61話、クラン名と仲間のプレート
従業員となったメンバー達に挨拶を済ませると、俺達は[バリオン]へと帰還した。
やはり、転送陣は便利だが、今回はフライちゃんにかなり負担をさせてしまったので反省だな。
俺は夜の[カエルム]から朝の[バリオン]に移動してきて、眠気を感じながらも屋敷から厨房側に続く通路を通り、すぐに作業に取り掛かる事にした。
臨時休業となってしまったため、気合いを入れて仕込みをしないとな!
「ご主人様、待ってください。先にやるべきことをやってから仕込みをお願いいたします」
突然、ポワゾンに止められて、よくよく考えると、ベリーから軽くため息が漏れて、ミアとニアからも首を左右に振られた。
「オッサン、先ずはクランの話をしに行くんだろ?」
「そうにゃ〜先に仕込みをしたら、日が暮れちゃうにゃ!」
「キンザンさん、クラン創設は代理がきかないのよ。早く支度をしていくわよ? 既にメンバーから署名とかはもらってあるから」
「あ、すまん。できる嫁ばかりで本当に助かるよ。いつもありがとうな」
その言葉にベリー達が軽く頬を染める仕草も可愛くて仕方ないな。
やり取りを見ていたドーナが俺の服を小さく引っ張り、自分に人差し指を向ける。
「ドーナは? できてるなの?」と聞かれて、俺は優しく微笑む。
「ああ、ドーナも他の皆も最高にできたいい嫁だよ」
「マスター? ペコちゃんとグーちゃん、フライちゃんもナギちゃんもお嫁さん?」
その質問が今くるか、俺はそのつもりだし、実際に手を出してしまっているが、ペコやグー、フライちゃんにナギはどう感じているのか……
「少なくとも、私はきんざんさんの、つ、妻であろうと思っています。女神より、きんざんさんといる方が幸せですからね……本当なんですよ」
「「私達も、許されるなら……主様のものでありたいです」」
「ナギはマイマスターのモノ。ずっと一緒にいる」
俺は幸せ者だと改めて感じる。
「ああ、俺も皆を愛してるぞ。これからもよろしくな」
そんな少し照れくさい会話をしてから、俺はベリーとポワゾンを連れて『民間ギルド』へと向かっていく。
ギルドに入り、職員にクランを創設したいという話をするとすぐに席へと通された。
案内された席には既に職員が座っており、その顔を見て俺は一度、深く頭を下げた。
「ペコとグーの時は世話になりました」
それはペコとグーのことを相談しに来た際にあった初老の男性職員だった。
「いえいえ、アレも仕事ですから、さて、今回はクランを作りたいというお話でしたね。お伺いさせて頂きます」
丁寧な口調でそう言われて始まった話し合い。当然だが、前もって知っている情報ばかりであったが、説明の中には、クランメンバーの税金の話も入ってくる。
冒険者として、ギルドに登録している者もクランメンバーとなると税金が変化するといった内容だった。
ペコやグーは未だに“ツインズ”として、冒険者パーティーとして登録されているがそれがクランに切り替わるそうだ。
高ランクならば、ギルドに所属したままの方が稼げるが、下級や中級ランクの冒険者ならばクラン登録した方が恩恵が多く受けられるらしい。
クランの説明がある程度、終盤に近づくと次にクラン創設に関する書類記入を行い、代表者として俺の名前を書いてメンバーのリストを提出する。
「キンザン様、代表者1名、メンバーが人族4名、亜人族 (獣人族以外)が7名、獣人族 (亜人族以外)5名、総勢17名のクランということで間違えないでしょうか?」
「後々、増えるかもしれませんが、問題ありません」
「かしこまりました。クラン名はどうされますか?」
「勿論、『フライデー』でお願いします」
「かしこまりました。では、クランの種類ですが、冒険者クランとなさいますか?」
「いや、調理クランとして登録してくれるか」
「調理クランですか?」
不思議そうな表情をされたが想定内だ。
本来のクランの目的は人数を抱えた冒険者パーティーなんかが、全員の利益を護る為や強さを見せるための手段の1つとして使われる。
だが、俺は強さとかは、関係ない。ただ、仲間を護るために使いたいだけなんだ。
「はい、調理師クランとして、登録をお願いします」
「驚きました。長い事この仕事をしてますが、冒険者クラン以外の設立を頼まれたのは初めてですよ」
そう言って、初老の男性は笑みを浮かべながら『受理』を意味する判子を押してくれた。
この瞬間、俺達『フライデー』はクランになったのだ。
すぐに他の手続きを済ませ、ペコとグーに関しても『民間ギルド』から『冒険者ギルド』に対して、ギルドがサブ扱いになった通知が送られた。
