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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
4章 各地を回って食材探し[カエルム]

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68話、嫁と久しぶりにデートです1

 慌ただしく過ぎた開店日が終わり、夜中を迎えて時刻は次の日になる。


 俺は仮眠から目覚めるとリビングへと向かう。真夜中にも関わらずポワゾンが既に起きており、湯を沸かし、パンを焼いていた。

 ポワゾンにイースト菌と発酵について以前軽く話してからたまに作るようになり、最初は硬かったパンも今は上手く焼けるようになっている。


「おはようでいいのか? ポワゾン。いい匂いだな」

「ご主人様、おはようございます。本日はパンを焼いてます。焼きあがったら中にチーズとハムを入れてサンドイッチにする予定です」


 うん、普通のメニューで助かるな。チャレンジメニューみたいな感じの時は……木苺のジャムにオーク肉と魚とか、とんでもデンジャラスなメニューになりがちだからな。


「ご主人様はどうされましたか? さすがに予定よりだいぶ早いかと?」


「ああ、まぁ『2号店』が心配でな、早めに見に行こうと思ってさ、皆が起きる前に戻る予定だから、俺は一足先に[カエルム]に米を届けてくるとするよ。ぼちぼち野暮用もあるしな」


「かしこまりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 地下の転送陣を使い、2号店へと向かう。


 2号店に到着すると、既に窯には火が入れられ、ダインとミミ、コンの3人が忙しなく仕込みをしていた。


 表では、三ツ目族の三姉妹と孤児院の子供達、そしてガルダが掃除をしていた。

 数日前まで、ボロボロだった内装も綺麗に修繕され新たなオープンを迎えるには完璧な状態になっている。


 軽く挨拶を済ませてから、炊いた米を巨大な桶に入れて、乾燥を防ぐように布をかける。


 米の量だけ見れば、この量で足りるかと心配になる量だが、昼の2時間と夜の3時間のみの営業のため、十分な量と言えるだろう。

 2号店は、1日5時間しか店を開けないため、昼の分としては十分足りる計算だ。


 昼の12時の鐘がなりオープンとなり、14時の鐘でラストオーダーとして、15時には昼の部を終える。

 次は夜の部になり、18時の鐘と共にオープンさせ、21時にラストオーダーで22時には完全閉店という流れを組んでいる。


 実際は休憩も1時間入れての8時間拘束になってしまうが、前までの環境よりはマシだろうと思う。


 なので、この再出発の今日は昼からも様子を見に来ようと考えている。


 宣伝自体は、『レイラホテル』のレイラに頼んでるし、警備兵団のブルーノにも前回、軽く声をかけている。


 そうして、軽く挨拶を済ませた俺は、今から風呂の件で不動産屋『ニコニコ不動産』に向かう。高い買い物をしているため、しっかりと宣伝もしてもらう予定だ。


 朝から1人、[カエルム]の街で不動産屋を目指して歩いていると、背後から大きな声が叫ばれた。


「オッサン〜まてよ!」

「キンザン〜待つにゃ!」

 背後からミアとニアの声が聞こえ、振り向くとすごい勢いで走ってくるのが分かった。


「な、なんだ、どうしたんだ?」


 俺の問いかけに2人はニッコリと笑う。


「オッサンの用事が済んだら、たまには一緒に出かけようって話になってさ。昨日寝る前に皆で、くじ引きしたんだよ」


「そうにゃ、ちなみに今はフライ様とナギが色々な場所を回ってるにゃ」


「色々な場所? ニア、どういうことなんだ?」


「単純だにゃ、行きたい場所を決めてデートに行くのにゃ〜」


 予想外の提案に本当に驚かされたが、それも嫁ちゃん達で話し合って決めた結果らしい。全員が賛成した結果、2人1組で俺とデートに決まったようだ。


 もちろん、男の俺に拒否などあるわけない。だって、可愛い嫁ちゃん達が俺なんかを取り合うなんて、嬉しすぎるだろうが!


