59話、悩んだ結果、クランを作ろう!
昼食後の片付けに入る頃には、フロア側では満腹になり、席で気持ち良さそうな表情を浮かべるメンバーの顔があった。
「まぁ、皆、満腹になるまで食べたら動けなくなるよな。あれだけ美味しそうに食べてもらえたら嬉しいってもんだが」
「キンザンさんの料理って、不思議と食べすぎちゃうのよね」
「ですね、ベリー様の言う通りご主人様と同じで奥深い魅力があるのでしょうね」
サラッと褒めるのはやめてくれ、本当に恥ずかしいからな!
「褒めてくれてありがとうな、とりあえず片付けを済ませるから、2人も休んでくれ」
皿洗いなどに関しては、新しいメンバーのダイン達がやると言ってくれたが、しっかりと断った。
初めて飯を皆で食べた日くらいはゆっくりしてほしいからな。食後の少しウトウトした感じを楽しんでもらいつつ、俺は洗い物を終わらせていく。
厨房の小窓を開き、ポケットから煙草を取り出して、ゆっくりと吸っていく。
広い厨房の片隅にある僅かな小窓から煙が外に流れていく姿を見て、改めてこういう感じが何となく好きなんだよなと思う。
煙草を吸い終わり、“リサイクル袋”に吸殻を放り込んでいく。
一度、目を瞑り、頭の中で話すべきことを再確認してから食休みをしている皆の元へと向かって移動していく。
フロア側に移動するとすぐにメンバー側の面々から頭を下げられた。
「オラたつが、やらねぇといけない仕事をありがとうごぜぇます」
熊人族のダインが頭を下げる姿は少しびっくりだな。
「構わないから、それよりもダイン、ミミ、コンの3人には今日見てもらった調理法なんかを覚えて欲しいんだ」
俺は自分の作ったアジャのフライを3人に覚えてもらうこと、他にもコロッケといった付け合わせメニューを幾つか覚えてもらうつもりだ。
ダイン達は本来は、肉料理をメインに扱う料理人だったが、やはり料理の幅を広げなければならないことと、あの『肉と欲望のバッカーン』は『ニコニコ不動産』のお姉さんが言うには、色んな地域に何店舗かあるらしい。
つまり、同じメニューを出す訳にはいかないのだ。だからと言ってそれを活かさないのは勿体ないというのが本音だ。
なら、やるべきことは1つ、肉のプレートがメインだった『肉と欲望のバッカーン』にないメニューをぶち込んでいくのみだ。
つまりは、“パン”じゃなく“米”を、“肉”だけじゃなく“魚介類と野菜”を、といった形を作りたい。
たしかに、サラダなんかのメニューはあったようだが、それ以上に“刺身”や“海鮮丼”なんかを出したいし、“アジャフライ”や“天ぷら”なんかもやっていけたらと思っている。
まぁ、パクリだとか、うちのメニューだ! なんて、言われ方をされた際に言い返せる状態にしておきたいんだよな。
だからこそ、今までの技術はそのままに、食材を変える事にしたコンセプトを切り替えることで新たな路線へとシフトチェンジするのが目的だ。
その日は、説明を終わらせてから解散となったが、ダイン達は店舗での寝泊まりを選択したのでホテルで彼等が使っていた部屋を早々に引き払う結果になった。
「本当に大丈夫か?」
「キンザンオーナー、大丈夫だよ。オラ達は元々、店の地下で寝てたから、むしろ今がありがたいって話ですだ」
「そうか、なんかあれば、ホテルまで来てくれ。あとこれを渡しとくから好きに使ってくれ」
ダインに【ストレージ】から取り出した複数の食材と金貨の入った袋を手渡す。
食材は練習用と食べるための2つの目的で渡し、金貨は足りない物を買うようにと指示をした。
明日には俺達も[バリオン]の我が家に戻らないとならない、そうなれば[カエルム]との往復生活も視野に入れていかねばならない。そのため、ダイン達の生活資金でもあるのだ。
ダイン達の今までの生活から考えて、足りない物も多いだろうし、客から何かをもらうというのもオープンしていない店舗では無理だろう、俺の店舗でそんなマネはさせない。むしろ、する必要がないようにしてやりたい。
『レイラホテル』に戻ると警備兵団のブルーノが俺達の帰りを待っていた。
「お、ブルーノじゃないか、どうしたんだ?」
「おいおい、兄弟。“どうしたんだ”じゃないだろうが? どこの世界にアレだけの騒ぎを起こしてから、街をぶらつく奴がいるんだよ。お陰でこっちはクタクタだぞ」
「悪かったな、てか、兄弟ってなんだよ。ったく、まぁ明日には[カエルム]を離れる予定だから、会えて良かったよ」
俺はブルーノと話ながら、これからについて軽く語ることにした。
[カエルム]を離れると話した瞬間はブルーノも少し驚いたような表情を浮かべていたが[バリオン]に拠点があると説明すると納得してくれた。
「そうかよ、兄弟、オレはてっきり、この[カエルム]で、ずっと居てくれるんじゃないかと期待してたんだがな」
