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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
5章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・ゼデール]上

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79話、嫌な再会、怒り狂うズッキーニ

 俺達が目的地である『星降る砂漠亭』に到着すると、普段とは違うざわめきが店内を包み込んでおり、何やら、店の周りにも人だかりができていた。


「や、やめて……ください、女将さんに酷いことしないで。ひぐっ」


 ざわめきに掻き消されそうな小さな女の子の声がした。

 聞き覚えのあるその声に俺が動き出す前にナギが動き出していた。


「リト!」と、名を呼びながら突っ込んでいく姿に俺達も慌てて、人混みを掻き分けて中へと入っていく。


 俺がナギに追いついた時、既にナギが数人の男達を吹き飛ばし、リトと女将さんを庇うような体勢で守っていた。


 男達の先には、見慣れた嫌な顔があった。あの真ん丸男だった。


「またお前かよ、本当になんなんだよ」


「な、キサマは……またオイラ様の前に現れおって! だが、今回は無駄足なのだぞい! キサマには手出しはさせないのだぞい!」


「よく分からないが、えっと、誰だっけか名前聞いてなかったな?」


「キサマ! オイラ様の名を本当に知らないっていうのか! グリド商会のオイラ様を?」


 真っ赤なゆで卵みたいになって怒る真ん丸男にしっかりと首を縦に振る。


「オイラ様は、グリド商会の次期当主にして、この街の金貸しでもある。ズナッキー・グリド様なのだぞい!」


「それで、ズッキーニ、なんで無駄なんだよ?」


「ズナッキーだぞい! バカにしてるだろうキサマ!」


 ズナッキーは淡々と説明を開始していく、最初の部分はグリド商会の自慢ばかりだったので聞き流しつつ、本題が始まるまで、女将さんとリトの傷をみていく。


「大丈夫だったか? 頑張ったな、リト」

「うん、頑張って女将さん守ったよ」


 涙を必死に耐えるようにそう語るリトの頭を優しく撫でてから“キッ”とズナッキーを睨みつけて傍に歩いていく。


「な、なんだぞい! み、見るぞい! この土地はオイラ様の父様が貸していた土地だぞい! 契約が終了したから、返してもらうんだぞい!」


 たしかにしっかりと契約期限が記されており、俺はなにもできないらしい。

 悔しさを感じながら拳を握りしめていた。


「悔しかろう! 散々邪魔されたが、いい気味だぞい!」


 ズナッキーが、俺を嘲笑するように笑い出す。

 正直、ゆで卵にバカにされてる気分でイライラするが、今回はなんともならないのがもどかしい。


 しかし、女将さんが声をあげた。


「アンタがハナタレの時からずっと借りてんだ! 先代さんはまともだったよ」


 その一言にズナッキーが苛立ちを眉間に出しながら、声を張り上げる。


「文句なんか受け付けないぞい! 昼までに荷物を纏める時間をやるのだぞい。オイラ様は優しいからな。ぞいぞいぞい」


 俯き悔しそうに拳を握る女将さんの姿に俺も我慢の限界を迎えていた。


「おい、ズッキーニ? 持ち運べる物は全部持ってくがいいんだな!」


「ズナッキーだぞい! ふん、1時間でなにができるか知らないが、構わないぞい。荷馬車を用意しても積み込めなかったらそれまでだぞい、土地はオイラ様のものだぞい! ぞいぞいぞい!」


 高笑いをしながら、店を出ていくズナッキーと部下達、見ていた人集りも、ちらほらと消えていく。


「頭領、皆さんもすみません。野暮用ができたみたいで、ミト。悪いんだが他の店を案内してもらっていいか?」


「お、おう、構わねぇけど?」

「悪いな、頼む。皆も悪いな」


 俺は頭領に謝りつつ、ミトに頼んで他に食事ができる店までの案内を頼むことにした。


 嫁ちゃん達にもリトを連れて食事に行くように伝え、俺は心配そうに見つめる頭領達と嫁ちゃん達、泣きじゃくるリトを見送ってから、女将さんと店内に移動する。


 最初あった時の元気な表情はなく、悲しそうに店のテーブルを摩る姿が痛々しかった。


「すまないね、とりあえず荷物まとめないとね」


「そのことなんですが、少し俺に考えがありまして。確認なんですが、土地以外は全て女将さんのもので間違いないですか?」


「え、ああ、そうだね。土地を無償で貸してもらう代わりに街に美味い料理をだす店を開いて欲しいって言われて、店を増築しながら、大きくしてきたんだよ」


「分かりました。女将さん、ならやりますんで必要なものだけ仕分けしてください」


 女将さんが不思議そうに首を傾げると同時に【ストレージ】に『星降る砂漠亭』の店内にあるテーブルや椅子、家具などを全て収納していく。二階の居住スペースも同様に空にしていく。


