第3120話 猫に小判とはこのこと
「ウチの王国では、貴金属の大半は安いですよ。」
ウィズが言う。
「じゃあ・・・
キティルハルムで買って他のところに流せば・・・」
タイラスは悪い笑顔だ。
「やめた方がいいですよ?
キティルハルムの貴金属は、部品や素材となっています。
宝飾品にするだけでお金がかかります。
それに・・・」
ウィズは続ける。
「かつて、航海王ライル二世のころ、同じことを考えて貿易しようとした商人が、彼に娘・・・
後の画伯女王が開発した新型顔料を商うようになったと聞きます。」
「ん?
これって、宝石の値段がさがりません?」
ユニコが尋ねる。
「はい。」
ウィズが答える。
「どーいうこと?」
タイラスが聞く。
「地球にも・・・
古い絵画があるでしょう。
その中には、宝石を砕いて顔料にしたもの・・・
酸化金属の粉末もあったでしょう。」
話しつつ、操縦桿を握り、敵艦隊の攻撃をかわす。
「ということは・・・」
「女王当人も画家でした。
だから安全な顔料が欲しかったのです。」
「副次的な効果として・・・
宝石の部品使用のリソースが増え・・・
科学と錬金術が発展しました。」
その様子を、艦橋で観る操舵手のハリー・カトリ。
「すげえ・・・
話しながら戦ってる・・・」
「じゃあ・・・
「猫に小判」?」
「そうとも言います。
かつて、建国期に・・・
ミケランジェロ一族の祖・初代ミケランジェロは・・・
「人間族やエルフの貴族の贅沢の感覚は理解できない。こういうものは実用に使用するべきだ」とね。」
話しながら戦う女・・・




