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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
4章 各地を回って食材探し[カエルム]

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65話、フライデー2号店。準備に本気なキンザンオーナー

 バタバタとした孤児院だったが、結果的にダインのやりたかったことが現実になり、俺も人助けに繋がる結果に悪くない気分だった。


 俺自身は、明日からまた[バリオン]に戻り、久々の『揚げもん屋フライデー』の準備をしていく予定だ。

 飲食店タイプの『フライデー2号店』と異なるため、かなり仕込みや、用意に時間がかかるのがネックだが、やりがいはあるんだよなぁ。


 孤児院から『フライデー2号店』に戻る道中に俺はダインと話をしていく。


「ダイン、明日からは店長を任せるから、上手くやれよ」


「いやいや、キンザンオーナー……オラ達だと無理ですだよ。オラ達の中に金銭を扱うことを得意としてる奴なんていないですだ」


「ああ、売上や会計に関しては、ある程度、信頼できる奴から、助けを借りるから大丈夫だ。そこは安心してくれ」


「わ、分かりますただよ!」


「オープンは3日後になるだろうから、改めてメニューの見直しと必要な食材を明日、確認して、明後日までには知らせてほしい。試作に必要な量は分かったらすぐに言ってくれ」


「わ、わかりますた。3日後までに完璧にしてみせますだ!」


「いや、焦らなくていいんだ。むしろ、張り切りすぎて、倒れたり、無理して体調を崩したら意味ないからな」


 ダインとずっと話していると、「せーぇーのッ!」という、掛け声と共に俺の背中に“ズンッ”と重みが襲い掛かる。


「うわっ!」


 左右に抱きつく形になったミアとニアが耳元で呟く。


「こんな可愛いボク達を放置して、ずっと話してばっかりは酷いんじゃないかな?」

「そうニャそうニャ、悪いキンザンにニア達からのお仕置だにゃ〜!」


 2人はそうして、俺の両手に片方ずつ抱きつき、3人並んで歩くことになった。ダインは、そんな俺の姿に気を遣ってなのか分からないが……不意に口を開いた。


「そんじゃ、オーナー、奥様、オラは先に戻りますんで、失礼しますだよ」


 そう語ると、そそくさと挨拶を済ませ、先に店舗へと向かって走っていってしまった。


 ダインが早々に夜の闇に消えていき、残された俺達も歩みを再開する。


 どこか、寂しい帰り道と、その道の先に光る街の輝き、僅かに外れただけの孤児院からの道のりをただ静かに歩いていく。


 ただ、歩いているだけなのに、鼻歌を歌いながら、嬉しそうに腕にしがみつく2人に俺は少しの気恥ずかしさを感じずにはいられなかった。


 普段なら賑やかな2人も何処か空気を読んだような落ち着いた雰囲気で歩みを合わせてくる。


「2人とも、今日はなんか静かだな?」と言っても……


 つい先程、2人に飛びかかられたので、絶対に静かとは言えないが、どこか静かなのだ。


「……なぁ、オッサン。オッサンは、ボクが歳を取ってもさ……大切にしてくれるよな?」


 いきなり、なんの質問だよ? と、ツッコミたくなったが真面目な表情で切なそうに問いかけられた、そんな質問に即答する。


「当たり前だろうが、歳を取って、婆さんになって、シワシワになっても一緒に笑って生きてくつもりだぞ?」


「なんだよ、シワシワって! オッサンのが先にシオシオになるんだぞ! 面倒見るのはボク達なんだからな!」

「そうニャ、シオシオのヘロヘロなキンザンの面倒はニアも見てあげるのにゃ!」


「はは、そうならありがたい話だな、今から感謝しないとな、2人ともありがとうな」


 少し強気な口調のニアに頬を膨らませるミアは本当に姉妹のように見えてくる。


 小さな幸せを大切にって言葉を言われたことがあるが、俺の両手に掴まる幸せも、俺達を待っているこれからの大きな幸せも手放したり、無下にするつもりはない。


 2号店に到着すると、嫁ちゃん達が勢揃いで俺達を待ってくれていた。


 まぁ、表情は少し拗ねてたり、ニヤケていたりと、各自がいろいろな表情ではあるが……


 戻ってからすぐに俺達は孤児院での話をしっかりと説明していき、何あれば本店である[バリオン]側にきてもらうことにする。


 いきなりで悪いとは思ったが、必要な話もあるため、今回は許してもらいたい。


 少し心配だったが、食材などは前もって渡した金貨でちゃんと揃えてあり、必要な調理器具等も揃えてあることを確認する。


「明日からはダインが店長として、皆に指示を出してもらうつもりだ。ミミとコンはしっかりとサポートをしてあげてくれ。頼んだぞ」


 ダインを店長とする事実を伝え、さらにサポートに対するお願いをしてから、簡単なマニュアルを説明する。


 マニュアルの内容自体は簡単なもので、手洗いや衛生面といった当たり前のことを記してある。


 ただ、こちらは異世界であり、手洗いなどが雑なのだ。

 アルコール消毒などが無いため、徹底した手洗いをメインにしている。


 そして、魚などの生の食材を取り入れるため、鮮度の確保と保存方法の徹底を教えていく。

 いや、この場合は叩き込んでいくと言う方が正しいだろうか?


