第2839話 キティルハルムの外交
「そこで・・・
ミリアム女王に聞きたいのですが・・・
かつて惑星を巻き込んだ戦乱・・・
「第一次デラル大戦」・・・
諸事情から、キティルハルムの参戦はできなかったとされます。
各国から、苦情があったのでは?」
ミネルヴァ神が、私に聞く。
「確かに、他国にずいぶん負担をかけました。
ただ・・・
表立って苦情を入れてこられたのは・・・
当時、分裂をしていた大国トラルティールの西・・・
「西トラルティール」でした。」
初代勇者レイストが、魔王デラルを討つも・・・
各国軍の被害も、甚大。
竜族は金竜王が戦死。
世界中の里のエルフ軍は、三分の二が戦死。
辛勝である。
トラルティール城・・・
「自分勝手な猫共に頼るから、こうなるんだ!」
ウズドガルドが、激怒した。
彼は、当時のトラルティール第二王子だった。
「あんな、獣に!うべっ!」
言い切る前に、兄トラルティアに殴られる。
「あ・・・兄上?」
「後ろを見ろ。
その「自分勝手な猫」が来ているぞ。」
「!!」
そこには、当時の女王補佐官ティルスが控えていた。
「キティルハルム王国女王補佐官ティルス・エラルと申します。
女王の名代として参りました。」
「・・・女王補佐官?エラル家?」
トラルティアは、ティルスの名乗った肩書きと名代という言葉に、ひっかかりを感じた。
キティルハルムは、外交特使として王家の者や配偶者を使いに出す。
「この野郎!」
ウズドガルドは、ティルスを殴り飛ばした。
「貴様らが、援軍を遣さなかったせいでな・・・!」
ティルスは、ウズドガルドを見上げた。
当時、キティルハルム軍は騎士団・魔法兵団共に最強とされていたが、出撃前に妨害が入り、決戦に間に合わなかったのだ。
「本日のこと・・・陛下にご報告します。
「私の用件」を聞かず、ご自分のお言葉を通そうとするあなた様のことを、陛下はともかく評議会の方々はどう思うか・・・」
ティルスは、呪文を唱え叫ぶ。
「ウェイレート!」
彼の姿は、その場から掻き消えた。
瞬間移動の術である。
次の瞬間、トラルティアはウズドガルドを殴り飛ばした。
「お前は、キティルハルムの女王の許婚を殴ったのだぞ!
それに、彼は来なかった理由を言おうとしたのに、言わせなかった!
現在、世界各国はデラルの被害で食糧難だ!
それをかの国は、大量の食糧を十分の一以下の値で輸出し、援助を行っている!
女王はともかく、評議会の連中は多数可決で、全ての国に対しそれを差し止めるだろう!
キティルハルムの人猫は、女王を家長と仰ぐ者たちだ。
お前は、その直接の「配偶者」に手をあげた。
いうなれば、彼らにしてみれば「国の顔」に泥を塗られたということだ。
恐らく数日後には決定の使者が来るだろうよ!」
「キティルハルムは、外交で・・・
そんな重要人物を派遣したのですか?
体のいい「マッチポンプ」では?」
「申されますが・・・
誠意を図らない方には、情は不要ですゆえ。」
私はニヤリと笑う。
「猫」さながらに。
このあとがコワいんです。




