ニゲルの秘密
ニゲルゲームが始まり、唐突にこの中にニセモノがいると言われた7名。
ゲームをしながら、更にニセモノ探し。
早くも脱落者が出る中、見事ゲームをクリアすることはできるのか。
このお話が前々回、前回の解答編となるので、もう少し考えたいという方は、読むのを少し待って、読者さまなりの答えが出たうえで読んでいただくと、また面白いかもしれません。
ニゲルゲーム、2ターン目が終わり、グラティアとアルドの2名が脱落し、残り5名となった。その中にニセモノがいるということだが、まだ真相はわかっていない。
ひとまず、2ターン目終了後の状況をここに載せておく。
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▢▢サ▢▢▢▢▢▢▢ サヤ
▢▢▢▢▢▢▢あ▢▢ あやみ
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▢▢▢▢さ▢▢▢▢▢ さとし
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▢▢▢▢▢シ▢▢▢▢ シン
タ▢▢▢▢▢▢▢▢▢ タクミ
「はいっ、私は右下に1マス移動するね。みんな、自分が移動をした時に、他のプレイヤーの移動範囲に入ってないかどうかだけ、確認してから移動するんだよ〜」
「うんうん、ありがとうサヤちゃん。サヤちゃんはやっぱり頭の回転が早いし、頼りになるね!いつも苦労かけてごめんね」
サヤのみんなへの気遣いに、シンが言葉を返す。
「じゃあ私は下に2マス移動するで〜。たぶん大丈夫…やんね?」
アヤミの後は、サトシだ。
「じゃあ俺は…右下に2マス移動するよ。あっ、どうもアヤミさん。お母さんなのにめちゃくちゃ若くて綺麗ですよね〜。もしよかったら今度いい赤ちょうちんのおでん屋さんがあるのでご一緒に…」
「パパっ!!こんな時に若いお母さん口説くんじゃないの〜!」
「あはは、冗談だってば」
サヤに怒られるサトシ。次の番はシンだ。
「ちょっと試しに、消える能力を試してみるね。1ターン消えまーす。ご苦労さま〜」
アルドから得た、ビビリの能力だ。シンの身体が透明になり、みんなの視界から消えた。シンが話してるかどうかは不明だが、もしかすると声や物音も消えているのかもしれない。
「んー、じゃあ次の進行方向に備えて…ミサイルの移動で上の端にいくでー」
タクミはミサイル移動で、1番左上の端に移動した。3ターン目が終了した。
タ▢▢▢▢▢▢▢▢▢ タクミ
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▢▢▢サ▢▢▢▢▢▢ サヤ
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▢▢▢▢▢▢▢あ▢▢ あやみ
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▢▢▢▢▢▢さ▢▢▢ さとし
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▢▢▢▢▢シ▢▢▢▢ シン(透明)
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『あれ、3ターン目も動きなし?ちょっとつまらないよね〜。あっ、そうそう!4ターン目に入る前に、1番外側のマス目が崩れるよ〜!ごめんね、言ってなかったよ』
「えっ!そんなん嘘やろ!!聞いてたら壁際移動せんかったのに!うわっ!!」
タクミが立っていた床も含め、1番外側の床が消えた。タクミも床と共に消えた。
「あれ?タクちゃんどこいってしもたんやろ…?」
タクミが消えたので残り4名になった。
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▢▢サ▢▢▢▢▢ サヤ
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▢▢▢▢▢▢あ▢ あやみ
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▢▢▢▢▢さ▢▢ さとし
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▢▢▢▢シ▢▢▢ シン(透明)
「じゃあ…私は1マス下に移動するね。外側1マス減っただけで、だいぶ狭くなった気がするよね…」
「うんうん、そうやんね…えーと、じゃあ私は左に2マスかな。なんかもうわからんくなってきたわ」
