エピローグ:その後の私達
2話投稿していますので、前話まだの方はそちらを先にお読みくださいませ。
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少しだけ、その後の私たちの話をしよう。
私は卒業後、予定通りにテオドール様と結婚し、王太子妃となった。
結婚式準備にリッカが張り切りすぎて失敗を繰り返したり、浮かれたテオドール様が部屋に収まらないほど大量に贈り物をしてきたり、なんだか地味に大変なこともあったけれど全部いい思い出だ。結婚式でも嬉しいことがたくさんあった。私は本当に幸せ者。
ゆくゆくは王妃となる身。公務も増えて、とても忙しくしている。充実の毎日だ。
メイはその後、なんと王太子妃である私の専属侍女になった。
侍女と言っても側近に近い存在。
正しくは近衛魔法師。つまり、侍女も担う最強の護衛だ。
平民であることを思うとこれは異例の抜擢ではあるのだけれど、大魔女討伐の真実を知る上層部は誰もが賛成したのだとか。仕事の合間を縫って、王宮魔法師団の錬金術工房にも顔を出しているらしい。
そして、もっと驚きなのが……彼女はオリヴァー先生の婚約者になった。最初に聞いた瞬間は気絶するかと思うほど驚いたけれど、時間が経つほどになぜかじわじわ納得した。2人が結ばれるまでにはオリヴァー先生の身分のことなど含め、紆余曲折色々あったのだけれど、それはまた別のお話。
サマンサ様は王宮魔法師団に入り、相変わらず魔法を磨いている。在学中にすっかり魔法バカになったらしい。「天職だわ!」と生き生きしている。それから、実はこっそり偽名を使って芸術家の活動もしている。主に絵を描き、たまに魔法で練り上げた土を使って像を創っている。いわゆる覆面芸術家。彼女の作品はかなりの高値で取引されている。サマンサ様は、いつかの夢物語を全部現実にして見せたのだ。モチーフはいつも同じ天使様。……その天使様が蜂蜜色の髪に紫の瞳なのは余談である。私のこと大好きじゃない?そして、最近なんだか宮廷楽師の男性とイイ感じらしい。定期的に開いているメイと3人のお茶会で、今度じっくり聞きだす予定だ。
カイゼルは相変わらず。魔法の天才として、そして魔法師団の次期師団長として頑張っている。テオドール様やランスロットお兄様によく呼び出されているみたいだけど……無茶なことばかり言われていないといいなと思う。今度2人に少し釘を刺しておこう。
彼はずっと、最高の親友の1人。あまり結婚には興味がないみたいで、いまだに婚約者どころか恋人の1人もいない。さすがに一生独身は許されない身なので、いつかカイゼルも素敵な人と出会えるといいな。
お兄様だけど……なんと来月にはスヴァン王国のリュリューナ王女殿下がリンスタード侯爵家に嫁いでくる。「リュリュと呼んで!」とにっこり笑った隣国の王女様はもうすぐ私のお姉様になるのだ。デイジーがスヴァン王国へ留学するにあたって、リュリュ様が随分と尽力してくださった。そして交換留学という形をとって、ご自分がマクガーランド王国の学園に留学してきたのだ。抜かりない。そして相変わらず情熱と行動力がすごい。最初は少し嫌そうな顔をしていたと思ったけれど、気が付いたときにはお兄様の方がリュリュ様にべた惚れだった。何がどうなってそうなったの?なんにせよ、愛するお兄様が幸せそうで何よりだ。
ソフィア様は今、侯爵家から籍を抜こうとしているらしい。ラグリズ侯爵家は……一族の女性が働くことを良しとしないから。ソフィア様は今、両親の反対を押し切って王宮に勤めている。王宮心療士として。スヴァン王国で取り入れられている職業で、またの名をカウンセラーというのだとか。心に傷や苦しみを抱えた人達の話を聞き、寄り添い、解決に導く。……「もう2度と、邪に落ちてしまう悲しい人が現れないように、誰かの助けになりたいのです」そう言っていた。王宮心療士自体、最近できたばかりの役職で、彼女の進む道は厳しいものになるかもしれない。それでも私は、出来る限り力になりたいと思っている。
それから、神殿と孤児院に通うことも続けているようだ。……次期大神官候補のミハエルがすごく優しい顔でソフィア様の話をしてくれたのだけど、そういうことだと思っていいのかしら?
