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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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85話、つけダレは、いつも十人十色。決戦はフライデー!

 賑やかな昼食が終わり、ゆっくりと夕暮れに近づいていく。

 俺は明日の『揚げもん屋フライデー』本店の準備もあるため、一度[バリオン]に帰ることにする。


 しっかりとミトや女将ミネさん達にその事実を伝える。


「それなら、頭領達のご飯は任しとくれ」


 笑顔で胸を張る女将ミネさんと笑って話を聞いているリトに俺も笑みを返した。


 予想外だったのは、ミトが必要以上に落ち込んでしまったことだった。

 軽く話を切り出した途端、なにかを悩み、首を傾げた後、俺がこの砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]から離れることを理解したようで、複雑な表情でキッと睨まれる。


 話が終わる前に不機嫌そうな表情のままミトは、1人、二階に上がっていってしまった。

 不貞腐れたようにベッドで横になり、うずくまるミトの姿が室内にあり、とりあえず、誤解を解くために話しかけていく。


「おい、大丈夫か?」


「うるせぇ……詐欺師野郎、ずっと離れないんじゃなかったのかよ……嘘つき野郎……のバカやろう……最低だ……」


「落ち着けって、話の途中だったけど、ミト、1日戻るだけだから、なんなら一緒に来るか? 別についてきても構わないぞ?」


 その言葉にミトの耳がピクッと動き、少しだけこちらに視線を向けた。


「な、なんだよ……なんならって……どっちでもいいみたいで、嫌な言葉に聞こえるし……」


 最初は、ただ、怒っているのかと思って話を聞いていたが、会話を進める中で、ミトがなにかを期待しているようで、ソワソワしているのを感じた。


 チラチラと向けられる視線と表情を見ていると、謝りに来たのにもかかわらず、少し意地悪をしたくなる。

 心の中の自分が首を軽く左右に揺らし、そんな気持ちをぐっと抑えるように言い聞かせる。


 軽く深呼吸をしてから、優しく声をかける。


「俺は、ミトがついて来てくれたら嬉しいんだがな、ダメか?」


 ミトが横になっていたベッドからバッと頭を上げて俺へと視線を向ける。


「わ、わかった……そんなに一緒に居たいなら、行ってやるよ。いいんだよな?」


 軽く照れるような仕草に笑みを浮かべながら「おう、頼むよ」と伝えると嬉しそうに笑みを浮かべるミトの姿があった。


 気づけば廊下側から他の嫁ちゃん達も優しく微笑んで俺達のやり取りを覗いていた。

 俺達は、再度『フライデー』のクランハウスがある[バリオン]に向かうため、転送陣で移動を開始する。


 初めて転送陣を使用するミトは本当に大丈夫なのかと何度も聞いてくる。少しだけ、いや、かなり可愛く見える。


 数日を砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]で過ごした俺達は久々に[バリオン]の本店へと戻ってきていた。


 数日ぶりに戻ってきたが、やはり最初は清掃からだな……頑張るか。


「さて、明日のために、もうひと踏ん張り頑張るかな、みんなも頼むよ」


 嫁ちゃん達と開店前夜の清掃を行い店をきれいにしていく。


 追加の食材であるスコーピオン肉もしっかりと下ごしらえをしていき、スコフライとして串を刺して揚げるタイプと、ミンチにして食感を残しつつコロッケにしたスココロを作っていく。


 早い話が海老カツみたいなやつだ。実際に作ってから試食をしていく。

 試作の中には完全なミンチとざく切りにしたスコーピオン肉を混ぜた2種類を用意した。


 作り方はスコーピオン肉100パーセントにしてある。必要なら“はんぺん”を繋ぎとして使ってもよかったが、それだとなんか違う気がするから今回はパスだな。


 最初にスコーピオン肉を細かく刻んでから、片栗粉、塩を加えて混ぜる。

 混ぜたらそれをしっかりと水で洗い、粉をすべて流し落とす。

 さらにしっかりとキッチンペーパーで水気を吸い取っていく。


「よし、そしたら、すり鉢を出してっと」


 日本ならフードプロセッサーなんかがあるから早いだろうが、今回はお試しってこともあり、自分の手でしっかりとすり潰していく。


 粘り気のあるすり身ができたら、ざく切りにしたスコーピオン肉を加えて混ぜてから、一人前ずつに小分けしてやる。


 久々の発泡スチロール箱を取り出してから、中に市販の氷を敷き詰めて塩をかけていき、その上にアルミホイルを敷いていく。


 説明は要らないだろうが、これがあれば、こちらの世界でも軽い冷蔵庫代わりにできるだろう、俺からすれば必需品になっている。


 一人前ずつに小分けしたスココロをラップで包み、きれいに並べてから、冷やすことで調理がしやすくなる。そのため、しっかりと間隔をあけて並べていく。


 スココロを冷やしている間に、油で揚げる際に使うバッター液を作っていくことにする。


 スココロが冷えたら、バッター液にくぐらせてから、パン粉をまぶして油で揚げていく。

 最初に平たい円盤型に形成してあるため、しっかりと中まで火が通りやすくなっている。食べる際もこの形なら食べやすいだろう。


 スココロが揚がり、とりあえず、各自、一つ味見をしていく。


 嫁ちゃん達も新しい揚げ物ということで楽しそうに口に運んでいく。


「「主様、これ、すごいです!」」


 珍しくペコとグーが誰よりも先に口を開いた。


「主様、さくさくなのに、中はモチモチでグッと噛める感触があって、なんですかこれ!」


「グーの言う通りです! 主様……これは本当にすごい食感です! 固くないけど歯ごたえがあるし、口で噛むとモチャモチャするのに、プチプチってなります!」


 よく分からない説明だが、食感が面白いって話なんだろうか?


