第2609話 身体が先に動く
「身体が、先に動く?」
ダルタニアンは、聞く。
「そうです。」
それに対し・・・
「じゃあ・・・
リケ様の従属竜の方々もそうにゃ?」
部下が聞いた。
「まあ・・・
どちらかと言えば「本能」ですが。
リケ神の教育で、理性と本能のON・OFFが可能のようですが。
ただ・・・
三賢人や亜神に聞いても、教えるのは難しいでしょう。」
そこで・・・
「なぜでしょう?
特に、陛下はご自身が「教師」であられますが・・・」
もう一人の部下が聞く。
「まあ・・・
ダルタニアン・・・
あなたは・・・
王立学校生時代・・・
座学では何が優秀でした?」
アルム神が尋ねた。
「語学・・・
特に、文から登場人物の心理を説明することですが・・・」
「それを・・・
どうやって人に「読み解く方法」を教えます?」
ダルタニアンは、はっとなる。
「「天才」が、己が自然に覚えたものを解説するのは、難しいものなのですよ。
まあ・・・
専攻の「職場心理学」に関しては、一から構成した分野ゆえに、理論構築が可能だったようですが。」
「なるほど・・・
アルナス卿が、奥義のティアムレットバーストを誰にも教えないのは・・・」
「あの奥義ですか・・・
アレは、私とて使えません。
ただ・・・
尋常ならない神波動と魔法力を使用した奥義です。
あれだけのことは、私にもできます。
が・・・
使うための「使用法」が理解できません。
つまり・・・
「身体が先に動く」感覚を教えることは不可能なのでしょう。」
アルム神は、講釈を続けた。
優秀な人は、自分がなぜ優秀なのかを人に教えることはできません。




