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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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84話、未知の料理とごめんなさい。

 調理場に立った俺は最初にレッドスコーピオンの頭部側にあった背甲をひっくり返して火で炙っていく。


「な、なにしてんだよ! 馬鹿野郎か、馬鹿野郎なのか! そいつは防具として使うもんだぞ! 勘違い野郎!」


 怒りながら叫ぶミトと唖然とするバルガスを横目に火力を強めていく。


「まぁ、見てろって色々驚くからさ」


 形は悪いが炒め物などに使える丸みのある背甲から、微かに辣油を熱した時のような香りが調理場に広がっていく。


「いい香りだな、本当にラー油の香りがするなんてな」


 俺は色々試したいという好奇心を必死に抑えつつ、スコーピオン肉をカットしていく。サイズで言うと大きめの唐揚げくらいと言えば伝わるだろうか?


 みんなが1口か2口で、食べられるくらいのサイズにしてから、酒と塩を全体にまぶして、次に片栗粉をまぶしておく。


 調理を開始する前の下準備として、欠かせないのが調味料だ。先に混ぜておく必要もあるため、手早く用意していく。


 基本は2人前の作り方を倍量にする感じで作っていく。


 とりあえず、ケチャップを大さじ3を入れる。意外だろうが量を間違うと全てが台無しになるから、ケチャップだけは本当に注意してほしい。


 そこからは、醤油と酒を混ぜていく。酒は大さじ1くらいで大丈夫だろう。


 今回は大人数なのでかなり多めに作ることになるが、それも含めてやりがいしかない。

 そこに鶏ガラスープを50ミリリットル加えてから、砂糖も小さじ1を加えて混ぜていく。


 豆板醤なんかも混ぜたら辛味がさらに増すが、これは好みになるな。


 片栗粉は小さじ1をとろみ用として用意する。


 まぁ、これを人数分用意してから調理を開始する。一気に作るとべちゃべちゃになるので2,3人分ずつ作るのを俺はオススメだ。


 レッドスコーピオンの背甲に油を引いてから、ニンニクと生姜、長ネギを微塵切りにしてからしっかりと炒めていく。


 この部分でしっかりと油に香りを移しておくのが大切だ。


 そして、しっかり炒めることができたら、レッドスコーピオン肉を入れていく。


 ジュウゥゥ──


 いい感じの音色が聞こえてきたら、軽く油を吸ったレッドスコーピオン肉を木ベラで混ぜながら、先に入れた香味野菜と混ぜ合わせていく。


 一瞬で野菜の香りとレッドスコーピオン肉が合わさることで微かに甘い独特な香りと香辛料の香りが混ざり、鼻をくすぐるような匂いが調理場に広がっていく。


 レッドスコーピオンから出始めた肉汁が背甲の底に溜まっていき、次第に鮮やかな透き通った赤色に色ずいていく。

 火傷しないように注意しながら、底の肉汁をお玉で掬い上げて、小皿に入れて、味見をしていく。


「すごいな……油っこくないぞ。素直な辛味もあるし、深みもあって、うめぇ……」


 一瞬だが、調理中なのを忘れるほどの衝撃を受けた。

 辣油なのに、油の味がしないなんて、料理人なら誰でも驚くだろうが、嫁ちゃん達は別のことに驚いているようだった。


「にゃ! キンザンが魔物の血を飲んでるにゃーーー!」


「オッサン、早く吐き出せ、魔物の血を飲むなんて! なに考えてんだよ!」


「キンザンさん、とにかく、口を洗って、うがいして、本当になに考えてるのよ!」


 ミア、ニア、ベリーが慌てる最中、ミトも同様に慌てていた。


「なんで、そんなもん飲んでんだよ! 幾ら食えても、血とはダメなんだよ! 食いしん坊野郎!」


 むしろ、ミトの反応に俺は首を傾げてしまった。

 料理を焦がさないように混ぜながら、話を再開する。


「何を言ってんだ? 普通に美味いからな」


 俺の顔を見る嫁ちゃん達が残念な人を見るような表情を浮かべていた。


 少し悲しい気持ちを感じながらも、これも感覚の差なんだろうなと切り替えて調理を続けていく。


 レッドスコーピオン肉を一度、別の容器に入れていく。


 最初に作った合わせ調味料を残った香味野菜と混ぜ合わせていき、とろみを加えていく。

 調味料とソースがしっかりと混ざってから、レッドスコーピオン肉を戻して絡めていく。


 キンザン特製スコチリ(スコーピオンチリ炒め)の完成だ。


 白い皿にレタスを添えて、綺麗に盛り付けていく。


「オッサン、血みどろ炒めじゃん……」

「にゃぁ、キンザンならなんでもできるって勘違いしてたにゃ〜」

「ご主人様……命令なら、食べますが、その……大丈夫ですよね?」


