70話、新たな街へ『砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]』
深夜に目覚める生活にも慣れたある日、フライちゃんが皆を集めてある報告が始まった。
テーブルには、〇印が複数つけられた地図が広げられており、よく見れば[バリオン]や[カエルム]にも〇印がされている。
フライちゃんは地図を指さしてから、にっこやかな笑みを浮かべた。
「皆さん、この数日間の成果を発表するのです」
フライちゃんの言葉に俺を含め、嫁ちゃん達も視線をフライちゃんへと向け、説明を聞いていく。
説明の内容から、行き先として選ばれた地域は教会があることが前提であり、教会のない町やエリアなどは対象に含まれない。
フライちゃん自身がナギと向かったというだけあり、砂漠の街や商業都市、建築都市など興味深い街に印がつけられており俺は心を踊らせた。
そこから、俺達は地図に記された地域について、軽く情報を入れると別々に行きたい地域に向かうことになった。
なぜ別々なのかは、説明は不要だろう。俺の両隣にはフライちゃんとナギのコンビ、そしてベリーの3人がいた。
今回は3人で行くらしく、俺を含めて4人でフライちゃんオススメの『砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]』に向かうことになった。
「砂漠なんて、鳥取砂丘にしか行ったことないから、少し興味あるな」
俺の言葉にベリーは軽くため息を吐いた。
「キンザンさん、いきなり日本のこととか、言うわよね? 私なんか、日本なんて言われなかったら忘れてるって言うのに」
さも当然と言わんばかりにする会話を見て、フライちゃんが少し寂しそうな雰囲気になっていたので話を切り替えていく。
「それより、フライちゃん、そのオアシス都市ってなんなんだ?」
俺が質問するとパッと表情が明るくなり、ナギもベリーもホッとした表情を浮かべる。
「ふふふ、この砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]には、“レクダ”っていう、地球のラクダがいるんですよ!」
凄まじいドヤ顔で俺を見るフライちゃん。
しかし、俺はあまり、しっくりきていなかった。地球のラクダってあのラクダだよな……ラクダって、あまり一般的じゃないような気がするんだが……
「どうしたんですか? きんざんさんの世界のラクダがいるんですよ!」
分かるんだが、なんか喜べないんだよな……ラクダって日本人に馴染みあるかって言われるとあまりないんだよな……
「フライちゃん、ありがとう。とりあえず、その“レクダ”を見てみるよ。楽しみだな」
騙す気はないが、傷つける気はもっと無い。ラクダだって言うなら、ラクダをしっかりみてやろうじゃないか!
軽い気持ちでそう決めてから、俺達は準備を整えていく。
砂漠の街ということで無理なく行動できる格好がベストだと思う。
なので、すぐに着替えられる格好をしてから転送陣で移動を開始する。
「よし! なら砂漠の国に出発だ!」
「まるで冒険隊の隊員みたいなテンションね?」
「ベリー、そこは隊長くらいにはしてくれよ」
「そうね、なら隊長さんに続くわよ。フライ隊員、ナギ隊員」
「「おー!」」
ノリ良く楽しい雰囲気で転送陣が光り、俺達は砂漠のオアシス都市[ガルド・ゼデール]へと向かった。
今回は他の嫁ちゃん達は別々に遊びに行っている。なにかあればフライちゃんがその場に転送陣を通して、嫁ちゃん達のいる国に飛べるように話してある。そのため、気楽に出かけることができるのだ。
まず驚かされたのは、凄まじい太陽からの歓迎だった。
照りつけるような熱い輝き、長袖を着てなかったら、早速日焼けしてしまいそうになる、それくらいには温度が高い。
「熱いな、マジに砂漠って感じだな……」
「暑すぎよ……なによこれ、なんでフライちゃんとナギは平気なのよ」
明らかに熱にやられているベリーに対して、表情を変えないフライちゃんとナギの姿があった。
「私は、まぁ仮にも女神でしたから」
「ナギは熱い方が好き」
まぁこんな回答にベリーだけが悔しそうな表情を浮かべていた。
「まぁ、アレだ。まず、服を見に行こう。このままだと目立ちすぎるしな」
「そうね、たしかに気分も変えたいものね」
「私も賛成ですね。可愛い服もいっぱい売ってますからね」
「ナギは着いてくだけ、服は興味無い……」
話が決まり、早速近くで賑わっている商店を発見したので、店の中に入ろうとした時だった。