キースやナターシャは希望通り王宮魔法師団へ。マリンは王都の医療院の医師になるべくさらに進学した。ドミニクは実家を継ぐため引き続き修行中で、相変わらずテオドール様のお仕事もしているみたい。ジミーは他国を旅して歩いているらしい。他の魔法基礎クラス改め特別クラスの面々もそれぞれ自分の道を歩んでいる。
王都の大神官様は、神殿としての責任を取ると言って王都を去った。今はリタフールの神殿にいらっしゃるらしい。入れ替わる様にドロシーが王都へやってきて、ミハエルについて勉強している。
これを機にミシェル様の神殿からの国外追放も取り消され、彼女はマクガーランドへ里帰りすることができるようになった。今も文通は続けている。彼女から学ぶことはまだまだ多い。
デイジーは……あれだけ王族はこりごりだと言っていたのに、どうもリュリュ様の弟君、スヴァン王国の第三王子殿下に気に入られてしまったらしい。どうにもしつこいのだと嘆くような手紙が届いた。実は彼女とも文通をしているのだ。私はすぐに彼女を大好きになって、今では大切な友人の1人。リュリュ様を見ていると……スヴァン王国の王族から逃れるのは大変そうだ。でもきっと、ものすごく大切にしてくれると思うわよ?
ジェイド殿下は相変わらず。テオドール様が時々会いに行かれているみたいだけれど、私はあれから1度も顔を見ていない。時々正気に戻っては、私に会いたいと零すらしい。だからこそ私は……会いに行くべきではないと思っている。ソフィア様が定期的に訪問しているのだとか。もちろん職務として。彼が少しでも安らかに過ごせるように、祈っている。
――そして、実は今ここに、新たな命が……。
「おめでとうございます!エリアナ妃殿下、テオドール王太子殿下!男の子と女の子の可愛らしい双子の赤ちゃんですよ!」
黒髪に紫の瞳の夜の女神のようなお姫様と、蜂蜜色の髪に金の瞳の太陽の天使のような王子様。私の、私たちの宝物がまた増えたのだ。2人も!なんて……可愛いの。
「エリアナ……エリー……ありがとう」
テオドール様は涙を流しながらぎゅっと私を抱きしめた。
私も込み上げる涙を堪えられない。
「テオドール様……愛しています、これからも、ずっと……」
テオドール様は泣きながら微笑んで、瞼に、頬に、私の涙を舐めとるようにたくさんのキスを降らせてくれた。そして最後に、唇に深い深いキスを……何度も。私が疲れて眠ってしまうまで、テオドール様はずっと私を抱きしめていてくれた。今夜はきっと、いい夢を見られるに違いないわ……。
そうして私達の物語は、これからもずっと続いていくのだ。
夢のように幸せな人生が……幕を下ろすその日まで。
これにて本編完結です。
ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございます。いつも誤字報告をしてくださった方も本当にありがとうございました。心から感謝してます!
もし良かったら、評価ポイントや感想など頂けたらすっごく嬉しいです!
よろしくお願いします。
初の長編作品、少しでも楽しんでもらえるかな…?とドキドキしながら書いてきました。
実はささやかな伏線をちょこちょこいれてます。
エリアナは無意識のうちに、「ジェイド様」と呼んでいる時も、心の中は「ジェイド殿下」と言い続けていたりとか…もしも2度目、3度目と読んでいただけることがあればそういう部分も楽しんでいただけたらいいなと思っています。
この後はいくつか番外編を更新したいと思ってますので、またエリアナや皆の物語を覗きに来ていただけたら嬉しいです!
ということで、後ほど活動報告の方に今後の番外編の予定と、新連載の予告を載せますので、そちらもお読みいただければ幸いです^^
ありがとうございました!




