第411話 改名・発酵職人バッカス
「なんか・・・
僕の周りが、うるさいんだよ・・・」
リヒャルト王と、視察の打ち合わせをして王宮に戻った私に、発酵業務用マウス一号が言う。
「いままで、「発酵野郎」とか「発光野郎」とか言われてたけど。」
今、彼は人鼠の姿だ。
特製ワインを、発酵助手一号と共に「創作料理アリア」に届けてから、代金と領収書をもらい、王宮にいた。
「あなたの父上がね・・・
「外」の王様にバカ笑いされて、改名したのよ。」
「どうりで・・・」
発酵業務用マウス一号は、考える・・・
「発酵・・・
納豆・・・
チーズ・・・
ヨーグルト・・・」
食い物ばかりだ。
「うむむ・・・」
さらに考える・・・
「醸造酒・・・
ラム・・・
ワイン・・・
ん?
酒・・・
閃いた!」
そして、一息で言う。
「バッカスだ!
ギリシャ神話の・・・!」
「・・・・・・」
かつて・・・
ゼウスの子として生まれた、ディオニソスは、少年時代に腐ったブドウの果汁を飲んだことで悟りを開き、「神」となったという・・・
そして、独学で研究し、ワインを発明したとされる。
彼のラテン語読みが「バッカス」である。
「安直ね・・・
いいんだよ!
さて、助手にも名前を考えてやるぞ!」
「いいんですか?」
「ああ!
メイプルだ!」
「ありがとうございます!
あ。
帰ったら、名簿に再入力ですね。」
「ああ!」




