第294話 ある勇者の絶望
その勇者の話をしよう。
父は、名門レイスト一族三大宗家の一つ、ティアムル家の傍流ヴァルシュタイン家の三男だった。
転生者であり、「エルフ」「人狼」「竜族」の血を受け継いだ強力な混雑種でもあった。
若くして実績を重ねた彼は、「総合導師」と呼ばれた。
そんな父の元に生まれた娘は、「家長が許そうとした結婚の話を蹴って家を壊しかけた少年」の物語を父から聞き、「恋愛」というものに対して「不信」と「絶望」を持った。
そして・・・
深い哀しみから、あらゆる男性からの求愛を跳ね除けた。
さらには、月の物が最初にきた際には、自らの性器を焼き潰そうとまでしたのだ。
「自分は、人を愛してはならぬ。」として・・・
しかし、親友である光の勇者や、機転の効く妹・・・
自分を理解して助けてくれた許婚の力により、「愛する心」を取り戻した彼女は、闇に落ちていたもう一人の勇者を救い・・・
父や各国の王の助けを借りつつ戦い・・・
そして、似た境遇にあった「超魔王ガルアレート」・・・
ハルカ・オガタ博士を倒したのだった・・・
ユニィは、本を閉じた。
「壮絶なの・・・
堅物なの・・・
でも、真似できないの・・・
天空の勇者ルミナリア・ライテス・・・
哀しい女なの・・・」
ユニィの頬を、つっと涙が伝った・・・
ライテスとその娘である、ルミナリアの話です。




