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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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83話、デカくて硬くてヤバいやつ『レッドスコーピオン』

 嫁ちゃん達が仕込みを全て終わらせてくれたお陰で、いつもと違う開店日前日になった。


 いつもは仕込みに大忙しになるはずの今日は、まさかの休日になっていた。


 最近を考えると冒険者らしい活動などをしていないこともあり、今日はペコとグーの提案で、皆で狩りに行くことになった。


 なので、砂蟹やレッドスコーピオンといった、[ガルド・ゼデール]特有の砂漠の魔物を討伐しようと考えているところだ。


 そのため、事前に色々と調べてみると、砂漠の街だけあって、魔物の調理法もしっかりと研究されていることが分かった。

 嬉しい誤算だったが、調べる中で基本的に食べられない魔物はいないという結論を聞いてから俺は少し引き気味になっている……


 そう、基本ということは見た目の問題だ、例をあげるなら、サンドワームがいい例になるだろうか。

 市場で直接見てきたが……砂ミミズってこともあり、見た目がアウトな食材で、そのグロテスクな外見から無理だと言う人も少なくないらしい。


 砂漠の魔物は砂を移動するため、爬虫類型か虫型が多く、解体されていたら分からないが動く姿はかなりグロテスクなのが多いのだ。


 この[ガルド・ゼデール]では、市場でも虫型の魔物がそのまま置かれていて、注文してから解体して売るという光景があちらこちらで見ることができた。


 最初は驚いたが、これもまた文化なのだろう。


 予定としては朝から狩りをして、昼に一度、みんなの元に戻ることになっている。


 本来の目的は頭領達の食事を作るだったのだが、今は女将ミネさんが昼と夜の食事を作ってくれている。

 まぁ店が再開できるまではやってくれるようなので本当に有難い話だ。


「「主様、もうすぐ外に出ます」」


 2人の声が同時に耳に入り、俺も気合いを入れ直して街の外に踏み出していく。


 数日[ガルド・ゼデール]にいたが、街の外に出るのは初めてだ。

 踏み出した足が砂に吸い込まれる感覚、本当に歩きづらいさを感じながら、ペコとグーの2人に着いていく形で俺達は進んでいく。


「狩りなんて久しぶりだな」

 そう呟きながら、【食材鑑定】を発動させる。


「キンザン、街の近くに魔物なんているわけないにゃ?」


 ミアの発言にミトが呟く。


「普通に現れるぞ? ただ、街の入口は虫除けと魔物避けがあるから無事なだけだ、壁周りも同様だな」


 [ガルド・ゼデール]から30分くらい離れた場所で最初の獲物を発見する。


 ミトが俺達にしゃがむように指示してきたので、すぐに姿勢を低くしていく。


「いきなりどうしたんだミト?」

「静かに、気づかれたら厄介だから……見ててみ、すぐに出てくるからさ」


 視線をミトが指さした方向に向ける。指差した先を1匹の砂トカゲが走っていくのが見えた。


「あのトカゲを見せたかったのか?」


 そんな俺の一言は即座に間違いだったと気付かされる。


 小さな砂の窪みが振動した瞬間、巨大な挟みが砂の中から現れて砂トカゲを掴み上げる。


「あれがレッドスコーピオンか、デケェなぁ……」


「本当に大きいニャ! ただ、あんまり美味しそうには見えないにゃ」


「ニア、オッサンはなんでも美味くするから問題ないさ、それより硬そうだな?」


 ミアとニアの意見には俺も同意だ。ただ、(サソリ)(カニ)海老(エビ)に近い味らしいからな……ただ、甲殻類じゃなくて、節足動物(せっそくどうぶつ)つまり、蜘蛛なんかに近いんだよな……


「とりあえず、【食材鑑定】してみるか?」


 【食材鑑定】の結果、間違いなくレッドスコーピオンは“食用可”であり、さらに追加情報が存在していた。

 “レッドスコーピオンの殻は高温で熱してから水に晒す事で辣油(ラー油)の様なトロミのある辛味調味料になる”


