第2723話 大帝ご静養
地球・トキオシティ・・・
シブヤ101ビル周辺・・・
「銀河連合大帝・浄仁様が、我が国キティルハルムの女王ミリアリア・イスレ・キティルハルム陛下に招待され、王都キティルハルムに逗留される予定となりましたにゃ。
これは、誇らしいことですにゃ。」
キティルハルムの売れっ子レポーターが、うっとりと街頭のテレビで演説する。
浄仁大帝が、商店街で目を奪われるようすは、多くの地球の民の目をひいた。
「万博でも見ましたが・・・
本当にあの「バナナのたたき売り」商人は、平民ですか?」
「ええ。
名もなき平民です。
まあ・・・
正確には姓名はありますが。」
「おやおや・・・
国母たる女王がそのようなことを言われては・・・」
「おお・・・
これは耳が痛い。」
こんなパフォーマンスに、腹を立てた者たちがいた。
「へッ!
帝室って言ったってな・・・
どうせ俺たちの税金で食ってるんだよ!」
「ああ!」
「どうせ、この「ご静養」だってなあ!」
だが、このタイミングを計ったかのように・・・
「しかし・・・
この私にキティルハルムの最高級ホテルの・・・
それも最も高い部屋をお貸しいただけるとは、光栄ですな。」
「いいえ・・・
一国の君主・象徴には当たり前のことです。
むしろ、自国の君主の生活費に文句を言う者など、その庇護を求める価値はありません。」
にこやかに、ミリアム女王が言う。
「ところで陛下・・・
公式な収支で・・・
ご自分とご家族の生活なんぞは・・・」
レポーターが、尋ねる。
「私は科学導師でもあります。
いくつもの特許があり・・・
独自の収支があります。
自分と家族の生活は、どうとでもなります。」
「まさかの大富豪にゃ!」
「特許成金と呼んでもよいですよ。」
「お・・・
畏れ多いにゃ!
で・・・」
レポーターが、ちらりと浄仁大帝を見る。
「むろん、浄仁大帝陛下の滞在費用は私から出します。
「私費」でね。」
ミリアム女王は、内心でわかっていた。
民主主義ゆえに、「帝室」が肩身の狭い思いをしていることを。
だから、心得違いの「地球人」で遊んでやろうと思ったのだ。
ひいては、浄仁大帝を始めとした銀河連合の友のためであった。
キティルハルムの王族は、みんな仕事をもっています。