「ってことで、早く用事を済ませてこいよな、オッサン!」


 背中を押されるようにして『ニコニコ不動産』へと入る俺、当然だが、いつものお姉さんが出迎えてくれたが、ミアとニアの姿に軽く驚いていた。


「き、キンザン様? お子さんがいたんですか、しかも、かなり大きい子が」


「いやいや、娘じゃないから」


 俺の返答に、少しホッとした様子のお姉さんはそのまま、質問をしてきた。


「そうなんですね、親戚の子ですか? 姪っ子さんかしら?」


 明らかな子供扱いにミアとニアが我慢の限界を迎えたのが表情から分かり、俺は小さくため息をついた。


 それと同時にミアが店内に響くように声を張り上げた。


「ボクはオッサンの嫁だ! 親戚でも娘でもないし、大人だ!」


 その言葉に凍りついた表情を浮かべたお姉さんはそこから表情を変えることなく、ダイン達の住むクランハウスの1部屋を風呂場へと改装する話はあっさりと決まった。


 契約を交わし終わり、軽く放心状態のお姉さんに挨拶をしてから俺達は『ニコニコ不動産』を後にする。


 時間が少し気になったが、丁度、時刻を知らせる鐘が十回鳴らされたので、時刻を把握する。


「あと2時間は余裕があるな、街を歩くか?」


 そんな提案にミアとニアが頷き、俺の両手に1人ずつ腕を組んでいく。

 傍から見たら、オッサンが若い子をはべらせている様にしか見えないな。


 そんな考えを裏付けるように、男達の痛い視線が俺達へと向かってくる。

 流石に露骨な視線にミアが苛立ち始め、それが伝染したかのようにニアも耳をピンっと立てて、威嚇するように瞳をパッチリと開いていく。


 いやいや、怖いからな……落ち着けって?


 結局、20分も歩かないまま、俺達は小さな雑貨屋に逃げ込むように入ることにした。


 雑貨屋の店主だろう、おばあさんからは「いらっしゃい、買ってくれるなら大歓迎だよ」と言われてしまったので、適当に店内を見て回る。


 雑貨屋の品揃え自体は[バリオン]も[カエルム]も大して変わらないようで、あまり目ぼしいものはなかった。


 少し悩んでいると2人は猫の置物を見ていた。

 どことなくニアに似た顔の置物を見て真似して2人が笑っていたので、俺はその置物を2つ購入することにした。


 ただ、これは2人へのプレゼントと言うわけではないと先に話しておく。


 雑貨屋を後にして、気持ちも落ち着いた2人とフリーマーケットの様な一角を見て回り、ミアとニアはお揃いのシンプルなピアスを見ていたので、それをプレゼントとして購入することに決めた。


「キンザンありがとうにゃ〜」

「へへ、ニアとおそろいじゃんか、オッサンありがとうな」


 高い物じゃないが嬉しそうに語る二人の姿に笑みを浮かべながら、時間を告げるように十二回の鐘が鳴り、店へと戻ることにした。


 店に戻ると既に数名の客がテーブルに腰掛けており、その1つのテーブルには警備兵団のブルーノと部下達の姿があった。


「お、ブルーノじゃないか、きてくれたのか」

「よう、兄弟、オープンだと聞いて来てみたんだ。雰囲気は前と似てるが、防音の魔導具なんかは無いみたいだな」


 以前までの『肉と欲望のバッカーン』の内装を知っているためか、そんなことを言いながら笑うブルーノ。


「防音の魔導具なんて、普通は要らないだろ? むしろ聞かれて困る話は別でしてほしいって話だよ」


「あはは、違ぇねぇな。まぁ、オレ達は料理を楽しませてもらうよ。また話そうな兄弟」

「ゆっくりしてくれ。本当にありがとうな」


 そんな会話を終わらせてから、入口に買ったばかりの猫の置物を設置して裏側に向かう。


 厨房は入ったオーダーの調理で賑わい、戦場のようになっている。

 以前までとは人数もメニューも違うため、ダイン達の表情は真剣そのものだった。


 いざとなれば、手伝いに入るつもりで構えていたが、上手くオーダーを作りながら、提供できている姿に俺はホッと一安心した。


 ダイン達も本来はプロの料理人であり、心配など必要ないのだろうが、やはりオープン初日はイレギュラーなどを警戒してしまうのは日本人特有なのかもしれないな。


 俺がいなくても大丈夫そうなので、早々に挨拶を済ませると俺達は[バリオン]へと帰還した。


 戻ってから、ミアとニアを連れて再度デートの続きとなり[バリオン]の街をゆっくりと見て回ることになった。


「オッサン、早くいこうぜ。1日が終わっちゃうよ」

「そうにゃ、今日は忙しいにゃ、急ぐにゃ〜!」


 何度も訪れているはずの街並みや光景も目的とメンバーが変われば不思議と変化があるもので、出かけて、色々なものを見るということの重要さを改めて感じた。


 静かに朝からの流れを振り返ってみると、別々に過ごす一日も、たまには悪くないと感じる。

 そうして、俺は楽しそうに笑う、ミアとニアに引っ張られていくのだった。

読んでくださり感謝いたします。

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