 悲しい感想と質問が俺に突き刺さっていく。


 そんな最中、フライちゃんが俺が味見した小皿に指をつけて、ペロッと味見する。


「ラー油ですね、しかも美味しいですよ。きんざんさん、これで麻婆豆腐作ってくださいよ! 油を使わずに麻婆豆腐なんて、カロリー半分ですよ」


 まさかのリクエストだな……


 目を輝かせるフライちゃんに軽く笑いながら、ベリー達を見ると、まだミアとニアは疑いの眼差しを向けて来ていたが、ベリーだけは表情を変えていた。


「本当にラー油なの?」


 完成したスコチリを見て、ベリーも小皿に指をつけてペロッと味見をしていく。


「本当だわ、不思議、さらっとしたラー油なんて」


 ベリーとフライちゃんが味見を終わらせると次にナギが容赦なくスコチリをつまみ食いしていく。


「マイマスター! 美味しい……でも辛い、でも食べたい……不思議」


 全員の反応からわかったが、レッドスコーピオンの殻から煮出した“ラー油もどき”は知られていない調理法らしいな。


 もしくは、血と間違われて食べられずに捨てられてたのかもしれないな。


 【食材鑑定】がなかったら、俺も同じようにしたか、いや……そもそも、背甲で料理なんてしなかったかもしれないな。


 改めて、自分がチートを持っているんだと自覚しながらも、人数分のスコチリ(スコーピオンチリ炒め)を作っていく。


 最後の方は、少し赤色が薄くなっていた為、辛味成分の限界が来たのだろうと感じて味見をする。


 深みと僅かな辛味があり、ラー油というには物足りないが、単純に辛いのが苦手な人向けの甘口になった気がする。


 ナギは辛いのが苦手なのか分からないが、多分この味のが好みなのだろうと感じて、ナギの皿に盛り付けてやることにした。


 テーブルに並ぶ真っ赤なとろみがかったレッドスコーピオン肉の自己主張の強さにベリー、フライちゃん、ナギ、以外の全員が固まっている。


 普段なら容赦なくかぶりつくミアとニアも今回は静かなのが、少し残念だな。


 炊いた米を並べて、俺達の少し遅い昼飯が開始する。


 ナギは最初、辛さを警戒していたが、食欲が勝ったのか、大きなフォークで肉を突き刺して食べていく。


「マイマスター! 辛さ少ない、美味い!」と絶賛してくれた。


 ベリーとフライちゃんも美味しそうに口に運んでいき、幸せそうに頬に手をあてていた。


「これでカロリーが三分の一なら、幸せだわ」

「ですね、カロリーは化け物ですから、本当に幸せです」


 次第に我慢ができなくなったのか、ペコとグーが食べ始め、そこからは皆が手を伸ばしていく。


 最初の反応が嘘のように賑やかになる食事に俺も笑っていた。


 嫁ちゃん達の反応から、いきなり食べるのは難しいと分かり、俺は頭領達の分は普通にスコーピオン肉の唐揚げに濃いめの甘口タレと“ラー油もどき”を合わせたピリ辛ダレをかけることにした。


 今回は女将ミネさんとリトちゃんにも試してもらうことにして、外でも賑やかな食事会となっていく。


 この“ラー油もどき”を使って、明日はタルタルソース以外にも甘辛ダレを売るつもりだ。

 新たな味に合うように“ラビカラ”も多めにあげないとだな、ついでにカットしたスコーピオン肉も試しに並べてみるか?


 ポケットから煙草を取り出して、火をつける。


 色々な考えを頭に巡らせている最中、ズボンを引っ張られる。


「う? どうした、みんな揃って?」


 振り向いた先には嫁ちゃん達が並んでおり、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「オッサン、さっきはごめん……味も見ないで、酷いこと言っちゃったからさ」

「ゴメンにゃ、キンザン……ニア、嫌われたにゃ……」

「なの……ドーナも、最初ね。食べるの怖かったの……」


 分かりやすく凹んでるし、ニアに関しては重症だな……


「ほら、俺はみんなの旦那だから、そんなことで嫌わないから大丈夫だ。誰だって知らないものは怖いんだ。大丈夫だから」


 手前のチビ嫁三人を抱きしめてから、不安そうに眺めるポワゾン達も同様に抱きしめていく。


「俺はそれでも最後にみんなが美味いって言ってくれた一言の方が何倍も嬉しかったしな。だから、逆に、ありがとうな」


 手前のチビ嫁三人は泣き出してしまうし、ベリー、フライちゃん、ナギはハグされなかったことを気にしている様子だったので、しっかりと抱きしめていく。


 少し照れくさいが、嬉しそうな嫁ちゃん達の笑顔、小さな幸せってやつだよな。

 最後はグダグダな昼飯になったけど、こんな日があるから楽しいんだ。

読んでくださり感謝いたします。

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