第2419話 祇園精舎の鐘の声
私は、悠久の図書館をノワールに向けた。
「あなたは、もう人間どころか亜神ですらなくなっていますね・・・
そんなに、「禁断の果実」が美味だったのですか?
「本物」ならいざ知らず、偽物を・・・」
「黙りなさい!」
ノワールは、複数の属性の魔法を多数放ってきた。
私は、印を結ぶ。
「祇園精舎の鐘の声・・・
諸行無常の響きあり・・・
沙羅双樹の花の色・・・
盛者必衰の理を現す・・・」
私の言葉に、偽の楽園の草花が色を喪っていく・・・
「なんだい?
それは・・・」
ジョルジュが聞く。
「祇園精舎とは・・・
釈迦如来様が、居としていた神殿の一つ。
諸行無常・盛者必衰とは・・・
どんな国でも滅ぶし、例え滅びない国であっても科学文明や時代によって姿を変えるということ・・・
この世は、何一つとっても同じ姿ではないということよ。」
「確か、100年前のキティルハルム王都と今では、ずいぶん違うからね。」
アルナスが、それにうなずく。
「それを「無常」というのだ。」
私は、術を展開する。
「大解呪!」
指を鳴らした。
「こ・・・
これは・・・
く・・・
崩れる・・・」
ノワールの身体と偽の楽園が崩壊を始める・・・
「この世は・・・
常に「同じ姿」ではないから美しい。
あなたは、それすらも忘れてしまわれた。」
「・・・・・・ッ!」
ノワールは、消えていく・・・
「驕れる者、久しからず・・・
ただ・・・
風の前の塵に同じ・・・」
私たちは、消えゆく偽の楽園を後にする・・・
平家物語のプロローグからです。




