第528話 人命
「大変なの!」
執務が終わったとき、ユニィが駆け込んできた。
「医局総官のドリス・ミア先生が、急患を手術していて・・・」
「ユニィ!
あなたは、王立図書館から「勇者レイスト魔法全集」をもってきて!
私は、現場に向かう!」
「わかったの!」
私は、駆け出す。
恐らく、ドリスの手術は成功だ。
しかし、患者の身体が持たなければ、意味がない。
「へ・・・陛下・・・!」
白衣姿のドリスが、うろたえている。
「これは・・・」
患者は、十代の少女。
「体力が消耗しきっている・・・
エリキシル一本に、「エンペラーコブラ一週間」を一滴調合!」
「は・・・はい!」
てきぱきと、処置していく。
「母さま!
もってきたの!」
「ありがとう。」
ユニィから魔法書を受け取り、「究極の回復魔法」の項を開く。
「これは・・・」
二代目勇者レイストが開発して、レイスト一族の魔導師が得意とする大魔法・・・
よし・・・
速効で術式を組み立てて、アレンジしてやる!
「黒猫女王の癒手!」
光が患者を包み、傷を塞ぎ、体組織を活性化させる。
「よし・・・!」
それを見届けて、ドリスは患者に薬を飲ませる。
「ふう・・・
体力の八割が回復・・・
ありがとうございました陛下・・・」
「なに言ってるの!
あなたは、私もユニィもとりあげてくれた人でしょ?
それに・・・」
私は、ドリスの目を見る。
「「命」そのものに、貴賎はないわ。」




