第2831話 当時を知る人だった神
リケ神殿の東屋・・・
ここは、リケ神がプライベートで使用する休憩所である。
かつては彼女の「人間時代の墓所」があった一帯を改修した丘の一角の日本庭園にある。
「興味がありますリケ神。
キティルハルムの建国期に。」
ハルカ神が聞く。
「それなら、ノワール神に聞くのがはやいにゃ。」
「いいえ。
「民」の側から聞きたいのです。」
ハルカ神は、「ぶっとび逆噴射!」と毛筆で書かれた湯呑みで紅茶を飲む。
さすがに、科学導師だけあって、落ち着いた雰囲気だ。
「あちしは、「建国後」に生まれたにゃ。
それでいいなら。」
前置きをすると、話し出す。
鹿威しが、かこーんッ!と鳴る。
「当時・・・
王国は、ようやく体を成し・・・
古代文明の生き残りの人間族やエルフを大量に受け入れたにゃ。
けど・・・
スラムができてきて・・・」
「ちょっと待ってください!?
キティルハルムにはスラムってありませんでしたよ!?」
口をはさむ、ハルカ神。
「当時・・・
初代評議会・・・
現代表氏族の初代たちと、ノワール陛下は・・・
初代ミケランジェロの発案で、まだ生まれ始めた自身の子供たちとともに、学校に入れたにゃ。
それが・・・
「王立学校」にゃ。」
「学校?」
「にゃ。
識字率の向上と、技術力の蓄積・・・
それが目的にゃ。
初代ミケランジェロ・・・
ウチの母ちゃんは、こう言ってたにゃ。
「識字率が高ければ、低い国を笑ってやれる」と。
一番上の女王から、最底辺の平民まで。
少なくとも、文字が読めればアホだって片っ端から書いてあることが読めるにゃ。」
それを聞き・・・
ハルカ神は、変なことを思い出す。
「王立図書館で、アホ漫画を読んで、バカ笑いをしている一般のミケランジェロ一族を見ましたが?」
「っていうか・・・
識字率が低ければ、その程度のアホすらできないにゃ。」
歴史語りです。




