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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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93話、フライちゃんの怒り、最強の冷却中

 嫁ちゃん達を泣きやませていき、一段落すると、フライちゃんとメフィスが俺の元にやってきた。


 よく見れば、メフィスは、なぜか上機嫌で口角が心なしか上がっているように見える。

 対照的に口をへの字に曲げているフライちゃんは頭から湯気でも吹き出すんじゃないかと思うほど不機嫌そうに見えた。


 二人が別で話していたのは、見ていたのでわかっている。内容が分からないことが少しだけ引っ掛かるが、フライちゃんを信じよう。


 ただ、やはり、小心者の俺はフライちゃんとメフィスがどんな知り合いなのかは、気になって仕方なかったりする。


 そんな心配した気持ちをフライちゃんが読み取ったのか、慌てて両手をバタバタと動かしていく。


「違います! 私はきんざんさんの妻なんですよ! 誤解しないでください!」


 その様子にメフィスが笑い出す。


「クスクス、いやはや、まさかのまさか……あの女神フライが、異性……いえ、他種族の男性に惚れるなど、誰に想像できましょうか、前代未聞ですなぁ」


「うるさいです! メフィス、今は黙ってるのですよ!」


「これは失敬、我輩としたことがあまりの衝撃的な事実に冷静さを失ってしまいましたなぁ」


 俺はメフィスとフライちゃんの話から、かなり前からの知り合いなのだと理解できた。


 一旦、二人と話したい気持ちを抑えつつ、嫁ちゃん達に余ったマグロもどきをどうしたのかを質問する。


「ああ、あれな。オッサンが気絶してからは漁師さん達が手伝ってくれて、なんとか全部の作業は終わったよ」


 話を聞いて、マグロもどきの締めは終わってるらしい、ただ問題は時間的に鮮度がかなり落ちていることだろうか……


 俺はすぐに現物の確認をするため、マグロもどきを見に行くことにした。


「悪い、すぐに素材の状態を確認したいんだ! ゴメン、何時間くらい寝てたか教えてくれ!」


「はぁ、貴方は、なにを考えているのですか! 今はそれ以上にやることが──」


「黙るのですよ、メフィス! それ以上、言うと私が本気で怒るのですよ! きんざんさん、意識を失ってから多分4時間くらいですよ」


 フライちゃんが優しく微笑み、そう告げると、メフィスが無視されたことに眉をピクピクさせながら喋りだす。


「な、本気で我輩とやり合うおつもりですか……手加減などしてさしあげませんが?」


「構いません……メフィス、私が本気で怒ったとして、無事でいられると考えているなら甘いですよ」


 互いに引く様子のない二人、ただ、俺は時間が経つにつれて、食材が無駄になる事実を知っている。

 だからこそ、メフィスには悪いが本気でその場から移動させてもらう。


 走り出した俺に向かってメフィスの部下達が慌てて声を出す。


「あ、待ってください!」

「と、止まってください!」


 そんな慌てるメフィスの部下達に、慌てた様にメフィスがつぶやく声が聞こえた。


「構いませんよ。また戻って来るでしょう……それより、今は無能にして、無脳な存在の処分をどうするかです、国王陛下がどう判断されるか……」


 最後の方がよくわからなかったが、とりあえず戻れば許すって部分が聞こえたので、俺は絶対に戻る事を心に誓った。


「マスター、待つの〜! ドーナ達もいくのーッ!」

「ドーナの言う通りです。ワタシもご主人様について行きます!」


 そうして、元ドゥム子爵邸から外に出た俺は追いかけて来た嫁ちゃん達と一緒にマグロもどきの元へと向かっていく。


 当然、マグロもどき達は、酷い状態であり、救いだったのは日の当たらない保管庫に水につけてあったことだろう。

 ただ、既に生食は難しいという状態だった。

 俺は過去の記憶を思い出しながら、必死に頭を悩ませていく。


 俺が意識を失った時間は夕暮れだったはずだ。フライちゃんが4時間って言ってたな──かなりギリギリか。


 後ろをついてきた嫁ちゃん達の姿に俺は無理な頼みを口にする。


「悪いみんな、今からやることを手伝ってくれ!」


 突然のことに嫁ちゃん達が不思議な表情を浮かべる。


「手伝うってなにさせる気だよ? ぶっ倒れたんだから無理すんなよな……まじに無茶苦茶野郎なんだからよ!」


「ミト、キンザンはそういう雄なんだにゃ! 諦めるにゃ」


「それよりもオッサン、説明しろよ!」


 俺は大量の巨大な発泡スチロールの箱を“買い物袋”から調達するとさらに塩と氷、冷たい水の2Lペットボトル、巨大なタッパーを次々に出していく。


「まずはこの箱に氷を入れてから塩と水を混ぜてくれ、かなり冷たくなるから、そのつもりで頼む!」


「かなりの作業になるわね……理科の実験を思い出したわ。キンザンさん、私、一旦フライちゃんを呼んでくるわ。時間を停めれば十分間に合うわよね?」


 ベリーの言葉に俺は待ったをかけた。


「いや、フライちゃんは、嵐の時に無理させてるから、時間を考えたら、そんなに無理させられないよ」


「ごめんなさい、そうね。なら私達だけで頑張りましょう、まずは塩と氷よね」


 俺はそこから、二手に分かれて作業を開始する。メフィスを抑えてくれているため、フライちゃんが不在なのは残念だが、俺、ニア、ミトの三人が巨大なマグロもどきの解体を行い、皮や要らない部分を切り離していく。