「いいか、仕入れた魚はその日のうちに使うこと、絶対に次の日に使おうとするなよ?」


「なんでなんですか? オラが思うに、1日、2日は魚は日持ちするだよ?」


 ダインの質問に俺は人差し指をしっかりと伸ばして、答える。


「見た目なんかは、大丈夫かもしれないが、もし、それが傷んで、さらに劣化して腐り始めてたらどうだろうか?」


「そんなすぐには、痛まないだよ」


「金を払って食べにくるお客さんにそれを言ったら終わりなんだよ。だから、ダインも皆も、改めて無駄はない方がいいのは間違いないんだが、でも、安全を捨てるようなことはしないでくれ」


 俺は真っ直ぐに言葉にした後に頭を下げた。


 事の重大さを認識したのか、皆が納得してくれたので、次に米の取扱いについて話していく。


 土鍋でご飯を炊くにしても限界があるため、米だけは“買い物袋”から炊いてあるものを買う形になる。

 つまりは米だけはサービス品扱いで利益は出ない仕組みになるがこればかりは、大量に米を炊くのが難しいため、仕方ないと割り切るしかない。


「なぁ、オッサン? なんで、オッサンが炊いた米を使わないんだよ」


 ミアに質問をされて、再度説明をするとミアからまさかの指摘をされた。


「いや、だからさ? 最初に大量の米を【ストレージ】に入れておいて、まとまった量をボクがオッサンに売れば成立するんだよな?」


 盲点だった……まさか、そんな方法があるのか、いや、試してないけどさ……俺が作ったものを俺が買うのはありなのか?


「わかった。なら、試しに今【ストレージ】に入ってる炊いてある米を出すから待っててくれ」


 ミアの提案をたしかめるため、大量に炊いてある米が入った桶をテーブルに置く。人数でいえば、30人前くらいの量になるだろうか。


「なら、オッサン。いくぞ!」

「お、おう!」


「ボクはこのお米をオッサンに銅貨1枚で全部売るよ」

「あ、ありがとう。銅貨1枚を払うよ」


 どこかぎこちないやり取りに、嫁ちゃん達からクスクスっと声が聞こえてくる。


「よし、試すぞ!」


 改めて、金額よりも本当に買えたのかが気になり、“買い物袋”に手を入れてイメージをする。

 するとテーブルに同じ桶と大量の炊かれた米が姿を現した。


「まじかよ……今まで損してたじゃんか、はぁ……」

「いや、そこじゃないだろ? 上手くいったんだから、良かったじゃんかよオッサン?」


「まあ、そうだな。これで米問題はクリアだな。今更だけど、“買い物袋”がチートアイテムな気がしてきたんだが……」


 チラッとフライちゃんを見る。


「な、なんですか? 本来はそんなにすごい力はないんですよ! 実際は買ったものしか出せないんですから、そこまで役に立つアイテムじゃないんですよ」


 言い方! 役に立たないアイテムをあげたみたいな言い方になってるから!


「まぁ、たしかに、これを学生がもらったとしても、あまり役には立たないかもしれないな。俺は上手く使えたけど、運とかもあるしな?」


 改めて考えれば、ブラック企業で色々買ったり、取引していたから、助かったことも多々ある。さらに言うなら、食品関係の仕事だったから分かる知識もあるのだ。


 もしも、これがゲーム販売店や、水道メーターの計測などの仕事だったら、食材ではなく、ゲームや水道メーター関連のモノが出てくるんだろうしな。


 初めて、心からブラック企業に感謝をしてしまう俺はなんか嫌だが、結果オーライだな。


 色々と話が逸れてしまったが米問題が解決して次の説明になる。


 ダインが危惧していた会計や金銭の問題だが、それに関しては『レイラホテル』のオーナーであるレイラから人材を調達できることになっている。


 レイラホテルの従業員はレイラのスキルによるものであり、前に話した際に分かったことだが、1日という縛りはあるが特定の人材を派遣することができるらしいのだ。

 なので、金銭管理ができる人材を2人用意してもらい、1日置きに片方を派遣してもらうことになっている。


 これは、嫁ちゃん達にも今回、初めて話す事実であり、少し驚かれたがレイラの派遣なら問題ないとベリーが太鼓判を押してくれたため、あっさりと話が通った。

 勿論、タダという訳じゃない。1ヶ月の給金として、煙草(メンソール)や他にもレイラが欲しいモノをできる範囲で用意することが条件に含まれている。


 とにかく、2号店の為にできる範囲のことはしっかりとやってきた。


 話も終わりに差し掛かると、ドーナの腹の虫が泣き出したため、俺はその場で調理を始めることにした。


 オークカツを大量に揚げてから、手早くカットして、“親子鍋”に玉ねぎと調味料を加えて煮立たせてから並べていき、卵で閉じていく。


 ちなみに親子鍋は丼鍋ってやつで、親子丼なんかを作る持ち手が上に伸びてる鍋のことだ。


 手早く仕上げてから、先程出した米を丼に入れてから上に乗せて蓋を閉めていく。


 丼物は蓋を開けた瞬間の香りが一番食欲をそそる気がするから、やはり蓋は大切だと思うんだよな。


 人数分を用意するのは大変だったが、最初の流れを見ていたダイン達や嫁ちゃん達が手伝ってくれて皆で一気に完成させていく。


 今日の夕食は特製のオークカツ丼になったため、熱々を皆で食べることにした。


 初めての味だったのか、ダインもそうだが、三ツ目族の三姉妹も嬉しそうに食べてくれていてホッとした。


 色々な料理があるが、ダインに任せる2号店がどうなるか楽しみで仕方ないな。

読んでくださり感謝いたします。

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