ニゲルの独白
ニゲルゲームは幕を閉じた。
ニゲル、いや、くろくまくんは何を思うのか。
次の小説の構想?それとも日々の生活の悩み?
少し、頭の中を覗いてみよう。
「終わったな。いや、終わってはない。僕の…僕たちの戦いは、これからだからね」
僕は、一人きり残された真っ暗な部屋で、つぶやいた。さて、今回の検証結果をまとめるとするか。
◯ニゲル戦記
三つの自作品の主要キャラクターを、ランダムで7名召喚し、独自のゲームで競い合い、そして、個々の個性や、自主性、周りとの関わり方、キャラクターとしての持ち味などを比較検討する。
◯登場キャラクター 7名
松岡 心 26歳
進藤 紗弥 26歳
進藤 聡 48歳
黛 拓海 17歳
黛 彩海 幽霊
グラティア 248歳
アルド 8歳
◯それぞれの関係性
シンは作中では、心の声を読む能力を持ち、人との関わりを苦しみながら、幼なじみで久しぶりに出会ったサヤ、サヤの父親のサトシと関わりながら、人間関係を築いていき、人としても成長していく。
タクミは突然死した母親のアヤミと二人暮らしだったが、急死したアヤミが幽霊としてあらわれ、料理を教えてもらいながら、親子としての関係を再確認していく。
グラティアは不死のエルフで、異世界に住み、ある街中で少年アルドに声をかけられ、友達になる。
◯ゲーム内でのキャラ立ち
シンはまず、心の声を読む能力は使えない空間なので、ただの好青年で終わる。可もなく不可もないキャラ。
サヤは頭の良さと回転の速さもあり、初対面の人とも友好関係を築きやすく、全体をまとめる力がある。
サトシはただの飲んだくれ&美人に弱い。
アヤミ、幽霊の出落ちだけで終わってしまい、後半ではサトシに迫られるだけ。
タクミ、高校2年生という若さもあり、割と発言力もあり、賢さもサヤに負けず劣らずというところ。
グラティアは、エルフの良さを完全に活かせていない。ただの無愛想なガキになってしまった。
アルドは、年齢通りくらいの感じ。
「ん〜。なんかまぁ、こういうのもたまにはいっかぁていうくらいだなぁ…」
そうなのだ。僕はニゲル。別名をくろくまくんと言うが、サヤちゃんに話したように、もちろん神様ではない。ただの小説家だ。もう今年もあとわずかという時に、何をしているんだという感じだよね。
今回の試みは何のためにしたのか。簡単に言うと、年末の忘年会みたいなワイワイ全員集合!という見方もある。
ただ、別の見方をすると、それぞれの作品の中で主役級の活躍をしているキャラクターが、どんな場面でもそのカリスマ性を発揮できるか?まぁ状況によっても違うだろうし、短時間だからわかりにくいということもあるかもしれない。
こういう小説の中のキャラクターを検証していくことで、普段自分自身が日々生活していく中でも、考えることや、感じることが少しずつ、変わっていくかもしれない。
朝起きてまずは何をするだろうか。トイレにいく。そして、歯を磨いて、ヒゲを剃って、顔を洗う。仕事であればスーツに着替え、家を出て、少し先の駅まで歩いていく。
いつも変わらず過ぎていく日常の中で、ふいに自分自身を見失いそうになることはないだろうか。繁華街を歩いていると、皆それぞれ目的を持って歩いている。急ぎ足で歩く人もいれば、何人かでしゃべりながらゆっくり歩く人達。何か忘れ物をしたのかカバンや懐を探るような仕草をしている人。その中で僕は、今日も何かを感じている。
お腹空いたなぁ。今日は寒いな。電車は人が多いな。ちらし寿司美味しいな。ホットコーヒーあったかいな。そろそろ、今日の仕事も終わりだな。
現実と非現実。その狭間を行ったり来たりしている僕。それはともすると少し危うげで。でも、誰にでもあることなのだ。その非現実の割合が多くなり過ぎると、もしかしたら現実での悩みや、苦痛が、余計に辛くなることもあるかもしれない。
逆にその非現実のおかげで、現実でも頑張ることができたり、上手くいくこともあるかもしれない。
これは完全に私事だが、実の妹に小説を書き始めたことを打ち明けた。現実世界では初めてのことである。話した内容は自分が書いた小説が、日間ランキングの推理ジャンルの連載中という狭いくくりの中ではあるが、ダントツトップの「薬屋のひとりごと」に続いて2位に入ったこと。とても自慢と呼べることではないことを、見栄を張って大げさに言ってしまった。
妹は、もし書籍化されたら絶対買う!と言ってくれた。この年末年始に実家のほうに帰ってきて、会えたら会おうと言っていたが、高速バスが取れず諦めたことを言ってきた。妹は少し遠方に住んでいる。また1年後の年末年始に、機会があればまたご飯でも行こうと言っておいた。
さて、そろそろ、筆を置こうと思う。なぜなら、また新たな戦いが始まるからだ。電車から降りると寒い。寒さとの戦いだ。
では、また会おう。
──プシュー!!
「さむっ!!!!」
完




