第2492話 デイブランド騒動
今回のお話は、「秋月煉」さんからの原案です。
ありがとうございます!
この日、創作料理アリアの一角に、ナキ・ミケランジェロは居た。
ここで待ち合わせ中なのである。
あまりに楽しみなのか、尻尾が揺れていた。
「お待たせしましたわ」
そこに現れたのは、白のオシャレなスーツを着た、アニエス・デイブランドが軽快に現れる。
戦時用の補給艦デイブランドさえ有している。
「お久しぶりにゃ!」
「えぇ、お久しぶりですわ」
上品な感じの彼女と、職人姿のナキでは、まるっきり合わないが。
「今回も着ぐるみを頼みたいにゃ~♪」
「ま、また、ですか!?
最近、貴女のみたいな着ぐるみが欲しいという、変な依頼が殺到してますの!
一体何をしたんですの!?」
くわっと奇声を発するアニエスに、ナキは首を傾げている。
「にゃ?
知らないにゃ・・・」
本気で分からないらしいナキに、アニエスも落ち着いたらしい。
そりゃそうだ。
騒動の源は、ナキ自身が戦闘で奇妙奇天烈な戦術を使う時に、よく着用しているからなのだが。
ちょうど出されたコーヒーを口にする。
何故か、黄色である。
味はコーヒーだったが。
「で、どんな着ぐるみをお望みで?」
うろんげな表情のアニエスに対し、待ってましたとナキは満面の笑顔である。
「ウニにゃ!」
「・・・はっ?」
「あのトゲトゲが素晴らしいにゃ~♪」
「ウニ、ですか・・・
また、珍妙な・・・」
唖然とする彼女に対し、満面の笑顔のナキ。
彼女に、普通の感性を求めるのは、愚者に等しい。
「予算はいかほどに?」
「ウっフっフっ!
今回は、30万あるにゃ!!
クリスタルのクリスマスツリーを陛下が購入してくれて、ホクホクにゃ!」
この前、ナキは知り合いからクリスタルの巨大な塊をプレゼントされていた。
それを、まともなクリスマスツリーにしたら、ミリアムが気に入り、高値で購入してくれたのである。
「陛下、太っ腹にゃ!
お陰でホクホクにゃ~♪」
リシテアールの人々以外は、あまり知られていないが、ミリアム女王自身、特許で巨万の富を得ている。
これだけでも、相当な総合導師と言える。
「・・・そうですの、分かりましたわ。」
若干引いているアニエスだが、ふとある事を思い出す。
「そういえば、そろそろ私服の方が時期でしたわ。
ついでにやってしまいましょう!」
「にゃ!?
そ、それは、今度で・・・」
急に及び腰になるナキに、逆に素晴らしく満面な笑みを見せるアニエス。
「後でご自宅の服のメンテナンスに伺いますわ♪」
「にゃぁあああ~~~~~!!?」
「この後、お時間ありますわね?
採寸の為に、工房へいらして下さいませ。」
「にゃ!?
い、いや、今度でも・・・」
キティルハルムでも、ミリアム女王とナキの「着たきり雀」は有名だった。
「大丈夫ですわ。
陛下にも何度もお呼び立てしてますのに、いらっしゃいませんから。
仕方なく、お迎えを出してますの。」
有無を言わさぬ迫力の、「猫」さながらの笑みに、ナキは恐怖のあまり、尻尾が一気に逆立った。
こんなときのアニエスに逆らっても、ろくな目に会わない事を知っている身としては、石化するしかなかったりする・・・。
「アリア、ご馳走さま、また腕をあげましたわね!」
「毎度、ありがとうございますにゃ。」
店主のアリアが、アニエスには穏やかに。
ナキには同情の視線を送ったのは、無理からぬ事だろう・・・。
何故なら、アリアもまた、アニエスに過去、服を依頼した事があり、経験者なのである。
「にゃぁあああーーーーーーー・・・」
ナキの悲鳴が、虚しく綺麗な空に響いたのだった。
現代の話として・・・
デイブランド騒動をば。




