第362話 祖母の仇
その日・・・
バルカン重工会長リリ・バルカン・ミケランジェロ宅・・・
会長の娘で、社長のカナ・バルカン・ミケランジェロは、朝食の時間になっても起きてこない母を心配して、リリの自室に向かった。
このところ、母は忙しかった。
「自殺騒ぎ」の現場は、そのままの形で、目立つように保存・封鎖、当該工程は新設。
幹部教育の教材として、労働基準遵守の戒めとして・・・
ラインは、男女隔離・・・
徹底していた。
従業員は、この「内部改革」に意を唱えなかった。
否、唱えられるはずもない。
「母ちゃん・・・
いや、会長は胃が痛いって言っていたにゃ・・・
だからと言って・・・」
がちゃりとドアを開ける。
「メシだにゃーッ!
って・・・
か・・・
母ちゃん・・・
ほ・・・ホントに・・・」
カナの目に映ったのは、邪馬台国風の白装束に身を包み、腹を剣で貫き、息絶えたリリの姿だった。
「この度は、女王陛下や評議委員の皆様、並びに国民の皆様から、お預かりした従業員や工場を損失したことを、深くお詫びします・・・
ついては・・・
会社の組織改革も済み、人事も決定いたしましたので、心残りはありません。
公約どおり、潔く腹を切ります・・・
カナ・バルカン・ミケランジェロ」
と、側にあった遺書に書かれていた。
「か・・・母ちゃん・・・
大変にゃ!
あいつが・・・
アル・ファシルが、消えたって!」
朝食を摂っていた娘で、若い専務のファナ・ミケランジェロが、声をあげた。
朝のニュースを観ていたらしい。
そして、ファナは・・・
「絶対あいつ・・・
大魔王になったにゃ・・・!
あちし・・・
志願するにゃ!
ばあちゃんと・・・
二人の仇を討つにゃ!」




