ニセモノは誰だ!?
ついにニゲルゲームが始まった。果たして誰が勝つのか。このまま無事に帰ることができるのだろうか。
数秒間部屋が真っ暗になった。そして例の機械音声が響く。
『ニゲルゲーム、スタート』
ニゲルの声に合わせて、部屋の壁面の端から順に明かりが点いていく。
「おっ、さっきより広い部屋だね〜。おーい、みんな〜!」
サトシがのんびり言う。サトシは部屋の真ん中あたりに立っていた。明かりがほぼすべての壁面に灯ったあと、天井の明かりも一度に全てついた。召喚された7名は、みんな散り散りに配置されていた。四面の壁には、それぞれ「北、西、南、東」と漢字で一文字、方角が書かれている。皆が立っている床は、先ほどの部屋でゲームの説明を受けた時に映像で出てきたように10マス×10マスの将棋盤のように仕切りがあり、1マスはおよそ1m×1mほどで、白っぽい色と黒っぽい色の大理石のような模様の床であった。
「リアル将棋盤みたいな感じだね。駒はみんなバラバラだけど。これは苦労しそう…」
シンが言う。
『みんなには、すぐにぶつかり合わないように、少し離れて配置させてもらってるよ。床を見れば書いてあると思うけども、マス目それぞれに番号がある。1列目の1番左端が1-1。そこから右へ、1-2、1-3…となり1-9のあとは1-0となる。同じように2列目は2-1〜2-0。最後の10列目は0-1〜0-0となってるよ。まぁ特に自分の位置を言い合うことはないと思うけど、今自分がどの位置にいるかの把握に使ってもらうといい』
ニゲルの説明通りに行くと、サヤは1-1、アヤミが1-0、サトシが5-1、シンは5-0。タクミは0-1、アルドが0-6。最後にグラティアは0-0のマスにそれぞれ立っていた。
『で、初手の一番手はサヤちゃんだね。それに続き、アヤミ、サトシ、シン、タクミ、アルド、グラティアの順番で駒を動かすことになるよ。あっ、あと急きょ新ルールが出来たから、今から発表するね』
「えっ、新ルールってなに??」
「やっぱきたで〜、これ」
サヤとタクミが言う。
『この7名の中に…ニセモノが紛れている。皆さんにはゲームをしながらも、紛れているニセモノを探し当ててほしい。ニセモノを言い当てる時は声をかけてくれたら、ゲームは一時中断し、シンキングタイムもストップするから。以上だよ』
「「「「ニセモノ!!?」」」」
「もしかしたら、ニゲルの嘘かもしれんぞ…」
グラティアが言う。それに対してニゲルが答える。
『いや、嘘じゃないよ。ニセモノは必ずいる。あと、ゲームが終了するまでにニセモノを見つけることができなかった場合、ゲーム失敗とするよ』
「えっ!そんなん無茶苦茶やんか!どうやってニセモノを探せっていうん?」
とタクミ。盤に立つ7名は、見たところ先ほどと変わった様子はないし、怪しいところもなさそうだ。
『ゲームだけに集中してたらニセモノはきっと見つからないから、なるべくみんなで話しながら、探していけばいいんじゃないかな〜?はいっ、じゃあサヤちゃん、今から3分カウントするから、駒動かしていってね〜』
「あぁもうっ!ゲームだけでもややこしいのに、ニセモノ探ししながら、ってどんだけややこしいのよ〜!とりあえず私は、駒の動かし先を考えるから、それ以外のみんなで、お互い会話してニセモノっぽいやつ探してくれる〜?」
サヤが提案した。ふと、北側の壁を見ると、時間が1秒ずつ減っていくカウンターが表示されている。サヤはすでに移動する方向は決めたようだが、会話時間を稼ぐために、3分ギリギリまで待つ魂胆らしい。
「ねぇ、僕思ったんだけど、グラちゃんのミサイルって、壁かプレイヤーに当たるまで進むってことは、縦横斜めの直線上に誰かいたら、その時点で取られる、ってことだよね?」
アルドが誰に言うでもなく、話した。
「アルド、今さら気づいたのか。ミサイルの私は今の時点では最強だぞ。それに駒を取れば更に強くなる。今のところ私のターゲットはアルド、お前だ」
「えっ、ウソ〜!」
グラティアのコメントは、NGワードではないようだ。特にニゲルから指摘はなかった。
「タクちゃ〜ん!今日の晩ごはん何食べたいか、ゲームしながらでいいから考えときよ〜!」
完全に緊張感のない、幽霊母ちゃんアヤミ。それに対してタクミが返す。
「母ちゃ〜ん!!今日の晩ごはんのことはいったんええから、さっきサヤさんが言ってたみたいに、ニセモノ探しの会話のヒントになるようなことを、みんなで話し合うんや!今、僕も考えとるから!」
「ニゲルさん、質問していいですか?ニセモノを当てるタイミングって、いつでも大丈夫なんですか?」
サヤがニゲルに質問をした。
