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第376話 アニス
その日ユニィは、長女を出産した。
目が大きく、かわいい。
正統なノワール種だ。
「ありゃ・・・」
疲れて眠っているユニィ。
その背に翼が生えていた。
「ありゃりゃ・・・
力んで、覚醒しちゃったか。」
私は、娘を見た。
「お?」
すでに授乳を済ませ、おとなしくなっている赤ん坊の産着には、「アニス」と書かれたプラスチックのプレートが・・・
アニス・・・
子供の頃、狼を返り討ちにして食べてしまったニウ二世のファーストネームである。
すごい名前をつけるな。
「おんや・・・
もう生まれてたか。」
発酵業務用マウス一号が、シルヴィアを抱いて現れた。
「いやあ・・・
赤ん坊ってかわいいねえ・・・」
「言ってられるのは、今よ。
五年もすれば、暴れまわるから。」
「うげ・・・」
「あなたも覚悟なさい。
「父親」ですからね。」
「この子の父親は・・・」
アルムスは、ユニィの側で眠っている。
立会いに疲れたらしい。
「この子たちの学友たちの出産も、無事に終わったようだし。」
「もしかして、お姫様たちと一緒に彼らを地球に行かせる計画を立てたのは・・・」
「閉鎖空間だと、そうなりやすいしね。」




