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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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82話、ガールズトークと青椒肉絲

 新たな魔導具である魔導釜が手に入ったことで2号店の米問題は解消されるだろう。

 次に2号店に顔を出すのは米の補充を考えて数日後になりそうだ。


 俺は夜と昼の時間差を転送陣で移動して解体広場へと戻る。

 既に頭領達が『星降る砂漠亭』となる解体場の改造と増築を進めてくれており、賑やかな材木の切断音とトンカチが打たれる音が耳に響いていた。


「この調子なら、あっという間に完了しそうだな。他の倉庫はどうかな?」


 連結させる予定の解体倉庫を確認していく。こちらはまだ手付かずといった様子だったが、それでも『星降る砂漠亭』の完成を優先したかったのでよしとした。


 嫁ちゃん達がまだ帰ってこないので、綺麗に清掃したミトの解体場の厨房に立ち『揚げもん屋フライデー』で販売する仕込みを作っていくことにした。


 【ストレージ】があるため、本当にそれに関しては便利で仕方ない。

 “買い物袋”があれば仕込みも本来は必要ない──必要ないが、やはり自分で仕込みたいのが料理人なんだなと自覚してしまう。


「マジに料理人なんだな、まぁ見てたら分かるけどよ」


「ミトか、悪いな調理場、貸してくれてありがとうな。感謝するよ」


「別に構わねぇよ……色々感謝してるからな、浮気野郎だけど……その、嫌いじゃねぇし、調理場貸すのは特別だからな」


「嫌われてないなら良かったよ。あと、浮気野郎は酷くないか、俺は皆を愛してるんだがな」


「浮気は浮気だろ……あの日だって、その……」


 俺もしっかりと記憶はある。だからこそ、俺からは、あまり触れなかった話題なんだよな。


「ロックドラゴンの件だよな……わかってる」


「言っとくが! ウチ……初めてだったんだからな」


 その言葉の重さを全身で感じた瞬間、俺は仕込みを一旦、トレーに置いて、床に両手をついた。


「本当にすまん!」と頭を下げる。


 完全にして完璧な土下座だったと思う。


「なにしてんだよ! や、やめろよな!」


 ミトに言われて立ち上がり再度、頭を下げるとミトから軽く頭をパチンっ! と叩かれた。


「いい大人がなにしてんだよ。ったく……フン、ゆ、許してやるから、そんな情けない真似すんなし!」


「ありがとう、ミト。優しさに感謝するよ」


 俺がそう呟いた瞬間、ミトの目がギラリと輝き、俺の襟をミトの両手が掴み、苦しいくらいに上に持ち上げられる。


「勘違いすんなよ! 砂鮫族は交合った奴を妻として……伴侶として添い遂げる種族なんだよ!」


「げほっ」


「つまり、テメェは……その、あれだ……ウチの、ウチの旦那様になるんだよ! わかったか浮気野郎……様が……」


 俺は薄れ行く意識の中で確かに聞いた……ミトが、デレた……いや、旦那様と呼んだんだ。


 次に目覚めると俺は最初に目覚めたベッドに寝かされており、下の調理場からは賑やかな声が聞こえてきていた。


「そうだにゃ、ミト、オーコロは、看板商品だからしっかり混ぜるのにゃ」


「うぅ、力加減が難しいぞ!」

「大丈夫だよ。ボクも最初は苦労したけどさ、上手く作るとオッサンてば、すげぇ嬉しそうな顔するんだぜ」


「そうなのかよ? なら、仕方ねぇな……やる」


「ふふ、ミトちゃんもキンザンさんに惚れちゃったのね、本当に罪な人よね。キンザンさんって」


「はい、ベリー様の言う通りかと、正直、ご主人様は、顔も普通ですし、ヘタレの意気地無しですし、なんなら色々と残念な方ですから」


 そんな感じにミトと嫁ちゃん達の会話が進んでいき、話は本題に入っていく。


 話を切り出したのはベリーやミアではなく、ポワゾンだった。


「ミト様、ご主人様を愛せる自信がありますか? 正直、ヘタレな種馬で、押しに弱く、いつ知らない女から「アナタの子よ!」と言われてもおかしくない人ですが?」


 まて、さすがに酷くないか! 俺だってそこまで酷くないぞ!


