
応接間・・・
「唐突だが、頼みがある。」
大魔王ウォルスト・・・
彼は、「勇者の一族」から生まれた魔王だ。
「ある女の墓参りに行きたい。
私が一人で行けば、門前払いを受けそうだ。」
「その人は・・・
勇者エミアですか?」
「うむ。」
勇者エミア。
かつて、ウォルストが「レイスト一族の反逆者」を率いて世界を破滅に導こうとしたとき、それを止めた「三代目レイスト」・・・
「私のせいで、全ての栄光の道を捨て、隠居して余生を過ごしたと聞く。
不遇の人生を送った私からしてみれば、羨望の象徴だったが、心に傷を負い輝かしい道を全て捨てたようだ。」
「なぜ、今行こうと思ったの?」
「かつて私の言ったことは、間違っているとは思ってはいない。
だが、だからと言って力で全てを成してはそれは認められぬのだ。
お前の授業を聞いていた魔王の一人が教えてくれた。」
ウォルストは、私を見た。
「戦いが終わった後、どういう心境だっただろうか。
歴史の記録とやらでは、女王の親衛隊長の座も用意されていたらしい。」
「わかった。
付き添うわ。
けど、事が重要なだけに期待しないで。」




