第2833話 猫に小判
「ところで・・・
キティルハルムの民は、本当に飾りっけがないですね・・・
結構裕福な者も、食生活や住環境に注力しているというか・・・」
ハルカ神が切り出した。
「「猫に小判」という言葉もありますし・・・」
その言葉で、リケ神の目がきらっと光った。
「いかにも!
実のところ、キティルハルムの民は貴金属に興味ないにゃ。」
そこで、いつの間にか現れたアロームが情報版を操作。
あるデータを読み出す。
「リケ様。
お母上の「人間時代」のアーカイブを、王立図書館の電子情報から読みだしたんだし。」
「お見せするにゃ。」
その言葉に、アロームは情報版をハルカ神に見せる。
「・・・
初代評議員評議員時代のミケランジェロのアーカイブ・・・
うあ!」
そこには・・・
「人間族やエルフ族の貴族の方々の贅沢は、よくわからない。
なぜ金銀や宝石で、喜ぶのであろうか。
クリスタル等の方がよっぽど装飾に向く。
貴金属や宝石は、錬金術や機械の部品にしてこそ光る。」
と、書かれていた。
「む・・・
無欲ですね・・・」
まさに、ハルカ神の「人間時代」と同じ感性だが・・・
ベクトルが違う。
「だから今でもキティルハルムの宝石や貴金属は、個人端末の部品並の値段にゃ。
むしろ、「航海王」時代に国に宝石を商おうとした行商人がいたけど・・・
航海王ライル二世に諭されてやめ、娘だった当時の「画伯王女」が開発した「合成顔料」を流通させたにゃ。」
「え?
ああ・・・
そうか・・・
当時は、宝石や岩石を砕いた粉末を顔料にしていたのですよね・・・」
「そうにゃ。
キティルハルムでは、この合成顔料のおかげで宝石の値段が下がり、錬金術・科学技術の発展が促進されたにゃ。」
「ところで・・・
王家には・・・
熊の首の黄金の鋳造物があると聞きましたが・・・」
その言葉に、リケ神たちは「石化」した。
キティルハルムの民にとって、貴金属や宝石は「使う物」でしかないのです。




