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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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97話、水源の少年? その名はロゼ

 作ったツナを【ストレージ】に収納してから一度、俺は[バリオン]に向かう。


 食糧問題は何とかできるだろうが、水だけはペットボトルを配るわけにはいかない。

 魔石も考えたが高級品の魔石を大量に仕入れて配るとなると、資金についてメフィスが絶対に質問してくるだろう、それは正直、後々面倒になるので避けたい。


 そのため、[バリオン]にある水源から直接、水を調達するのが今回の目的になる。


「悪い、ミア、ニア、ナギ、俺と[バリオン]に向かってくれないか?」


「構わないけどさ。オッサン、みんなで行かないのかよ?」


「今回はスピード重視で行くつもりなんだ。他のみんなには、[カエルム]で『フライデー2号店』の復旧をダイン達としてもらいたい」


 軽く内容を説明して、俺達水補給組と、ベリーを中心とした復旧組に分かれて行動を開始する。


 一緒についてきたミアが急ぐ俺に質問をする。


「ねぇ、オッサン、いきなり[バリオン]に戻ってきてどうしたんだよ! 水源がどうとか言ってたけどさ」


「ああ、軽く説明しただけで来ちゃったからな、[バリオン]の川から水を調達したくてな」


 そう語りながら[森の入口]を抜けて[森の終わり]までを駆け抜けていく。


「川ならいつもの場所に河原があるじゃんか、そこから持ってけばいいじゃんか? なんでさらに奥に進むんだよ!」


「川の先には、湖なんかがあるはずだ。いきなり大量の水を川から取るより、水源からもらいたいんだ」


 俺はそう語ると、そのまま[樹海の入口]へと足を踏み入れる。


 その際にミアと俺はコカトリスに遭遇しても大丈夫なように石化解除ポーションを一気に飲み干していく。


 今更、コカトリスにやられるようなことは無いだろうが、コカトリスに構う時間すら惜しいからだ。


 なので石化解除ポーションを飲み干した俺達はコカトリスを完全スルーして進むことになる。


 本来は高級ポーションの1つである石化解除ポーションだが、俺は前回のコカトリス戦で既に大量に使える状態になっているから、なんの問題もないが、普通のパーティーがこんな方法を取ったとしたら、間違いなく大赤字だろ。