「キンザン、美味いにゃ〜タルタルソースが欲しいにゃぁ〜」

「確かにミアの言う通り、タルタルソースがあったらもっと美味くなっちゃいそうだな。オッサン、頼むよ。ボクも食べてみたいしさ」


 ミア、ニアが俺に頂戴アピールをしてくると、ベリー達も悩まずにタルタルソースを求めてきたので、一旦、スココロを揚げ直して、数種類のつけダレを並べていく。


 ・『タルタルソース』──まぁ定番のやつだな。

 ・『福の神のオラふくソース』──癒しの街[カエルム]のビーチで使った余りだな。

 ・『ラー油もどきと野菜のピリ辛ソース』──今回の新作だな。

 ・『オーロラソース』──フランス料理のやつじゃなくて、ケチャップとマヨネーズで作ったやつだな。


 個人的にはアボカドソースなんかもいいが、残念ながら、アボカドを買ったことはない。お試しで食べたアボカドソースは“買い物袋”でも取り寄せられなかった。


 とにかく、味見用のつけダレを用意して、全員で試食を開始する。


 やはり、一番はタルタルソースのようだ。


「やっぱり、タルタルが一番美味いにゃ〜」

「確かになんか、バッチリハマる感じがするよな! ボクもこれが一番だと思うな」


「ドーナは甘いソースがいいの! 美味しいの〜」

「マイマスター、ドーナに賛成、甘いの美味しい」


 少し意見が分かれてきたが、甘いのも受けるかもしれないな?


「「主様、この辛いソースが一番合うかと……」」

「ワタシもペコとグーに賛成です。ピリ辛で刺激的な中にスコーピオン肉の甘さが広がります。ご主人様、これが一番かと」


 口元を隠しながら、ポワゾンが絶賛するとペコとグーがホッとしたように笑みを浮かべる。


「私も三人に賛成です。麻婆豆腐程のインパクトはありませんが、これはこれで美味しいのです!」


 フライちゃんはブレないな……まぁ辛いのもありみたいだな。揚げてあるから硬くなってないか、少し不安だったが大丈夫そうだな。


「みんな、色々な好きがあるみたいね? 私はオーロラソースが一番ね、なんか懐かしいし、ミトも同じみたいね?」


「ベリーの言う通りだな、懐かしいとか分からねぇけど、一番さっぱりしてて美味いと思う、なんか幸せな味だしな……ふん」


 結局、みんな好きな味が違うんだな、ははは……


「さて、どうするかな? つけダレとして何をつけるか、決まらなかったな」


 俺の発言にドーナが手を上げる。


「マスター! ほしいの選んでもらうの! 無くなったら我慢してもらえばいいの」


 前回、タルタルソースが無くなって大変だったが、今回は他のつけダレもあることを考えればそれもありだな。ドーナの意見を採用することになった。

 俺は【ストレージ】に大量のつけダレを入れていく。


 そして、開店当日になる。

 開店時間前からできた列に、前もって説明を書いた紙を渡していく。

 紙はみんなで書いた物を俺が買って大量に“買い物袋”から取り出した物になる。


 早い話が十円コピーみたいなもんだな。少しもったいない気もするが必要経費ってやつだ。


 外からメニューの書かれた紙をみて楽しそうに雑談する声が聞こえてくる。

 気合い入れてから、オープンの看板をかける。


 オープンと同時に店内にお客さん達が入ってくると俺達『フライデー』としての戦いが開始する。


 いつも通りに注文をポワゾン、フライちゃん、ペコ、グーの4人が担当する。


 次々に入る注文をミア、ニア、ドーナ、ミトの4人が袋に詰めていき、レジ側に番号を貼り付けて並べていく。


 初めて参加するミトの表情は真剣そのもので、しっかりと袋に商品を入れていく。


 会計にはベリーとナギが並び、2人でしっかりと会計をしていく。


 ナギは以前『肉と欲望のバッカーン』で会計をしていたため、会計を間違うこともなく、ベリーと共に上手くやってくれているようだ。


 そして、俺はオーダーを聞きながら、追加の揚げ物を油で揚げつつ、減りだしたつけダレを作成していく。


 タルタルソースがやはり消費が早いため、どんどん作っていく。


「オッサン、ラビカラも追加で揚げてくれ!」

「にゃにゃ、なら、オーコロも頼むにゃ!」


 前側からの声に即座に動き出す。


「任せろ! すぐに追加を揚げるから、また三分の一が売れたら言ってくれ!」


 以前までの反省を活かして、俺達は三分の一が無くなった時点で追加を揚げるようにしている。


 閉店時間の夕方までは絶対に品切れをさせないという強い思いで揚げていく。


 次々に出ていく商品に焦りながらも、俺は手を休めずに必死に揚げていく。


 全身が油まみれになるような感覚だが、それ以上に嫁ちゃん達が必死に働く姿が俺を動かしていく。


 閉店間際になると殆どの商品が完売しており、最後のお客さんを笑顔で見送り看板をひっくり返す。


「みんな、お疲れ様」と笑うと嫁ちゃん達からもニッコリと笑みが帰ってきた。


 俺は改めて、嫁ちゃん達に支えられているんだと実感した一日だった。

 これからも変わらずに嫁ちゃん達と頑張ってやっていけたら幸せだな。

読んでくださり感謝いたします。

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