 最後にリトの部屋に入り、小さな人形とボロボロの手紙、小さなベッドと机などを収納していく。


 すべての部屋と厨房、地下室まで周り、なにも残っていないことをしっかりと女将さんに確認してもらってから、外に移動する。


 再度、女将さんに質問する。


「女将さん、本当にいいですね?」

「構わないよ。遅かれ早かれ、壊されたり悪趣味な使われ方するなら、今一思いに頼むよ」


 俺は女将さんの言葉に頷くと、所有権を委託された扱いになった『星降る砂漠亭』に“リサイクル袋”を向けて開く。


 瞬く間に“リサイクル袋”に吸い込まれていく『星降る砂漠亭』の姿に女将さんが泣き崩れていく。


 周囲も一瞬、なにが起きたか理解できていない様子で傍観していた。

 “リサイクル袋”から出てくる数十枚の金貨を即座に【ストレージ】にしまい一旦、その場を後にする。


 解体広場まで女将さんを連れてきてから、俺は女将さんに解体倉庫の1つを選んでもらう、選ばれた倉庫に【ストレージ】から荷物を取り出していく。


「今日から、この倉庫を使ってください」


 女将さんに優しく微笑む。女将さんが選んだのはミトとバルガスの解体場の真ん中にある倉庫だった。


 バルガスが俺達に気づき、話しかけてくる。


「キンザンさん、それに『星降る砂漠亭』のミネさんじゃないか?」


「バルガスさん、女将さんと知り合いなのか?」


「まぁ、軽くな、しかしなんでまた? 『星降る砂漠亭』の女将さんがここに?」


 俺はこれまでの流れを簡単に話していく。話を聞きながら、バルガスさんは悔しそうに拳を握っていた。


「クソ、あの馬鹿息子がグリド商会を継ぐ話が出てから、全部おかしくなっちまった」

「そうね、先代は立派な方だったんだけどねぇ」


 二人の会話からも理解できたが、あの真ん丸ズナッキー(ズッキーニ)が全て悪いらしい。


 先代と呼ばれてた人は無償で土地を貸したり、金銭を貸しては「ゆっくり返したらいいさ」と言うほど優しい人物だったみたいだ。


 残念ながら、偉大な人の子が偉大には、ならなかったらしい。


「なんともな、まぁ連れてきた理由は店が無くなったからだけど、他にもあるんだ。空き倉庫を腐らすの勿体ないからな」


 俺は軽く女将さんに説明していく。

 解体屋だった倉庫の一つを使い、飲食店『星降る砂漠亭』を再開してほしいと伝えた。


 当然いきなり店にするのは無理だろうが、今回は強い助っ人である[バリオン]最強の職人軍団である『建築ギルド』の頭領達がいるのだ。


 その事実もあり、俺はにっこりと笑って見せた。


 最初は驚いていた女将さんだったが、次第に涙が溢れ出して、両膝をついて泣き出してしまった。


 本当なら、店ごと移動したかったが排水や色々なことを考えれば形だけ移動するよりも形を真似る方が賢いのだ。


 俺は女将さんをバルガスさんに任せて、全てが更地になった元『星降る砂漠亭』へと戻る。


 辿り着く寸前で、ズナッキーの発狂にも似た声が耳に入ってくる。


「何が起きたんだぞいぃぃぃぃっ! 本当に土地だけになっちまってるじゃないか! これじゃ、店ごと奪った意味がないぞい!」


 やはりと言いべきだろうか、土地を返させると同時に店も狙っていたんだな……


 俺は嫌味の一つも言ってやろうかと思っていたが、なにも言わずにその場を立ち去ることにした。


「これ以上いたら、絡まれるからな……まぁ、ちゃんと確認はしたから問題ないよな?」


 そんな言葉を呟きながら、解体広場へと戻っていく。

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