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箸休め 雪と白林檎

箸休めの小話です。

この時期は林檎やみかんが美味しいですわね。

ちなこの時点の娘っ子は見た目14歳くらいです。

アルフヘイムのどこか


しんしんと降り注ぐ、雪。

空を覆う、薄い雲とそこから僅かに覗く太陽の光。

木々からはその重さに耐えかねた雪達が

ボトリ、ボトリと落ちている。

辺り一面、平衡感覚を失わせる純銀の世界。

そんな、中に一軒。

優しい光が灯る家。


「冬ですねぇ。」


「ですねぇ。」


そこにあるのは、縦横2メートル前後のテーブルに布団をかけた珍しい暖房具”こたつ”。

そのこたつに相対するように、入り浸る2人の男女。


エルフの青年と、やや彼よりも短い耳をもつ少女がその幻想的な風景をおかずに黄昏ていた。


「お父さん。」


「ん?」


「りんご食べたい。」


何処にでもあるような、普通の親子の会話。

ねだる様に少女が呟く。


「あぁ、そこの棚にこないだ弟が持ってきた白林檎があるぞ?」


白林檎

アルフヘイムの奥地に冬季のみ実るという、珍しい果実。

彼の弟が、数日前に取りすぎたからとお裾分けに来たのだ。


「お父さん…私こたつを出ると死んじゃう病なの。」


「奇遇だな。お父さんも同じ病気に罹ってるんだ。」


絶妙な空気が2人を包む。


「「じゃんけんぽん!!」」


男が出したのは二本指。

少女が出したのは握り拳だった。


「な…..」


「やったー!ほれほれ、とってきたまえよー!」


「ぐぬぬ….チッ、しょうがないか。」


-雷槍-


そう男が唱えた瞬間、彼の手に美しい純銀の槍が現れる。


「….ふぬぬ!!」


彼は、その槍を棚の”白林檎”目掛けて突き立てた。

サクリという音と同時に、彼の手に白林檎が渡る。


「ちょっ!」


少女が、まるで虫でも見たような引き攣った表情を露わにする。


「お父さん!なんで槍でわざわざ取るの、汚いよ!」


「いやだって、丁度いい長さだったからな。」


「長さの問題じゃないよ!うわぁ、その白林檎もうドラゴンの油でギトギトよ….」


はいはい、という気の抜けた返事と共に男はその槍を巧みに扱い林檎の皮を剥いていく。

チラチラと少女はその様子を神妙な表情で眺めていた。


「食べないからね。」


「そうか。では俺だけ食べるとしよう。」


シャクリという音と共に、均等に切られた林檎の一つが欠けていく。


「あ….」


男はこれ見よがしに、ゆっくりとその果実を口に運び少しづつ齧っていく。

ニコニコと機嫌の良さそうに食べるその姿は、まるで貧民が突然高級料理を振舞われたかのようだった。


チラチラと男が少女に視線を投げかける。

少女はバツが悪そうにもじもじと何か言いたそうにしているが、中々その口を開けようとはしない。

男が3つ目の林檎に手を伸ばそうとした瞬間。


「….も….べる。」


「え?」


「やっぱり、私も食べる!」


男が勝ち誇ったようにニヤニヤと少女を眺める。


「なんだ、油まみれの林檎がそんなに欲しいのか。」


「いいから頂戴!」


少女がフンッと手を伸ばすが、いかんせん手が短くまるで届いていない。

むすっとした表情で、見上げるように男を見つめた後で少女は不貞腐れたのか、勢い良くこたつに潜ってしまった。


「はいはい、悪かった。お父さんの負けだ、ほらとっとと出てきて食べろ。」


そう言っても少女は中々出てこない。


「ラティナ? まさか、のぼせ…!」


「ばあ!!」


男が少しばかり焦りを見せた瞬間、彼の胸に目掛けて少女が飛び出してきた。


「こんなんで、のぼせるわけ無いじゃん。お父さんは天然だねぇ。」


さっきのお返しと言わんばかりに、少女がニヤニヤと男を見つめる。

そして、少しばかり表情を緩めた彼女は嬉しそうな顔で告げた。


「ありがと、お父さん。」


「あぁ。」


そう告げると、少女は男に背を向けもたれかかる様に座り

目の前の白林檎をシャクリと頬張った。

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