第2496話 兵器級の着ぐるみ
ナキが帰った後、工房では新しいウニのキグルミへ向けて、ミーティングが開かれる。
「頭の帽子、本体、靴、全ての黒・・・
ねぇ? トゲはロケットランチャーみたいにしたいと、要望があったわね?」
「はい!
刺繍魔方陣は、時間を頂きたいそうです。」
職人の一人が言う。職人の中には、それが得意な者も居る。
「実は、トゲに問題がありますにゃ!」
「腕ですわね・・・」
「はい、このままですと、トゲが腕に刺さるにゃ。」
「神波動を通すと、トゲが伸びるというのも、ありかと。」
「あら、それだと、トゲの向きに調整が必要だわ。」
職人達が話し合う。
今回の着ぐるみは、ロケットランチャーが要望に入っている。
デザインはアニエスだが、作るのは職人達である。
一流ゆえの拘りだ。
「弱りましたわ・・・
厄介ねぇ。」
アニエスが考え込む。他の手が空いた職人達も、今回の依頼には、キラキラした好奇心持ちにとっては、未知の技術である。
勿論、困惑もあるけれど。
基本的に、キティルハルムの民は、好奇心旺盛なのだ。
「神波動を通すなら、通したと分かるように最初は白にしては?」
「それよ!」
アニエスは今回、難題故に燃えた。
燃えていた!
「そうよ、あらゆる白の刺繍を入れましょう・・・
それに、神波動を通したら黒くなるようにしましょう!
刺もあるし、ちょうどいいわ!
帽子も靴も同じにするの。」
「「「いいですね!」」」
こうして職人達が動き始めた!
それから二週間。
ようやくデイブランド工房から連絡が来て、ナキは嫌々ながら工房に来ていた。
本当は創作料理アリアに待ち合わせを願ったのに、諸事情により工房へとなったのである。
不本意であった。
「にゃー・・・
来たにゃ。」
「お待ちしておりましたわ!
御覧下さいませ~♪」
ナキとは正反対に、滅茶苦茶ご機嫌のアニエスが居た。
隈を作り、明らかに顔色も悪いが、何故か元気溌剌で、ちょっと怖い。
「さぁ、見て下さいませ!」
視線の先には、布が被った物体がある。どうやら、これが例の品物らしい。
「我が工房、最高傑作ですわ!」
そうして、バサリと布が外され現れたのは、真っ白い布にこれでもかと刺繍が施された、ウニの脱け殻のキグルミであった。
「にゃ?
注文と違うにゃ!!
どういう事にゃ!?」
思わずキレたナキだが、ふと違和感を感じた。
何故かアニエス達職人が笑顔なのである。
すごく不気味だ。
「さぁ、着てみてくださいます?
そして神波動を通して下さいませ。」
「にゃ?
どういう事にゃ?」
ますます意味が分からない。
とはいえ、鬼気迫る程の迫力で来たアニエスの手前、ナキは素直に着ぐるみに着替えた。
勿論、肌触り良く、サイズも恐ろしい程にピッタリであり、白い殻とはいえ、素晴らしい出来栄えである。
着ぐるみに感動しつつ、素直に神波動を通した瞬間。
何と、白いキグルミから、黒い着ぐるみへと姿を変えたのだ。
ス〇ライクガン〇ムもびっくりだ。
しかし、まだトゲがない。
ウニに必要なトゲ。
「更に神波動を入れて下さいませ。」
ナキはアニエスに言われるがまま、神波動を入れていく。
何と、神波動を通すと、ウニのトゲが生えてきたのだ!
生える様がちょっと芸術的に美しく、ナキの目が輝いていく。
「更に神波動を入れると、発射しますが、室内では止めて下さいね。」
まるっきり兵器だ。
「わ、分かったにゃ・・・」
アニエスのマジな目に、流石に神波動を入れるのを止めた。
しかし、美しく生えるウニのトゲが、ついつい気になってしまい、指を伸ばすのは仕方ないだろう。
「にゃ?
本物みたいに硬いにゃ?」
「当たり前ですわ、これの為に新しい技術を使い、特許を取りましたの。」
ミリアム女王もびっくりの、特許出願である。
ここまでするか?
オホホと上品に笑っているが、布からトゲが生えて、固さも再生も出来るのだ。
それを刺繍魔方陣が成しているのである。明らかに、軍が欲しがる技術である。
現に、鎧の下に着る騎士服から、宇宙服・・・
艦内服さえも手掛けている。
「そのトゲ、威力計算をしたら、ナキ閣下だけで小型の宇宙戦艦くらいでしたら、撃破出来ますわよ?」
ウフフと笑いながら言ってるが、威力が明らかにおかしい!
ヘタな邪神くらい倒せそうだ。
が、ナキはニンマリと笑い、嬉しそうである。
「ありがとうにゃ!
気に入ったにゃ!
頼んで良かったにゃ!」
こうして、また、ナキに新しい物騒な着ぐるみが出来たのであった。
なお、後日の御披露目で、余りの威力に、ミリアムから平時の使用ストップ令が出たのは、言うまでもないだろう。
ミリアム:なんだコレ・・・
ナキ:着ぐるみにゃ!