 ミアとニアが索敵と敵の把握を行い、俺はナギに運んでもらう。

 かなり情けない姿だが、これが一番早く水源に行けるので、背に腹はかえられない。


 俺達は速度を上げて進んでいくが、やはり森の中では無数の魔物が出現する。

 そのため、避けられない戦闘も当然存在した。


 殆どがオーク達であり、無数の群れを成して襲ってきたがしっかりと返り討ちにしていく。


 ミアとニアの素早さに翻弄されたオーク達が次々に倒される中、ナギに向かって突進するオークリーダーの姿があった。

 俺は一瞬、焦りの表情を向けたがそんな心配は杞憂だと言わんばかりにナギがオークリーダーを力でねじ伏せていく。


 ただ、ナギがオークリーダーを頭から噛み砕いた瞬間を見て、俺のデリケートな部分が縮み上がったことは内緒だ。


 とにかく、急いだ結果、無事に水源まで辿り着くことができた。


「ここが、川の水源なのか……思ってたよりも寂しい感じだな?」


 俺が寂しいと表現した理由は、本来は木々が生い茂り、緑と野生動物に虫の声という様子を想像していたが、この水源はあまりに静か過ぎたからだ。


 ただ、水源が荒らされてるわけでも異常があるわけでもない。

 【食材鑑定】で水質に一切の問題が無いからこそそう判断できる。


「オッサン、早く、大量の水を手に入れて帰ろうぜ」

「ミアに賛成だにゃ、さっきからなんか不気味にゃ、嫌な雰囲気だにゃ」

「……マイマスター、なんかいる、水中からくる!」


 ナギの言葉に俺達は水源から距離を取り、身構えた。


 水源に突如、渦が生まれ、次第に巨大な円を作り出していく。

 渦の中心から人影が姿を現した瞬間、俺の頭に声が聞こえた。


〘やぁ、やぁ、君達は誰かな? あ、僕の声って、ちゃんと聞こえてるかな?〙

〘おーい! や〜ほ〜〙


 緊張感の欠片も無いような少年の声に俺は呆気に取られていた。


 俺が返事をしようとした瞬間、ニアが先に声を上げる。


「うるさいにゃ! もう少し静かに喋るにゃ、馬鹿みたいに叫んだら迷惑だにゃ!」


 まさかの発言に俺は急ぎニアに向けた視線を渦の人影に向ける。


 先程まで、しっかりと立ってこちらに話しかけていたその人影は体育座りをして、落ち込んでいるように見えた。


〘ごめんなさい、久しぶりに会話ができそうな人達だったから、叫びすぎました〙


「おい、ニア……なんか可哀想だろ」


 すぐに落ち込んでいる人影に声をかける。


「あの、悪かったな、悪気はないんだ……良かったら少し話さないか?」


 とりあえず、人影が誰なのかを知るため、会話することに決めた。

 俺の問いかけに、一瞬、こちらに視線を向ける

 水滴が目の前に現れたと思った瞬間だった。


 渦の中心にいたはずの人影が目の前に瞬間移動したように姿を現した。


「やぁやぁ、君は僕と話してくれるんだね! すごく嬉しいよ。あ、僕はロゼって言うんだよ! よろしくね」


 元気な声で勢いよく挨拶をする姿に驚かされたが悪意や敵意はないようで助かった。

 声をかけてきたのは、見た目が十代くらいの少年で短い金色の髪に青い瞳、服装は派手な見習い魔法使いを思わせるものだった。


「おう、俺はキンザン、こっちの三人は、赤髪ショートが、ミア。猫耳のニア、蛇人族のナギだ」


「そうなんだねぇ! こんなに沢山の人が来るなんて、久しぶりだよ〜嬉しいなぁ」


 純粋な笑みを浮かべるロゼに俺も素直に笑い返す。


 そんな俺達の姿を見たナギが問答無用で俺とロゼの間に割って入ってくる。


「マイマスター、警戒足りない、ダメ!」


 警戒心のない行動にナギからの注意が入り、それに合わせて、ミアとニアも俺の前に立った。


「あ、あぁ……うぅぅぅ」


 見るからに落ち込むロゼの姿に俺は三人の前に出る。


「みんなストップ。そこまで、ロゼ。すまないな。みんな本当にいい子なんだ。今はいきなりでアレだけどさ」


 俺の反応に色々と言いたそうな表情のニアとナギの姿があったが、それをミアが止めるように言葉を遮った。


「悪かった。ボク達はオッサンの嫁だからさ、心配だったんだよ……ごめん……な」


「うぅ、ミアもゴメンにゃ、悪気は無かったにゃ」


「ナギは悪くない! でも、驚かせた……ごめんなさい」


 三人が謝るとロゼの表情がパァっと明るくなる。


「僕もごめんね、嬉しくて喋りすぎちゃったからさ、許してね」


 慌てて謝るロゼの姿に、逆に三人が慌てる様子には少し笑ってしまった。


「あ、それで、皆は何をしにきたの? 普段、この場所に人が来るなんてないからさ」


 俺もロゼの質問に我に返って説明する。


 災害で水が必要であり、水源まで急いできた事実を話すとロゼは少し考えるようにして悩み出す。


「うんうん、話はわかったよ、すごく大変みたいだね? でも、水源から水を持ってくだけだと、解決しなくないかな?」


 ロゼは根本的な解決について話し出すと俺はその言葉に耳を疑った。


「それなら、僕がその街に行ってあげるよ。そうすれば、全部上手くいくしさ! この水源も落ち着いてるしさ」


「どういう意味だ? ロゼ、説明してくれ」


「分かりやすく言うね、僕は水を司る存在だからさ、被害を受けた水源を復活させてあげるよ」


 にっこりと笑うロゼの姿に俺は返事に困ってしまった。

 いきなり現れた少年が被災した街の水源を元通りにするなど、信じられなかったからだ。


「あ、信じてないって顔してる! 酷いなぁ、まったく!」


 頬を膨らませて、怒る姿は本当にただの少年にしか見えない。


「悪い、もし本当なら、すごくありがたい話なんだが、それでも今は水が欲しいんだ? 早急にな」


 俺はそう告げてから頭を下げる、本来はそんな必要はないのだろうが、今はそうするべきだと本能が告げたからだ。


「うんうん、わかったよ。なら、好きなだけ水を持ってっていいよ。はい!」


 そう言った途端、ロゼが人差し指を空に向けて伸ばす。

 その瞬間、指先に水源の水が渦を巻くように集まりだして、球体になっていく。


「さぁ、好きなだけ持っていって、僕は礼儀正しい人が好きだし、お兄ちゃん達だから、素直に水をあげたいんだ」


 純粋な笑みを浮かべるロゼに、そこはかとない恐怖を感じていた。頭を下げた理由はどことなく本能がそれを警告したのだと理解した。


「あれ? いらないの」


「いや、ありがたくもらっていくよ。ロゼ」


 すぐに【ストレージ】を開き、大量の水を入れていく。

 【ストレージ】が水を吸い込む姿にロゼが大興奮で次々に水を送り込んでくると俺は慌ててストップをかける。


「待て、待て! ロゼ、水源が枯れちまうよ!」


 俺の叫び声にロゼの指が止まり、慌てて、ロゼが水源に視線を向けた。


 水源の水量は既に半分程度、減ってしまっており、ロゼが両手を頬に当て、口をあんぐりと開き、驚きの表情を浮かべていた。


「あぁ、やっちゃったぁぁぁぁぁぁ! せっかく安定させてたのに……」


 さっきまでの強キャラ感が嘘のようになくなったロゼの姿を見て、慌てて【ストレージ】に入れた水を水源へと戻してやる。


「さすがに、こんなたくさんは必要ないから大丈夫だよ。ありがとうなロゼ」


「ありがとう、そうだ! コレを持ってってよ!」


 ロゼが小さな雫型の首飾りを俺に手渡してきた。


「これは?」と手渡された雫型の水晶でできた首飾りを見る。


「それがあれば、僕は一瞬でお兄ちゃん達の元に飛べるんだよ〜凄いでしょ!」


 ロゼは近くに水場があれば、いつでも俺達と合流出来ると説明してくれた。ただし、水場はある程度の広さが必要だと付け加えられた。


 理由としては、水の道を通り移動するため、水たまりや枯れ井戸といった水が繋がらない場所は無理なようだ。

 つまり、魔石で作り出した水や魔法、スキル等の水で無理矢理に湖サイズの水場を作ったとしても、水脈に繋がっていなければ移動は無理だそうだ。


「お兄ちゃん達の役に立てたら嬉しいし。何より、また話せたら嬉しいな、ずっと一人だったからさ、へへっ」


 そんな言葉に胸が少し痛くなったが、一旦、水を持って[カエルム]へと帰還するため、[バリオン]に戻ることにする。


「帰っちゃうんだね、なら最後に僕が送っていくよ」


 そう言うと、ロゼが両手を大きく広げてにっこり笑った。


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