ちなみに今いるベリーとポワゾン以外のメンバーは今、[森の終わり]へと狩りに向かってくれている。
食材調達というやつだ。『民間ギルド』での手続きを終わらせてから、3人で雑貨屋などを回って[カエルム]のメンバー達の生活用品や必要になりそうな物、店舗で使う食器などを新しく仕入れていくことにした。
[カエルム]は魚介類や肉がメインの食材になっていたが、野菜や果物といった物が弱い印象があったので、そちらにも仕入れの目を向ける。
多くの食材から使えそうな物をピックアップして、見繕い、【ストレージ】へと収納して屋敷に戻ることにした。
その際『ガラット宝石店』の前を通ったので俺は寄ることにした。
ベリーとポワゾンは俺の行動を商談だと勘違いしたのか、先に屋敷へと帰っていった。
ガラット宝石店の扉を開いて中に入る。
前回と違い、店舗側にガラットさんがいた。
「ガラットさん、お邪魔します」
「おぉ、これはいらっしゃいませ。キンザン様」
どうやら覚えててくれたみたいだな。忘れられてたら少し悲しいなと思ってたから、少しホッとしたな。
「今回は頼みたいモノがあって来たんだ。いいかな?」
「頼みたいものですか?」
俺は“買い物袋”から17枚の無記入のピンの付いたネームプレートを取り出してガラットさんに見せる。
「このプレートは力を入れすぎると割れちまうんだ、だから繊細な削り仕事になるんだが、このリストの名前を彫れないかな?」
「拝見させてください。たしかに、硬いですが……力を加えすぎると割れそうですな? ですが、可能ですよ」
「なら、ネーム彫りと同時にプレートの端に小さな穴も開けてもらえないかな?」
「はあ? 分かりました。それもお引き受けしましょう」
「良かった。穴にこの宝石を埋め込む予定なんだができるかな?」
俺はネームプレートに嵌め込む予定の小さなガーネットをガラットに見せる。
「本当にこれを付けられるんですか、かなり高価な品に見えますが?」
「そうでもないんだがな、まあ、壊れた時用にネームプレートの予備も置いておくからさ。支払いについてなんだが?」
「支払いについては、すべてできてから頂きますよ。明日の昼までには終わりますので、また明日お越しください」
「ああ、わかった。よろしく頼むよ。感謝します、ガラットさん」
「いえいえ、あと明日は、こちらからも飾り石の回収を頼みたいのですが、よろしいでしょうか?」
「そっちが目的か、分かりました。ではまた明日伺いますね」
互いに目的を伝えながら、依頼を終わらせてから俺も屋敷へと向かっていく。
屋敷に近づくにつれて、少し血生臭い感じに気づき、足を急がせると屋敷の庭には大量の狩られたモンスター達が並べられていた。
ミア、ニア、ドーナが互いに誰が一番大きな獲物を仕留めたかで言い争いをしている真っ只中だった。
様子を見ていたベリー達に訳を聞いてみた。
・一番デカい獲物を仕留めた人が一番という意見。
・仕留めた数が多い人が一番という意見。
・種類が多い人が一番という意見。
3人が各自の一番を主張しているようだ。いやいや、俺からしたら、全員すごいと思うんだが?
とりあえず、目立ち過ぎるため、一旦声をかけることにして、3人の意識をこっちに向けてもらう。
「おーい、皆、すごいじゃないか! 誰がどれを取ったか説明してくれ、あと、出しっぱなしだと、ダメになっちまうから、一旦、収納していいか?」
声に反応したように3人が俺に向かって走って来たので、説明を聞きながら、【ストレージ】にモンスターを次々に収納していく。
どうやら、並べられた魔物以外はドーナが収納スキルで収納していたようで、フライちゃん達もそれなりに狩りは成功していたようだった。
全員の頭を撫でながら、ご褒美に“買い物袋”からチョコレートを取り出して嫁ちゃん達に配っていく。
当然、ベリーとポワゾンにも感謝の気持ちを込めて手渡していく。
この日は久しぶりの屋敷でご飯になるので、早めに夕食用にツノウサギを使った唐揚げを仕込んでいき、大量の『ラビカラ』パーティーを開催していく予定だ。
嫁ちゃん達も皆手伝ってくれるので本当に賑やかな夕食の支度になったが、やはりこんな雰囲気は悪くないよな。
1つ困ったのはナギがラビカラのウサギを丸かじりしようとしたりと、生肉でも食べようとすることだったが、こればかりは種族それぞれの食文化なのかもしれないな。
明日は[カエルム]に寄って、クランが正式になった事も伝えないとな、大変な一日になりそうだな。
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