「マジか! みんな、あいつを捕まえるぞ! 久しぶりに面白い食材みたいだ」


「それはいいけど、キンザンさん、あれってば、どう見ても、普通車と同じサイズなのよ、本当に倒す気なの?」


「ベリーの例えは分かりやすいけど、なんかあれだな、ふふ」


「何よ? 正直、サソリとやり合うとか本当に勘弁なんだからね!」


 少しご立腹なベリーには申し訳ないが、俺は少しワクワクしていた。

 知らない食材や新しい調理方、本当にこっちの世界は面白くて仕方ない。


「久しぶりだが、竜切り包丁……頼むぞ! 【身体強化】【調理器具マスター】発動」


 しっかりと竜切り包丁を握り、目の前で砂トカゲに喰らいつこうとするレッドスコーピオンに対して攻撃を開始する。


 本来は、かなり動きにくい地形なのだが、砂漠育ちのミトからすれば、そんなことはお構いなしと言わんばかりに素早く動いていく。


「ミトの奴、サンダルなのに速ぇ……」


 俺はミトの動きに気を取られてしまうくらいには本当に素直にすごいと感じていた。


「ご主人様、足元です! ナギ!」


 ポワゾンの一言と同時に、ナギが素早く俺の体を背後に引っ張る。

 その瞬間、砂が凹み、別のレッドスコーピオンが巨大な挟みを突き上げながら姿を現した。


「マイマスター、気を抜かないで……死んだら悲しい」


「す、すまん! 助かった」


 2体のレッドスコーピオンの姿にミトが一瞬、視線を逸らした瞬間、ミトが相手をしていたレッドスコーピオンが突進する。

 ニヤついたような目の動きに俺は焦りを感じたが、ペコとグーが即座に斜め前方からレッドスコーピオンに攻撃を仕掛けていく。


 ペコが長身を活かしながら、盾でレッドスコーピオンの挟みを反らせて巨体の下に潜り込み、勢いのままに腹部を下から槍で突き立てていく。


「ビギャアァァァァァッ!」と声を上げるレッドスコーピオンが巨体を仰け反らせた瞬間だった。


 グーのガントレッドの先端につけられた三角形の鉄の塊を思わせる刃がレッドスコーピオンの鋏角(きょうかく)から背甲(はいこう)に向けて、貫くように打ち出されていく。


「ビギャア……ビュアァッ……」


 ハサミを激しく動かしながら、レッドスコーピオンの一体が動きを停止する。


 それと同時に俺を襲ってきたレッドスコーピオンにミアとニアが翻弄するようにスピードを活かした動きで走り回る。


 砂のせいか、普段よりは動きが鈍っているが、それでもレッドスコーピオンは2人を追うばかりで攻撃に踏み出せない状況になっている。


 だが、予想外の攻撃が既にレッドスコーピオンの真下から影を通して迫っていた。ドーナの巨大な鎌が無慈悲にその巨体を穿いた。


「マスターを狙うなんて、悪い子なの……」


 背筋が凍るような冷たいトーンに俺は苦笑いを浮かべてしまった。


「マスター、怪我ないの? 大丈夫なの!」


 俺を心配するドーナはいつもと変わらず、嫁ちゃん達も怪我は無いようだ。


 ただ、嫁ちゃん達の戦闘を初めてみたミトだけは軽くショックを受けていたな……まぁ、分からなくもないな。


 とにかく、少しヒヤッとしたが、無事にレッドスコーピオンを2体、狩ることができた。


 すぐに【ストレージ】に収納して一旦、解体場へと戻ることにした。

 俺は討伐したばかりのレッドスコーピオンをミトとバルガスに頼んで解体してもらうことにした。


 今回も自分で【解体】は使わずにプロの作業を見ていくつもりだ。


 巨大なレッドスコーピオンを手馴れた様子でバラしていく姿、本当にプロの仕事だと頷いてしまう洗練された作業だった。間近で見て、解体屋のすごさを全身で理解することができた。


 硬いはずの背甲にしても、僅かな隙間から、杭を叩き入れて、肉を傷つけないギリギリで止めるという作業を手早く行い、数十本の杭がぐるりと体を一周すると綺麗に外れていく。


 そこからハサミと足を切断してバラしていく。


「なんで最初にハサミや足を外さないんだ?」


 ミトにそれとなく質問をする。


「レッドスコーピオンは背甲から全身に神経伸ばしてるからな。最初にギリギリで杭を打って、神経を切ってるんだよ」


 神経が背甲部分の中にあり、そのポイントを狙い杭を打っていた事実に俺は驚愕した。


「神経切らないで切断したら、最悪、死んでてもハサミや足が動き出したりするからな、冗談抜きで必要なんだよ。覚えとけよ……あぶないからな……」


 最後だけ少し声が小さくなってたが、優しさが伝わる事に少し照れくさくなる。


 そこから、尻尾である毒針部分を切断して、腹部側の解体が始まり、俺と嫁ちゃん達はそれをまじまじと見学させてもらうことになった。


 毒針側は流石に食用不可だったが、ポワゾンが興味津々にほしがっていた。


 だが、しっかりと、今回はダメだと告げて、【ストレージ】に収納した。


「酷いです。ご主人様! なんでダメなのですか?」


「即死の毒なんかお前に渡せるか!」


 過去を思い出し、容赦なく薬品を使うポワゾンには今回だけは、きつくダメだと念押する。


 すると耳元で囁かれた「旦那様として、正しい判断です。ご主人様」


 試されたと自覚して、少しモヤっとしたが、なぜかホッとする俺もいた。


「ありがとうな」っと、ポワゾンの頭に手を乗せる。


 そんな様子にミア達が自分達もしてほしいとやってきて、全員の頭に手を乗せるという不思議な流れになってしまった。


 気づけば、レッドスコーピオンも綺麗に解体され、肉と外装に分けられて並べられていた。


「ありがとうなミト、バルガスさん」


「ふん、仕事だからな! それに普段はやってやらないんだからな、レッドスコーピオンは面倒臭いんだからよ!」


 ミトの言葉にバルガスがクスクスと笑っており、本当に面倒なのが見てわかった。


「サンキューな、今からは料理人としての俺の出番だな」


 俺は気合いを入れて調理場へと向かっていく。最高の仕事には、最高の料理で返さないとな。

読んでくださり感謝いたします。

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