第319話 過労自殺!?
ホームズは、バルカン重工本社工場に足を運んだ。
「あの子は・・・
あちしが、目をかけてたにゃ!
次期社長秘書にしてもよかったにゃ!
カナの右腕にぴったりだったにゃ・・・
うわーん!」
泣きじゃくるリリ社長・・・
「まさか・・・こんなことになるなんて・・・」
ホームズの対応に応じたのは、女性従業員の上司のアル・ファシルという男。
課長だそうだ。
エラル家の傍系という、この男の耳と尻尾は、確かに「アメリカン・ショートヘア」だ。
ただし、きつすぎる性格のせいか、「本家」ほどモテない。
「そういえば、最近ヒナは調子が悪かったにゃ!
そのせいで、ミスを連発して・・・
みんな、休ませろとか早引けさせろとか言ってたけど、この大バカは聞かなかったにゃ!」
カナは、まくしたてた。
「怠けていたようなので・・・」
途端に、カナの眼光が鋭くなる。
「はっ!
そりゃ、社長が強要もしない目標値以上を要求すれば、疲れて怠けもするにゃ!」
カナの剣幕に、ホームズはちょっとひくが、聞いてみる。
「どういう状況だったにゃ?」
「ヒナは、職場結婚だったにゃ。
で、亭主と結婚して以来、体調を崩していったにゃ!
そうそう・・・
陛下を法案改正して、評議会で可決された労働規定で、「従業員に体調の変化が現れたら、処置を施す」とあったし、社長も管理職全体がノイローゼになるほど徹底していたにゃ!」
「じゃあ、「酷使」の責任は、社長にはないにゃ。」
そういえばとばかりに、ホームズは、アルを見る。
「陛下が、言っておられたにゃ。こういう場合・・・
「過労死」と、「過労自殺」があるって・・・」
「ホームズさん・・・
彼女の亭主・・・
謎の変死をしているにゃ・・・」
「いつ?」
「ちょうど三ヶ月前・・・
そのころから、ヒナは・・・
ムリするようになって・・・」
不審に思ったホームズは、従業員に聞き込みをした。
・どうやら、アルはヒナに色目を使っていたらしい。
・ヒナと亭主シムス・ハルは、学校の同級生だったらしい。
・ヒナの趣味は、爆薬の合成だったようだ。
・シムスは、三ヶ月前遺体で発見された。
・ヒナの体調を心配する同僚や管理職は、「法規定」に従いリリかカナに「処置」を進言しようとするも、理屈をつけられ、妨害された。
「間違いないにゃ・・・
「過労自殺」にゃ・・・」
ホームズは、リリに訪ねる。
「夜間監視カメラ」の記録装置は?」
「なぜか、データが消えてるにゃ・・・」
「貸して欲しいにゃ・・・
陛下が、「復元技術」を知っておられるそうだにゃ・・・」
ただの「職場問題」にはし辛かったのです。




