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23話 テレビ出演

「#$%%&&」


 とあるダンジョンの最奥で何かが動き出す。人のようにも見えるそれは背から生える翼を大きく広げ、その場から飛び上がると、そのまま上階へと飛び去っていく。まるで何か獲物を見つけたかのように笑みを浮かべながら。



 ♢



「さあ! 今週も始まりました! ダンジョンキングダム! そしてなんと今回は特別にあの『摩天』内部を探索させてもらえることになりました!」


 テレビのリポーターがカメラの前でハキハキと話している姿をカメラが映らない場所から眺めて待っている。周りにはAZUSAさんと私を合わせて五人のダンジョン配信者が並んでいる。


 ていうかもう生放送始まってるんだよね? 今から私の姿が全国に届くんだよね? 初めて配信を始めたときと同様の緊張感が私を襲う。視聴者はいつもの顔馴染みではなく、全く知らない人達なんだからちゃんとしないと。


「今回は更にゲストもスペシャルとなっておりますよ~。それではまずはこの方! 甘いマスクに隠された一騎当千な戦いぶりを見せてくれる、ダンジョン配信界の貴公子! AZUSAだー!」


「こんにちは、AZUSAです。今回は皆さまの期待に応えられるよう精いっぱい頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします」


 早速、AZUSAさんがゲストとして呼び出されて挨拶をする。AZUSAさんに言われたことを今一度思い出す。テレビではあまり慣れていない人が何か話さなきゃと思って話してしまうと却って印象が悪くなる時がある。


 そうじゃなくてテレビのプロであるリポーターさんの質問を返しさえしていれば後は黙っていても勝手に進行してくれると話してくれた。その後に爪痕を残したいのなら話せばいいと思うけど、茉奈ちゃんはそう言うタイプじゃないだろうしね、と付け加えられて教えられた。


 その言葉が今の私の支えとなっている。現にAZUSAさんも最初の自己紹介以外はあまり話さず、質問を返しているだけで終始しているしそれで良いのだと確信も持てる。


「それでは最後の方はこの方! ダンジョン配信界に突如現れた謎の仮面少女。その歌声は天使と悪魔の顔を持つ、まさに変幻自在の美声! 更に短期間でダンジョン踏破を成し遂げた無類の強さを誇ります! 誰しもが羨むその美声と戦闘スタイルで確固たる地位を一夜にして築き上げた最強歌姫、マナ~!」


「よろしくお願いします。マナです」


 そう言って私は他のダンジョン配信者さんの横に並ぶ。リポーターさんの前口上があまりにも恥ずかしすぎて更に緊張しちゃったけどなんとか噛まずに挨拶できてよかった。ちょっと照明が明るすぎて目を細めちゃったけど気にしない気にしない。


「マナさんは最近また新しいMVを出されたという事ですが」


「今回、ここで披露出来たらなと思っております」


「わ~お! それは楽しみです! 歌姫マナの最新作がこんなに間近で聞けるなんて! 私大ファンなんですよ~」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 AZUSAさんの言っていた通りこちらが話題を振らなくても向こうからどんどんと話題を振ってくれる。まるで私が話し上手になったみたい。勘違いなんだけどね。


 それからリポーターさんと数度会話を交わしたのちに、マイクがこちらから離れていき、カメラが全体を映し出す。


「それでは今回こちらの五人のダンジョン配信者の方々と共に難関ダンジョン『摩天』を攻略していきます。それではCMに入りますので皆さまチャンネルはそのままにどうぞお楽しみください!」


 リポーターさんがそこまで言ったあと、はいオッケーです、というスタッフさんの声が聞こえていったんは終了する。この後は各々で好きなようにダンジョン探索をしてその姿を後ろからリポーターさんが実況していくのだという。


 テレビと歩幅を合わせないといけないから目標は5階層までってことだし意外とラクチンかも。


 そんな私の思いはすぐに砕け散ることとなるのも知らず、伸び伸びとその時を過ごしていた。

ご覧いただきありがとうございます!


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