アヤミの次はサトシだ。
「えーと、壁の外側に行ってしまうと、次も外回りの床が消えてしまうとしたら危ないから…左上に2マスいくよ〜。おっ、アヤミさん今度は隣同士になってしまいましたね…もうこれは運命ですね〜」
「パ〜パ〜!!」
「あはは、わざとわざと。てか俺この方向しか移動できないし」
次はシンのターンだ。シンの姿が見えるようになった。
「あっ、じゃあ上に4マス移動して、アヤミさんの駒を取ります。あっ、お父さんご苦労様です!」
「ちょっと、シンくんもう少し移動待ってくれてもいいのに〜」
4ターン目が終了し、やはり1番外側の床が消えた。残り3名。シンがヒーヒーシャビビリヒーシャに進化した。
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▢サ▢▢▢▢ サヤ
▢▢さシ▢▢ さとし シン
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「あれ、もう3人しかいないよ。これニセモノってこの3人の中の誰かってこと?」
サトシが聞く。
『うん、そうだよ〜。そろそろニセモノ炙り出しタイムにするかい?』
ニゲルの言葉を無視して、サヤが移動を宣言する。
「右下に1マス移動して、パパの駒を取る」
サヤがキングカークに進化した。残り2名。シンが口を開こうとした、その時。
「ニセモノを言い当てるわ。ニセモノはこの、私の隣にいるシンくんです」
もうフロアにはサヤとシン。そして声だけのニゲルしかいない。脱落したあとのプレイヤーはどこにいるのか、声さえも聞こえない。
『サヤちゃん、ニセモノはシンくん。それでいいかな?』
「ええ、間違いないわ」
一瞬、沈黙になった。そしてニゲルの声が聞こえる。
『はっはっは…!サヤちゃん、君はやっぱり凄いね!』
──ザザザ…ザ…ザザ…
妙な雑音がして、そして途絶えた。サヤの隣にいるシンが不気味に笑い出した。
「ふっふっふ。うん、うん。凄い凄い。大正解だよ!僕がニゲルだ。聞きたいんだけども、なんで僕がニセモノってわかったんだい?」
サヤの目の前にいるシンが、口を開いて話している。
「いくつかあるんだけど…あ、まず話す前に、私以外のみんなは無事なのか教えてくれる?ひどい目にはあってないでしょうね?」
「もちろん大丈夫だよ。僕が、そんなことをするはずがない。脱落したみんなと、僕が入れ替わったホンモノのシンくんも一緒に、安全なこことは違う部屋にいてもらってる」
サヤの問いに答えるシンニゲル。
「わかった、ありがとう。なぜあなたがニゲルかわかったのは、まずひとつは。ニセモノである以上、このゲームに対して有利な条件を持っているものだと思ったこと。これはニセモノがいると聞いた瞬間に思ったわ」
「うんうん。まぁ普通はそう思うよね。それで?」
「あとは、シンくんの話す言葉に違和感があったわ。これは私の勘違いかもしれないけども、なんかやたらと苦労、苦労って、そういう単語ばかり使っていた気がする。無理やり言ってるようなそんな印象を受けたわ」
「おっ、それに気づいたんだね…まぁそれはあとで話すよ。他には何かあったかい?」
「これで最後だけど。ゲームを進めていたら、結局最後に残っていくのがニセモノだと思った。だから、あえて早く進めていったの。ニセモノでもしゲームに有利な条件を持つプレイヤーなら、きっと残るはずだったからね。そして、最後の2名になった時点で、私は私だから、あなたがニセモノ。ものすごく単純なことよ」
「こりゃまいったな…ここまで完璧に考えてるとは。まぁゲームを考えたり、初期配置を決めてるのも僕だから、もちろん自分に有利になるようにはするよね。あ、でも周りの床を消していったりしたのは演出だよ。そうでないとゲームが盛り上がらないと思ったからね。あれはもし、床が消えなくても僕は負けなかった」
ニゲルは一息つき、指を鳴らした。すると、ニゲルゲームの盤面は消え、床は絨毯に変わり、2人のそばに小さなテーブルと、イスが2脚あらわれた。
「ま、よかったら座ってよ。はじめのほうに言ったように、この空間の時間軸は普段の君たちの世界とは切り離されているから、焦ることはない。それに待っている6名も、それなりにくつろいでもらってると思うよ」
「私、あなたとゆっくりおしゃべりしたいわけじゃないんだけど〜。まぁ…なんとなくだけどあなたって、悪い人じゃない…みたいだし。ここに私達を呼んだり、こんなことした理由くらいは聞かせてもらえるんだよね?」
サヤはイスに座りながら聞いた。シンニゲルは、にっこりと微笑んで答える。
