第100話 闇の大魔王
「んぐっんぐっ・・・ぷはあッ!」
実験用マウス一号は、ヨーグルトウォーターを飲み干し、側に控える「長男」を見る。
「どうしたんだい?実戦用一号。」
実験用マウス一号は、尋ねる。
「はい。「闇」が凝縮し始めました。」
「うーん・・・「あの人」か・・・
大丈夫かな・・・
君ら・・・
仲良くやれるかい?」
「善処します・・・」
実戦用一号の目が、泳いでいる。
「あの人は、「完成系のエリート」が嫌いだからなあ・・・」
「では、「闇の大魔王」ウォルスト様とは・・・」
「そう・・・
よく、「努力をしなければ、勝てない」って言うよね・・・」
実験用マウス一号は、「両手」を後頭部の後ろに回す。
「その時代、「努力がことごとく結果になった人」との戦いに負けた、「努力がことごとく結果にならなかった人」さ。
だから、そんな実力社会に嫌気が差し、「大魔王」になった人だよ。」
「僕は、そういうの・・・わかりませんが・・・」
「だろうね・・・
君たちは、過去のモデルである「人鼠」とは違う・・・
言うなれば、完全な意味での僕らの子さ。
だから「人生経験」をデータとして脳と身体に蓄積していく。」
実験用マウス一号は、ネズミ大のシートに腰掛け、個人用端末を操作した。
モニターに、ある一室が浮かび上がる。
そこに、「闇」が人の形をとり、実体化していく。
それは、かつての「学歴社会の犠牲者」・・・
またの名を「勇者の血筋から産まれた大魔王」・・・
「闇の大魔王ウォルスト」であった。




