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第4章 3幕 7 焔獄竜

(な…魔竜じゃない!?じゃあこの臭いは、間違いない原初だ!)


目の前にいる、赤褐色の鱗に身を包む巨大な竜の放つ臭い、そして何よりその気迫は間違いなく原初のものだった。


「ーーーッ!!」


「焔獄竜?見た目通りの、炎使いか。」


動揺を悟られないように、冷静な声音で話す。ここで、弱腰と捉えられると連携に乱れがでる。ギドラとはあくまで同じ身体で共生しているに過ぎない。心や痛覚も共有をしようと思えば出来るが、それをした場合お互いに精神が汚染されるだけでなく、色々と弊害が多い。

正直殆ど、お互いの心の内は知り合った中だが、親しき者にも礼儀ありだ。土足で他人の心にずけずけとのし上がって良いものではない。それはドラゴンとて同じようだ。


「しかし、巨人の国は遥か遠方、と言うより地下と言うのか?態々こんな国に出向く必要もないと思うが….。」


(コイツがギドラの言う通り、炎を司る原初の竜なら巨人の住む世界ムスペルスヘイムの存在の筈。しかし、そんな竜、しかも自分の縄張りを侵されでもしない限り、どんな種族にも原初は基本無頓着だ。つまり…)


「評議会の差金、か。」


答えは直ぐにでた。自分の力を削ぎつつ、仮想敵国(世界)の戦力を落とす。非常に合理的に見える判断に感じるが。


「バカじゃねぇのか?俺が、娘連れて逃げ出したらお前らがコレ相手にすることになるんだぞ?俺が、お前らに従う前提で話進めてやがる。」


正直、評議会の愚かさというよりバカさ加減には反吐が出る。人類を守る為に人類を危険に晒す、本末転倒だ。

それなら、俺を防衛に注力させ、上位者の誕生を待つなり、その間にエルフ王が見出した、”確実に上位者を生み出す方法”を調査させるなどもっと有効な時間の使い方があるんじゃないか?


「ーーーーー。」


「フフ、まぁそうだな。確かに、俺のせいだわな。」


評議会がこうなるのは想定内だったが、当然その中には本当に人類を思う高潔な人物がおり、必ずこの腐りきった大国に改革をもたらしてくれる。そう、かつての”義父”のように。


「そう、思ってたんだがな。」


そう吐き捨て、男は臨戦体制に入る。


-偽りの竜王(ギドラ)-


男の背後から、彼の相棒たる邪神。ギドラが姿を現す。背中から生えているようにも見えるが根本は半透明になり、背中から浮遊しているよう外見だ。


-双頭の竜王(ツインヘッド)-


顕現したドラゴンが二つに分裂する。

片方が水を司る竜、もう一方は雷を司る竜だ。


(いきなり雷を出したか。いや、俺でもそうする。それに常識なら氷を出すべきだが、コイツの耐性がそこらのワイバーンの常識に当てはまるとも限らない。)


「流石ギドラさん!慧眼だ。」


「ーーーー。」


「別にお世辞じゃないんだけど、まぁいいか。」


ギドラにはお世辞と捉えられたらしい。昔はどんな適当な賛美の言葉でも、ゲラゲラと笑って喜んだのに。捻くれたんだか成長したんだか。


「さぁ、始めようか!!」


このミズガルズの最果てにて、ミッドガルドが誇る最強の戦神と、

世界を創造した原初の神々、その眷属が激突しようとしていた。

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