第310話 総合心理学学院パスキール分校
休暇を終えて、私たちはパスキールのキティルハルム特区に来ていた。
パスキールは、かつて古代には文明の中心地があり、栄華を極めていた。
「ここが、建設予定地か・・・」
実験用マウス一号が、キティルハルム特区の「予定地図面」に目を通す。
「ご主人様が喜ぶだろうな・・・
誰もが、侵害しあわない世界・・・」
「それを実現するために私たちはいる。
仮にも私は、「始めた男」の子孫なのでね。」
アルナスが、完成模型を見た。
「やはり、「黒猫の司書女王」の紋は入れるべきだな。」
「う・・・う~ん・・・」
悩むなあ・・・
あれって、国章に使われている、当家の紋章だし・・・
「数少ない、懇意にしている関係者から聞いたけど、評判いいよアレ。」
実験用マウス一号が言う。
「竜や、狼と言った、いかめしい奴らを紋章にするより、信頼できると思うが。」
「両方受け継いでる人が言う?」
「『両方受け継いでる』から言っている。
そんなものは、「力で世界を救う」輩だけでちょうどいい。
そもそも、あなたは「心で世界を救おう」と言っておられる。
それなら、かわいい猫に講釈されたほうがよいのでは?」
「わかりました・・・」
うう・・・
また、王家のHPに変な書き込みが・・・
「ところで、学校の名前・・・
どうすんの?」
「統合心理学学院パスキール分校!」
すでにキティルハルムに建設予定の「本校」と、平行して分校も立ち上げる・・・
「いや・・・
「学術都市の黒猫先生」は大変だな・・・」
「人事のように言わないでください!
アルナス卿!
あなたも、どっぷりと関わっているんですから!」
学術都市の黒猫先生
初代女王ノワールが、かつてそう呼ばれたことがある。
彼女は、古代文明の科学を後に引き継ごうとしていた。




