第260話 「攻め方」を間違え、気づかなかった者
必死だった・・・
周囲は、彼女のことを「鉄仮面」だとか、なんとか言っていた。
しかし・・・
彼女の遺伝情報を見たとき、愕然とした。
初恋が破れたとき、「恋愛」に関する条項を自らの遺伝子から削除していた。
しかし・・・
助手でもある、実験動物と話すときや、仕事の話をするときはいきいきとしていた。
「彼は、なんとかしたほうがいいよ・・・
ご主人様が、研究のときと一人でいるときが至福であるのを理解しない男は、ご主人様のためにならない。」
偶然、盗み聞きしたとき、実験動物はこう言っていた。
「でも、わかっているでしょ?
彼の力が必要なのよ。
「超万能細胞」・・・
これで、医学会に革命が起きる。
治療不能の内臓疾患・・・
金属支柱でも補強不可能な骨折・・・
痴呆症の治療・・・
癌細胞の全摘出の後の肉体修復・・・
つまり、これがあれば全て解決する・・・」
「科学導師バカだね・・・
ご主人様は・・・」
「そうよ。
私は、それしかない。
そうして人類に貢献することが、私の全て・・・」
愕然とした。
そんな女がいたのか・・・!
彼女自身に惨殺され、今自分は意識だけだ・・・
不意に、意識が途切れる。
白い、男爵のような巨人と、カピバラの姿を模した巨人が、「彼」・・・
クレスを斬ったのだった・・・
そういう人が、おおいのです・・・