 当然だが、ニアとミトも“マグロもどき”を完全に解体したことがないため、俺が【調理器具マスター】と【食材鑑定】で捌いていく様子を見せながら、同時に捌いてもらうことにする。


 時間を掛けてしまうが、二人は一度しっかりと見れば、間違いなく問題ないだろう。


 次からは二人に一体ずつを任せられる。


 内蔵類を先に処理していたこともあり、マグロもどきは思っていたよりいい状態を保っていてくれた。


「よし、解体が終わったら、次にタッパーに入れてくぞ! ただ、量があるからって詰め過ぎないでくれ」


 俺は解体の手を止めて、ベリーを呼び、わさび醤油がタップリ入ったタッパーを作ってもらう。


 ミアやナギは、わさびの香りに悲鳴を上げそうになっていたが、今回は我慢して頑張ってもらう。


 一匹のマグロもどきで10個以上の巨大発泡スチロールを使うことになる。


 密封したわさび醤油入りのタッパーが巨大発泡スチロールの中に並べられて冷やされていく。


 すぐに【ストレージ】に入れると温度の変化が期待できない。少なくとも一時間は冷やしておく必要があるだろう。


 ただ、さすがにそのまま、マグロもどきを出しておくわけにもいかないので、捌く前のマグロもどきはしっかりと【ストレージ】にしまっていく。


 こうして、大量のマグロもどきのわさび醤油漬けが作られていく。


 俺達の作業が大詰めに差し掛かった頃、メフィスを引きずった状態で満面の笑みのフライちゃんがやってきた。


 フライちゃんは、普段整った服装をしているが、かなりボロボロになっていた。ただ、それに輪をかけて酷くボロボロのメフィスの姿があり、その後ろを心配そうな部下達が困った表情でついてきている。


「きんざんさん、遅くなりました。すみません」


 申し訳なさそうに謝罪するフライちゃんを見ながらも、ボロボロのメフィスに視線がいってしまう。


「な、何があったんだ……」と聞くのは野暮なんだろうが、背後の部下さん達に視線を向けると、すぐに目を逸らされた。


「気にしないでくださいね。少し、お仕置きをしただけですからね」


 フライちゃんはにっこり笑うとそう告げる。

 再度部下の皆さんを見ると、小さく頷いていた。


 理由をフライちゃんから、説明してもらうことで、何があったかが判明した。


 俺が出ていってから、メフィスとフライちゃんの言い争いが限界ラインを突破してしまい、メフィスがフライちゃんの逆鱗に触れたらしい。


 そこからは部下の皆さんから説明された内容になる。


 言い争いが白熱して、メフィスが「料理など興味ありません!」と言ってからフライちゃんが豹変し、それに対してメフィスが煽ったそうだ。


「良いですか、どんなに言葉を並べようと、国王陛下より大切なことなどないのですよ。しかも、理由が料理では話になりませんなぁ」


「アナタという人は……」


「な、何ですか! 事実でしょう? 女神フライともあろう方が、まさか、料理を理由に、まったく理解に苦しみます」


「アナタはきんざんさんの麻婆豆腐を食べたことがありますか……メフィス」


「へ? はて、我輩、そんな変な名前の料理は初めて聞きましたなぁ」


「なら、教えてあげましょう……どれほどに刺激的で情熱的なのかを!」


「何を馬鹿な……女神が、そんな理由で力を行使する気ですか!」


「当たり前ですよ。大切な人の成すべきことを侮辱したのですから、さらに麻婆豆腐を馬鹿にする愚か者に女神が天罰をくだしてあげるのですよ!」


 そこからは、フライちゃんの一方的な展開で、メフィスも抵抗したらしいが、さらに火に油を注ぐ結果になって、文字通りメフィスは燃え尽きたようだ。


 それが今を遡ること数分前の出来事だというのだから、本当に言葉を失う展開だった。


 ただ、フライちゃん相手に長々ともったメフィスもすごいんだけどさ……そんなメフィスを気絶させて引きずってくるフライちゃんはもっとすごいな。


 俺は軽く苦笑いを浮かべながら、煙草に火をつける。


 フライちゃんを怒らせるのはダメだと、気持ちを落ち着かせながら一服に集中した。


 ちなみに一服後に、考えを読まれており、すごく拗ねられて宥めるのが大変だった。


 フライちゃんが何とか許してくれたが、最後に小さく呟かれた「本当に怒ったら……すべての水を麻婆豆腐にしちゃいますからね」という冗談が冗談に聞こえず、俺は無心で苦笑いを浮かべていた。

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