『う〜ん。まぁいつでもいいよ〜。あ、そろそろシンキングタイムが終わりそうだよ』
「わかってる。じゃあ私は、右に1マス移動するね」
まず、初期位置をここに記す。
サ▢▢▢▢▢▢▢▢あ サヤ あやみ
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
さ▢▢▢▢▢▢▢▢シ さとし シン
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
タ▢▢▢▢ア▢▢▢グ タクミ アルド グラティア
2番目のアヤミは左に2マス、3番目のサトシは右下に2マス、4番目のシンは左に4マス移動した。次はタクミの番だ。
「これって。もう進む方向ひとつしかないやん」
タクミは左下の端だから、右上に4マスしか行けない。シンの1つ手前でタクミが止まる。
「うわっ!危な…やっぱり盤面が少ないから、移動ができる範囲自体が限られてるよね。これはやっぱり苦労するぞ…」
と、シン。残りはアルドとグラティアだ。
「んーと、これ右も左もどっちにしてもグラちゃんに取られちゃうから、僕も上に行くしかないよね〜。じゃあ上に1マス」
「お…これは私は早くも詰んだな。どちらに取られるか、というだけになるが…まぁどちらでもいいか。左端に行く」
グラティアが移動したことによって、7名すべての移動が終了した。
「あっ、グラティアさん、左でも、上でも、左上の端でも、誰かに取られる位置だったんやね。まぁこれは取る方になるか、取られる方になるか、だけやもんね」
次ターンでグラティアの駒を取ることになる、タクミが言った。
『はいっ、とりあえず1ターン終わったけど…ニセモノは誰かわかったかな?ちなみにニセモノを間違って指名したら、その時点でドボンだよ』
「何気に結構キツイルールだよね…まぁとにかく進めながら考えるしかないか。なんか何気に私、ちょこまか動いてるだけで、全然活躍できない気がするんだけど〜」
と、サヤ。
ひとまず1ターンが終わったあとの盤面の状況を載せておく。
▢サ▢▢▢▢▢あ▢▢ サヤ あやみ
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢シ▢▢▢▢ シン
▢▢▢▢タ▢▢▢▢▢ タクミ
▢▢さ▢▢▢▢▢▢▢ さとし
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢ア▢▢▢▢ アルド
グ▢▢▢▢▢▢▢▢▢ グラティア
『んー、なかなか動きがないからつまんないね〜。2ターン目は少し楽しくなるのかな?ニセモノ探しも頑張ってよ〜!』
機械音声のニゲルがつまらなさそうに言う。
「まだまだこれからよ!じゃあ2ターン目さっさと行くわよ!右下に1マス。とりあえず駒を取り合って、少し減らしましょうか」
「サヤさんわかったで〜。じゃあ私は下に2マスな」
アヤミが動く。そのあとにサトシが右上に2マス動いた。
「ちょっとお父さん。密集しすぎですよ〜」
「いいじゃんいいじゃん、どうせ俺取れないし取られないんだから」
「まぁそうですけどね…じゃあ下に4マス進んで、アルドくんを取ります。アルドくんごめんね、苦労かけて」
シンが上にしか進めなかったアルドの駒を取る。これでシンは、ヒーヒーシャビビリに進化した。
「僕、ほとんど何もしてないんですけど〜」
アルドが拗ねて言う。
「大丈夫だ、アルド。私もほとんど何もしていない」
「ごめんやで、グラティアさん。ほな左下に4マス進んで、グラティアさんの駒を取るで」
元の初期位置にタクミが戻り、グラティアを取って、タクミはカーカークミサイルに進化した。これで7名中2名が脱落。そして2ターン目が終了した。
2ターン終了時の盤面の状況を載せる。
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▢▢サ▢▢▢▢▢▢▢ サヤ
▢▢▢▢▢▢▢あ▢▢ あやみ
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢さ▢▢▢▢▢ さとし
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢シ▢▢▢▢ シン
タ▢▢▢▢▢▢▢▢▢ タクミ
シンがヒーヒーシャビビリに、タクミがカーカークミサイルに進化した。
『少しは動きがあったね〜。どう?ニセモノはなんとなくわかってきたかな?』
「いいからさっさと、3ターン目いくよ〜!」
なぜか急ぎ気味のサヤ。何か焦っているのだろうか?それとも何か考えがあるのか。
次回へ続く。