「はは、そうはならないさ。いい街だとは思うがな」
「いい街か、それはどうか分からんがオレ達が守る街だからな。そう言われたら悪い気はしないな」
「ああ、それに俺の仲間になった奴らに店を任せるつもりだから、顔はちょくちょく出すさ」
そこから、奴隷達を従業員として、店舗を任せるつもりだと、俺自身の考えを話していくことにした。
内容を話すとブルーノは渋い顔をして、顎に手をあて悩み出した。
「どうしたんだよ? 難しい顔して」
「いや、主人が離れた奴隷が暴れたらって考えると、色々とな」
ブルーノは単純に奴隷が暴れる事を恐れていると言うよりも、問題が起きた際の対応が難しいことを危惧しているようだった。
たしかに、揉めごとが起きた際の対応は考えていなかったので、改めて考える必要があるかもしれないな。
誰かが管理するとなれば、話は早いが適任者となると難しい話なんだよな。
頭の中に浮かんだ顔はベリーだったが、ベリーにそんな負担を追わせる訳には行かないよな。
悩む俺にブルーノがある提案をしてきた。
「なら、『民間ギルド』でクラン登録して、クラン経営で出せば、問題が起きた際にオレ達警備兵団が介入できるようになるぞ」
内容が分からずに、詳しく説明を聞くことにした。
ブルーノの話は簡単に言えば、クランを作ることで警備会社を呼べるようになるという内容だった。
クランを作るメリットの1つであり、本来は問題が起こるまで、介入できない警備兵などの介入が可能になるのだそうだ。
まぁメリットはあるが、デメリットとまでは言えないが、幾つか条件も存在している。
条件としては──
クラン作成にはクラン運営資金が必要になる。
メンバーが8人以上であること。
クラン拠点が存在していること、この場合の拠点は持ち物件であること。
クラン税が発生するため、支払い能力が存在していること。
まぁ、こんな感じだ。メリットが存在する反面、かなり金が掛かるのがクランというシステムだ。
まぁ仲間を護りたいって考えるなら、創る価値はあるだろうな。
「そんな方法があるんだな。説明を聞いてみて、少し検討の余地があるって感じたわ。ありがとうなブルーノ」
「構わないって、なら、もう少し話したいし、明日には、旅立つなら一緒に飲みにいかないか?」
「お、いいな、って言いたいが……今度にするよ。これ以上話すと、嫁ちゃん達に何されるか分からないからな……ブルーノが」
「へ、オレが?」と、ブルーノが俺の視線の先を確認するように振り向く。
そこには待ちくたびれたという表情を向ける嫁ちゃん達の視線があった。
「あ、たしかに……ありゃダメだな。なら、そろそろオレも帰るとするよ。また話そうな兄弟」
「おうよ、まぁすぐにまた話せるさ」
ブルーノを見送ってから、俺は嫁ちゃん達と借りている部屋に戻ることになる。
既にお怒りマーク全開なのに、ニッコリと笑う嫁ちゃん達はマジに怖いんだが……
「ねぇ、キンザンさん。少し話すって、どれくらいの時間か分かるかしら?」
「あはは、いや、大切な話だったからさ……」
「大切な話しか、オッサンには大切な時間を使う理由があるよな? ボク達にも大切な時間を使って欲しいよなぁ」
「使って欲しいにゃ〜でも、いつもお預けだにゃ〜悲しいにゃ〜」
「ドーナ、ずっと待ってたの、マスターいつも、後でばっかりなの、プン!」
「皆様、ご主人様は釣った魚に餌をあげない飼い殺しタイプかもしれませんが、大丈夫ですよ、待てばきっと……チラ、大丈夫なはずですよ」
ポワゾンとドーナに関しては、何かあざといんだが!
とりあえず、期限を取らないとマズイ気がする……よく見たら、フライちゃんとペコ、グーは参戦してないし、ナギもなんか悩んでるみたいだしな。
「まあ、皆、落ち着けよ、あはは」
「「主様、笑って誤魔化すのはダメな判断ですね」」
「きんざんさん、なんと言うか……残念な反応ですね、なので、皆さんのストレスをしっかりと発散させてあげたらよろしいかと思うんですよ」
フライちゃんは悩まずに、念書の紙を俺に手渡すとサインするように言われた。断れる雰囲気じゃなかった為、念書にサインをしていく。
サインした瞬間、部屋が光の結界に包まれ、時間の流れが停止すると嫁ちゃん達がニヤリと笑い俺を取り囲んでいく。
そこから、念書の効果と時間停止の結界が切れるまで、嫁ちゃん達のこの数日で着るはずだった衣装のお披露目という名のファッションショーが繰り広げられていった。
ちなみに時間停止の結界は効果が24時間なので、ファッションショーの後で室内にある風呂などに入り、休日気分を満喫することになり、こんな使い方も悪くないなと思う俺がいた。
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