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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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80話、魔導釜とペコとグーの戦利品

 解体広場に戻ってから、女将ミネさんに、悔しそうにズナッキーが叫んでいた事実を伝えることにした。


 悔しそうな女将ミネさんも話を聞いて微かに元気を取り戻してくれたので軽く一安心して、俺は嫁ちゃん達の帰りを待つことにした。


 帰ってきた嫁ちゃん達は息を切らし、深刻な表情を浮かべており、一緒に行動していた頭領達も同様の様子だった。


 何よりも、一緒について行かせたリトに関しては、両手を顔に当てながら、本気で泣いていた。


「ひっぐっ……女将さん、ひっぐっ……みんな、いなぐなっちゃった……ぅぅ、やだよ……」


 リトの泣き叫ぶ声に慌てて女将ミネさんが倉庫から飛び出していくとリトは泣きながら女将ミネさんに抱きついていった。


「おがみざぁぁん、よがった……あぁぁぁ!」


 泣き続けるリトに女将ミネさんが優しく抱きしめてなだめていき、俺達はそれを優しく見守っていた。


「さて、みんなに聞いてほしいんだ。少し予定は変わるんだけどさ、『星降る砂漠亭』をこの解体広場で再開したいんだ」


 俺の言葉に女将ミネさんが驚いていたが、頭領達は笑いながら了解してくれた。


「だははは。さすが、キンザンさんだな! なら、追加で若い衆を呼ばねぇとならねぇがいいのか?」


 俺は『星降る砂漠亭』を“リサイクル袋”に入れた際に出てきた金貨を、【ストレージ】内で袋に入れると取り出した。


「勿論だ! 『星降る砂漠亭』を頼む。頭領!」


「任せな! ならよ。早速だが、女将ミネさんと話をしてくらぁ」


 そこから、頭領と女将ミネさんが話し合い、倉庫の設備を確認してから素材の書き出しと人材補充のために一度、頭領と[バリオン]に戻ることになった。


 まあ、戻ったのは新たな契約書の作成するためでもあるのだが、それでも二つ返事で引き受けてくれた頭領には感謝しかない。


 『星降る砂漠亭』を“リサイクル袋”に入れた金貨だけでは足りなかったが、この事実は黙っておく。俺は追加の金貨を出して契約を進めていく。


 お人好しと言われるだろうが、しっかりと追加の金貨は回収させてもらうつもりだから問題はないだろう。

 まぁ、俺が死ぬまでに返してもらえたら、いいかなって話だしな。


 そこからは急ピッチで話が進み、若い衆達が日帰りだが『星降る砂漠亭』の改造工事に参加してくれることになり、次の日から工事が開始される。


 その間も俺は『フライデー2号店』に米を届けたりと大変だったが、全ては上手く進んでいく。


 俺達が段取りよく作業を進める最中、ミアと買い物のために、街を歩いていた際、面白い噂が耳に入った。


「聞いたかよ? グリド商会が店を出すって息巻いてたのにさ!」

「知ってるよ。『星降る砂漠亭』の話だろ、いい店だったのに、いきなり消えちまったって話だろ?」

「そうそう、そのせいでグリド商会も店を出すの諦めたらしいんだわ」


「それがどうしたんだよ?」

「実はさ、店が消える土地ってんで、土地の買い手がつかないらしくてさ、グリド商会も怖がってなんも建ててないらしいんだよ」

「そうなのかよ?」

「今はガキ達の遊び場になってるらしいぜ」


 男達の会話を聞いて、申し訳ないが“クスっ”と笑ってしまった。

 まぁ、いきなり店が消えた土地じゃ、怖くもなるよな。グリド商会には悪いがトップのズナッキーが悪いので仕方ないな。


「オッサン、悪い顔してるぞ?」

「悪い悪い、少し面白くてな。しかし、この[ガルド・ゼデール]には、珍しいはずの魔導具が種類豊富にあるな」


 俺は歩きながら、商店に飾られた魔導具を眺めていた。

 本来は『錬金術ギルド』や『魔導具ギルド』なんかが販売を牛耳る、[バリオン]では普通の店に魔導具が売られているのは珍しいからだ。


「まぁ、[バリオン]は管理が厳しいからな[ガルド・ゼデール]は商人達が発展させた街だからそこら辺は緩いんだよ」


 ミアの説明を聞いて軽く街の仕組みを理解しながら、俺はある魔導具店の前で足を止めた。

 それは魔石を電気や炎に変える変換器だった。


「これ、上手くやれば面白いことになりそうだな」


 俺は悩まずに店内に入ると店主と話を開始する。

 店主は冷やかしと思ったのか最初こそ気怠そうな顔をしていたが、俺が“業務用のガス釜”の仕組みを話すと興味を向けてくれた。


 本来はガスで炊く釜だが、それを魔導具の火力を魔導具に刻み、時間により火力調節をするという提案をしたのだ。


