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第2502話 職場心理学

キティルハルム発祥の独特の学問がある。


「職場心理学」である。


これは・・・


「相手の身になって考える」


「相手の心理を分析して行動する」


この二つを、基本に展開する学問だ。



キティルハルム王宮・王族区画・・・


「どうりで、これまで犯罪が起こらなかったワケだ。」


ジョルジュが、お茶を飲んだ。


「でもね。

「相手の身になって考えろ」と言われても難しい。」


ミリアム女王は、言う。


「なんでだい?

地球の格言にもあるだろう?

「自分の欲せざるところ、他人に施すことなかれ」って。」


だが・・・


「甘いな。

「そこ」を考えても、「絶対」じゃない。

例えば・・・

あなたが、借金10億ノワールあって、どうしても金が欲しいとしよう。

しかし・・・

その事情は知っていても、目の前の相手は当座の生活資金があればそれでいい無欲な人間だとする。

両者にいきなり、前触れもなく金が渡されて・・・

あなたは喜ぶだろう。

が、相手は?」


「そういうことか。」


ジョルジュは、アルナスの説明にはっとなった。


「そう。

突き詰めれば、そういうこと。

かつての地球でも、原理主義宗教テロリストが、人質を焼き殺すという蛮行をやった。

世界中の人々は、怒り狂った。

彼らの教義では、「火葬にされた者は成仏できない」とするもの。

しかし、「異教徒」にはその教義がない。」


「はああああああああああああああああああ?

それって、意味あるかい?

教義が現実に適用されるとしてもだ。

「火葬にされた者は成仏できない」は、彼らだけのモンだ。

通じるのかい?

ってか、意味なく「異教徒」を怒らせるだけだったんじゃあ・・・」


ジョルジュは、あきれ返った。


「そういうことだ。

つまり・・・

「自分はこうだが、相手はどうだろう?」という、視点が必要となる。」


アルナスは、お茶請けのチョコレートをかじる。


「でも、それでもキティルハルムには今までにない犯罪が増えているわ。

そういう意味でも、この学問は大事よ。」


「それが・・・

君の「前世から学んだ」知恵という訳かい?」


「ええ。」


ミリアム女王は、お茶を飲んだ。


哀しいことに、「自分の欲せざるところ、他人に施すことなかれ」を愚直に守ろうとして「コケる」人が多いような気がします。

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