「申し訳ございませんが、当店は紹介制でごさいます。紹介状はお持ちでしょうか?」
少し嫌味な感じの大男に行く手を塞がれた。
「紹介制だったのか、悪かったな。なら、別にいくよ」
少し、イラッとしたが、争ってもしゃあないからな、大人しく引き下がることにした。
それに紹介制なんて店は高いだけで大したことないなんて結果はよくある話だからな。
「それが賢明ですな。我らが商会は伝統と高貴な方のために存在致しますので、もしも、また御来店される際はよろしくお願いいたします」
ワザとらしく頭を下げる姿に俺はさらにイラッとしながらも、軽く会釈をしてからその場を後にした。
「なんか感じ悪い店だったわね?」
「ベリーさんのいう通りですね。紹介状なんかなくても買わせてくれたらいいのにって思いますよね!」
ベリーとフライちゃんの怒りに満ちたトーンの会話に頬を掻きながら、俺は次の店を探していく。
最初のデカい店と違い、路地裏に近い位置にこじんまりとした小さな服屋を見つける。
最初に見つけた店の印象が悪かったため、少し悩んだが考えるよりも見てみることにした。
砂漠の街らしく、滴の形が彫られた芸術的な木製の扉を開いていく。
静かな鈴の音色が店内に響くと腰の曲がったお爺さんが歩いてきた。
「いらっしゃい、旅の方かね。暑かっただろう、ゆっくり見ていっておくれ」
優しそうにそう言うと軽く笑みを浮かべてから、椅子に腰掛けていく。
「ありがとうございます。見させてもらいますね」
「ああ、好きに見ておくれ、蛇人族のお嬢さんもサイズは色々あるから、背丈にあった服を見てみておくれ」
本当に親切な人だな。当たりかもな。
言われるまま、服を見ていくとサイズを表す札と別に、種族を表す札もあり、大きいサイズはナギのような背丈のある種族、小さいものは妖精が着るのかと聞きたくなるサイズまで存在した。
「本当に色々あるな? さすがに予想の範疇を超えてきたな」
「キンザンさん、これなんか似合うんじゃない?」
ベリーが俺に選んだのは、アラビアンパンツをさらにダボッとさせた、職人が着るニッカポッカのようなズボンとトルコ服を合わせたような民族風の服装だった。
「色がかなりカラフルだな、でもせっかくだから買うかな。似合うかは不安だが」
そうして、俺の服装が決まり、次にベリーも同じようなズボンと薄い風通しの良い素材の長袖の服を選んでいく。
俺達2人が服を決めるとフライちゃんとナギが踊り子風のきわどい服をチョイスしていた。
「きんざんさん、見てください。可愛いのを見つけましたよ。ナギさんとお揃いなんですよ」
「マイマスター、その……似合う?」
着る前から似合うと聞くナギも可愛いが、何よりフライちゃんだ。絶対にストンってなっちゃう気がするサイズを選んでいたので、サイズだけは選び直してもらった。
「デリカシーが足りませんよ! 私だって、あるんですからね……昔は、あったんですよ、ここに……」
悲しそうに、自身の体を上から、スっと下になぞるフライちゃんに心から謝罪をしつつ、決めた服をまずは購入する。
店のお爺さんも優しく微笑むと「きっと似合いますよ」と服の着方を丁寧に教えてくれた。
金額的には少しいい服程度の値段であり、かなり良心的なイメージが生まれた。
「こんないい店なのに、お客さんがあまり来ないんですね?」
「ちょっとキンザンさん、失礼よ!」
「そうですよ、きんざんさんは、本当にデリカシーが無さすぎですよ!」
「マイマスターは、アレが普通」
3人に色々言われたが、爺さんは気にする様子もなく、パイプに火をつけて一服しながら口を開いた。
「ウチみたいな小さな店は、デカい商会には勝てないもんさ、やれ、流行りだ、やれ、オシャレだと……本当に色々なものをほしがるが、満たされたりはしないだろう」
どこか残念そうなセリフだった。
「いや、ここだって、これだけの種族の服が置いてあるなんて、正直すごいと思いますが?」
「ははは、そう言われたら嬉しいね。昔は色んな種族の旅の人もよくいたんだよ。今は高い物や珍しい品を欲しがる人ばかりだが、昔は普通を探すのが大変だったんだよ」
なんか、刺さるな。普通を探すのが難しいか……
「長々とすみませんでした。また来させてもらいますね」
「はいよ、またおいで」
最後まで気分のいい店を後にして、俺達は街中をブラブラと歩いて回る。
途中の市場で木の実などを見たり民芸品を見たりと普段目にしない物を楽しみながらの散歩になった。
読んでくださり感謝いたします。
☆☆☆☆☆で評価ありがとうございます
下にある[ブックマークに追加]もしてもらえたら、嬉しいです。