「はぁ、それってよ? マジだとしても、アイツはそうなれば、嫁だとか言って迎えるんだよな、きっと」


「でしょうね、ご主人様は何故か無駄にモテますから……チッ……本当に困ったケダモノです」


「まぁ、ウチは独り占めしたいとは思わないし、やりたいようにやるだけだよ。それに女を見捨てないなんて、その……男らしい……じゃんか?」


 その一言に嫁ちゃん達、全員が集まりミトを抱きしめた。


「よろしくな。ミト。あと、言っとくけど、オッサンの1番はボクだからね。へへ」


「「主様はいい人ですからね。改めてよろしくです。ミトさん」」


 そんな感じで、賑やかに新たな自己紹介と嫁ちゃん達のガールズトークが始まっていく。


 バレないように部屋に戻り俺は再度、惰眠を貪ることにした。

 今行けば、色々と薮蛇になりそうな予感がするからだ。

 横になっても聞こえてくる楽しそうな声は本当にいいもんだと思う。


 気づけば、本当に寝てしまっており、横を見るとドーナが寝ており、反対にはニア、足側にはミアが寝ていた。


「ふぁ、なんだこりゃ?」


 そんな声を出した俺にベリーが小さく“シー”と指を立てながら呟いた。慌てて両手を口にあてて、周りを見るとベリー以外の全員が椅子や床に座るように集まり眠っていた。


「ふふ、モテ男は凄いわね」と悪戯な笑みを浮かべるベリーに俺も苦笑いをした。


 全員を起こさないようにゆっくりとベッドから移動して、廊下でベリーから今の状況について聞いていく。


「マジに驚いたんだが、なんでああなったんだ?」


 ボサボサになった髪を直しながら質問をしていく。


「すごく簡単な話よ、キンザンさんが起きないからって、ドーナが横で寝始めてミア、ニアと次々に寝始めたのよ」


「いや、起こし方ってか、他に方法があっただろ……」


「まぁ、みんな疲れたのよ、色々ね」


「結果、皆で寝ちゃったのか?」


 しかし、もう一つ驚いたのは、その中にちゃんとミトもいたことだった。本当に馴染めたんだなと一安心した。


 俺は一旦、外に出ると既に空は夕暮れに染まっており、鮮やかな色が一日の終わりを告げていくようだった。

 俺は慌てて頭領達の元に走り謝罪しに行く。


「頭領すまん、昼と晩飯、俺達側が用意するはずが、本当に申し訳ない!」


 慌てて、頭領達が使う倉庫に入る。

 そこには、おにぎりや簡単ではあるが炒め物などが乗せられた皿が幾つか並んでおり、俺は呆気に取られてしまった。


「お、キンザンさんじゃねぇか、既にもらってるよ」


 頭領から話を聞けば、嫁ちゃん達が置いてあった魔導釜で米を炊き、女将ミネさんが炒め物などを調理してくれて、持ってきてくれたらしい。


 慌てて、女将ミネさんに感謝を伝えに行くと豪快に笑われて背中を叩かれた。


「慌てて来たから驚いたら、あはは! そんなことかい、いいんだよ。アンタには借りばかりだからね。それにミトから「女将、頼む……アイツ様は寝てるから……」て、頼まれたら断れないよ。ねぇ、リト」


「ふふふ、そうだね。リトも大きくなったら、おじちゃんをアイツ様って呼ぶ〜」


「リト、ダメだよ。ちゃんと旦那様〜って、言ってやるもんさ、あはは」


「はは、参ったなぁ」


 そんな感じに俺の周りは本当に暖かい人で囲まれていて助かる。

 ただ、明後日には、一度[バリオン]に戻らないとならないな。

 明日もしっかり仕込んで頑張らないとな。


 俺は女将ミネさんとリトちゃんに軽く挨拶をして、ミトの解体場に戻り、調理場に入る。


 広いカウンターには、仕込まれた状態の素材が置かれていた。

 その量から大変な作業だったことを改めて理解して【ストレージ】へと仕込まれた素材を入れていく。


 【ストレージ】に収納する前に、仕込みの状態を確認していく。

 【食材鑑定】で確認すると、状態は上質という表示が出ていた。


「こりゃ、凄いな、俺より上手くなるんじゃないか?」


 そんな感想を言いながら、俺は大量の野菜を刻んでいく。

 刻んでる野菜はタケノコとピーマンである。まぁこれを千切りにしてると言えば誰でも答えは1つしか出てこないだろう。


 今晩は、『青椒肉絲(チンジャオロース)』だ!


 細切りが本当に面倒臭いのだが、これはしっかりと揃えないといけない。


 肉は牛肉を本来なら使うが、今回はレクダ肉を使わせてもらうことにした。

 脂が少ないレクダ肉を牛肉に似たイメージを持たせてくれたので、ぶっちゃけ本番で使わせてもらう。


 ただ、コブの部分は今回は使わないことに決めている。理由はシンプルでベリーが食べれないからだ。

 皆が食べれるとしても、ベリーは苦手だと言ってたからな。


 巨大な中華鍋を火にかけてから、油を馴染ませていく、本来は油通しをするんだが、今回は油多めで調理していく。


 最初に細切り肉を炒めていく。

 炒める際も完全に炒めると後々の歯ごたえが悪くなる場合があるので注意だな。


 各食材を別々に炒めたら、最初に炒めた野菜から入れていき味付けをしながら、次に炒めておいた肉を入れてから、オイスターソース、醤油、調理酒を好みで加えていく。

 肉には最初から味を馴染ませるために、味付けをしてから、片栗粉をまぶしてある。


 炒めた際に、水っぽくならないための手段だな。


 そんな感じに炒めていけば、『家庭の青椒肉絲』完成だ。


 最近、中華ばかりになりがちだな、少しメニューを考えないとな、嫁ちゃん達がまん丸になっても困るからなぁ……。

 そんな想像をしながら軽く苦笑いをしつつ、嫁ちゃん達が起きる前にベリーと共に皿へと青椒肉絲を盛り付けていく。


 夕食の用意が一段落してから、外に出て、両手を伸ばしてから、軽く一服するために煙草に手を伸ばす。


「ふぅ、五臓六腑にしみわたるな……なんか、1日がバカ早く感じるんだよな……楽しいからなんだろうが、一気に爺さんになりそうに怖いな……ふぅ」


 柄にもなく、そう言いながら夜の星空を見上げての一服を楽しむことにした。

読んでくださり感謝いたします。

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