「ありがとう、やっぱサヤちゃんは優しいししっかりしてるよ。そうそう、サヤちゃん達を召喚した理由も話すけども、僕のことを少し話そう。さっきシンくんが話す言葉に違和感があった、って言ってたよね」
──「リアル将棋盤みたいな感じだね。駒はみんなバラバラだけど。これは苦労しそう…」
──「うわっ!危な…やっぱり盤面が少ないから、移動ができる範囲自体が限られてるよね。これはやっぱり苦労するぞ…」
──「まぁそうですけどね…じゃあ下に4マス進んで、アルドくんを取ります。アルドくんごめんね、苦労かけて」
──「うんうん、ありがとうサヤちゃん。サヤちゃんはやっぱり頭の回転が早いし、頼りになるね!いつも苦労かけてごめんね」
──「ちょっと試しに、消える能力を試してみるね。1ターン消えまーす。ご苦労さま〜」
──「あっ、じゃあ上に4マス移動して、アヤミさんの駒を取ります。あっ、お父さんご苦労様です!」
「これがゲームが始まってから、シンくん。まぁ僕が言っていた言葉だね。サヤちゃんよく聞いてたよね。たしかに苦労っていう言葉をいれたんだ。もう少しわかりにくくてもいいかなと思ったんだけどね」
「うんうん。で、その苦労がなんのキーワードなの?あなたの名前のニゲルとなにか関連あるとかかな?ニゲルって確か、黒いっていう意味のラテン語だと思うんだけど…」
シンニゲルは目を見開く。
「そこまでわかってたんだ!そりゃ凄いや。そう、ニゲルは黒をあらわす言葉だよ。黒、苦労、そしてこの真っ暗な部屋。そう、僕の正体は…」
サヤはじっとシンニゲルを見つめる。
「くろくまくんなのです!!」
「はぁっ!!?」
「え、くろくまだよ?」
「だから、誰??」
ニゲルは少し悲しそうな顔をした。
「あ、まぁ知らなくて当然か。えーと、簡単に言うと君たちを作り出した神様みたいな存在だよ」
「神様??ウソ〜!!てかさぁ、その神様がこんなとこで何してんの?」
サヤは明らかに疑わしげな様子でニゲルを見る。
「あはは。まぁ神様って言ってもそんなめちゃくちゃ偉い神様じゃないからね。君達を召喚した理由は、なんて言ったらいいんだろう…君達の存在意義の確認みたいなものかな」
「存在意義の確認って…あっ!結局そんなこと言って、ただの暇つぶしなんじゃないの!!?」
「ギクッ!え、え。いやそんなことないよ。色々綿密な計画を練ってだね。PCとプリンタを駆使して工作したり…ごにょごにょ」
「まぁ、いいや〜別に。無事に私達の元いた世界に帰れるなら。というかね、少し思ったんだけど、あなたって、ちょっとシンくんと話し方似てるよね?今はシンくんの見た目だから尚更そう思うかもなんだけど」
「おぉ〜、わかる?ていうかシンくん自体、僕の生まれ変わりみたいなもんだからね〜。あぁ、まぁこれは説明ややこしいからいいや。ごめんね、色々話を聞いてもらって。そろそろみんなと帰りたいよね?」
ニゲルは少し名残り惜しそうにしていたが、サヤに聞く。
「うん、まぁ色々やることもあるし?でも、私意外とあなたのこと嫌いじゃないかも。神様ならまた会えるかもなんでしょ?その時はもっと楽しいこと考えてよ〜。なんかこんな変なゲームじゃなくてさ〜」
「へ、変なゲーム。僕なりには考えたんだけどな…うん、ありがとう。もしかしたら、会うこともあるかもしれない。ないかもしれないけどね。このまま、サヤちゃんと、みんなをそれぞれの世界へ戻すことにするよ」
ニゲルは両手を広げて、サヤの前にかざす。
「あ、結構そんな簡単にできるんだね。くろくまくん、だっけ?ありがとうね、それなりに楽しかったよ」
「ありがとう。サヤちゃん、愛してるよ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!シンくんの顔で言うからキュンとしちゃったじゃない!いきなり愛してるは、ナシだよ〜」
「あはは。ごめんごめん。じゃあ、そろそろさようならだね。また会う日があれば。バイバイ」
サヤが光に包まれて、その瞬間部屋から消えた。部屋にはニゲルが1人いるだけである。
「終わったな。いや、終わってはない。僕の…僕たちの戦いは、これからだからね」
ニゲルの目は、どこか遠くを見ているような、それでいて何も見えていないような、そんな様子であった。
ニゲルゲーム解答編となりました。
ややこしいルール、そして、わかりにくい図面の中、予想をしたり、考察をしていただいた読者様に感謝いたします。
ニゲルゲームは終わったのですが、あと少し、ニゲルのひとりごとのようなお話が残ってますので、もしよかったら、最後までお付き合いいただけたら幸いです。




