第2838話 ファーストフード
「こんな秘匿性の高い話を、こんなところでしていていいのですか?」
そう言ったのは、オリンポス神族のミネルヴァ神だった。
ギリシャ系の神は、同じ系統の神が二柱いる。
ミネルヴァ神は、戦神である。
「いいのです。」
私は、スパイスの効いたチキンを食す。
うまい。
「では・・・」
ミネルヴァ神も同じものを食す。
「ほほお・・・
神に献上するものとしては上物ですね。」
「ありがたき幸せ。」
喜んでもらえたようだ。
「しかし・・・
あの注文を運んできた人は誰ですか?
どこかで見たような・・・」
「ええ。
現在では、亜神となっている商業料亭の創業者で・・・
一級貴族のサンダースと申しますね。
あ。
このたび、「神」に昇格されたようです。」
髭のじい様で、邪馬台国の天ぷらを元にフライドチキンを開発したらしい。
「まさかの「創業者」!?」
「ええ。
私もまさか「当人」がいらっしゃるとは思っていませんでした。」
店外には、彼の像が飾られている。
「現在、地球のよく似た店とコラボしています。」
そう言うと、私はもう一口食す。
「サービスがすごいですね。」
言いながら、ミネルヴァ神は考える。
「タルタロス宇宙には、こういう商業サービスはないのでしょうかねえ・・・」
「わかりません。
が。
そんな余裕はないのでしょう。」
「どういうことで?」
「かつての地球で・・・
大国が小国に攻め込んだことがあります。
しかし・・・
そういった産業は続ける余裕がなくなり・・・
経済的に破綻した歴史もあります。」
「はあ・・・
マヌケですね・・・
戦争とは・・・
兵器や食料をつくってくれる国民がいてこそできるのでしょう?」
「ええ。
仰せの通りです。」
返答すると、私はまた一口かじる。
「祭祀惑星エリュシオンにも出店を検討するよう箴言するべきですかね・・・」
ミネルヴァ神は言った。
あのじい様のネタです。