 店主は少し悩んでいたが、俺が“買い物袋”からガス釜を買って見せると一気に表情を明るくした。

 業務用と言っても1回に30人前くらいの米を炊く中型サイズのため、簡単に取り出せたが本来はもっと巨大な物もある。


 俺の言う業務用とは、飲食店サイズの釜になる。


 仕掛けを見せてから、ニヤつく店主はすぐに俺を引っ張り裏の工房へと向かっていく。


「あんちゃん、面白いもん持ち込んだな。この仕掛けをそのまま、使うのは無理だが、やりたいことは分かったからよ」


「何とかなりそうですか?」


「これだけ精密な加工のからくりは本当にびっくりしたが、任せな! ただ、根本が魔石頼りになるから、効率はあまりよくないぞ?」


「そこは大丈夫ですよ。なら、頼めますか?」

「任せろ! 明日までに何とかしてやるからな。だはは」


 俺は店主さんと話ながら、詳しい時間と着火の仕組みと点火する位置、火が消えるタイミングを紙に書き出していく。


「ほうほう、随分と細かい割り振りだが、仕掛けが既にあるなら、なんとでもなるから任せな」


 俺とミアは店主さんと話してから、買い物を再開する。


「本当にオッサンってさ、ああいうのは積極的にやるよな」


「当たり前だろ? あの釜ができたら、皆が助かるからな。早い話が魔導釜だからな、今からワクワクだよ」


「魔導釜ねぇ、何ができるんだよ?」

「あ、そうか、説明してなかったな。あれは大量に米を炊けるんだよ」

「オッサンが渡すんじゃダメなのかよ?」


 ミアは不思議そうに質問してきたのでさらに説明をしていく。


「今までは、2号店に炊けてる米を毎回届けに行ってたが、店舗で簡単に炊けるようになるんだよ」


「そうなのかよ! 米炊くのって大変なんじゃないのかよ」


「本来は大変だが、それを楽にするために頼んだんだよ。成功したらかなり助かるしな」


 俺達は話しながら、食材の買い出しを行い、解体広場へと戻っていく。


 解体広場の中心でペコとグーの2人が何かしているので声を掛ける。


「2人ともどうしたんだ?」


「「あ、主様、私達、今外で捕まえた獲物を運んできたんです」」


 そう語る2人が持って帰って来たのは数匹の巨大な砂蟹(すながに)だった。

 1mはある蟹で茶色い甲羅に青色のハサミと言うデンジャラスカラーだが、それを見たミトやリト達は大喜びしていた。


「すごいじゃねぇか! ガントレット野郎、こいつは中々捕まらないご馳走だ!」

「ミトお姉ちゃんの言う通りだよ、凄く早いから捕まらないんだよ」


 二人が騒いでいるとすぐに女将ミネさんがデカい鍋を持ち出してきた。


 デカイな……2mはあるんじゃないか、確かに【ストレージ】に入れて持ってきた気はするが、あのサイズを軽々と持ってくるなんて、すげぇな。


「色男でも、失礼な考えは許さないよ?」とからかうように言われたので首を縦に振り、女将ミネさんの調理を覗かせてもらうことにした。


 まぁ、調理と言っても基本は同じようだった。


 砂蟹の全身を洗うことになったので、みんなでしっかりとタワシで擦っていく。

 そして、腹側にある三角形の部分ふんどしを取り外していく。

 次に手足を甲羅部分から切り離す作業になるが、そこは解体屋だけあって、ミトが巨大な(ハサミ)を解体場から持ってきて容赦なく切断していく。


「よしゃ! 砂ザメのミト様にかかれば、バッチリ巨大蟹野郎もバラバラだな!」


 ギザ歯をむき出しに笑いながら雄叫びをあげるミトに女将ミネさんから軽く注意が入っていた。


「ミト! 女の子なんだから、叫ぶんじゃないよ。まったく、そんなんじゃ、男に逃げられちまうよ」


「そ、そんなことない! 多分な……」


 ミトと女将ミネさんのやり取りはまるで母娘のやり取りを見てるようで少し笑ってしまった。


 そこからは甲羅の解体が始まる。残念ながら砂蟹はカニ味噌は食べれないようだ。

 【食材鑑定】でも、オススメしないと言った感じに“食材に適さない”と表示が出ていた。


 そのため、カニ味噌は諦めて甲羅の中にあるエラ(わた)を切り離していく。

 食べれる部分を綺麗に洗い流してから沸騰した鍋に入れていく。

 女将ミネさんは、さらに白ワインのような透き通った酒を一緒に鍋に加えて煮ていく。


 話を聞けば、砂蟹は臭みも強いらしく、臭み取りに酒を入れたらしい。


 そこからしっかりと火が通り、真っ赤になった砂蟹を見て俺は感動を感じながら拳を握ってガッツポーズをした。


「マンガ肉ならぬ、マンガ蟹だな! デケェ!」


 子供がお年玉を開ける時の感動に似たワクワク感とドキドキ感が全身を駆け巡る。


 そうして、みんな集まると俺達は巨大な茹で砂蟹を楽しんでいく。


 味は勿論、最高に蟹だった。

読んでくださり感謝いたします。

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