57話、新たなメンバーは奴隷? [カエルム]の不動産
結果的に奴隷解放を断ったのは、蛇人族のナギを含め、獣人族の男性2人、獣人族の女性2人、亜人種の女性3人の計8人がそのまま残ることになった。
最初に亜人の2種──
・蛇人族のナギ──足の代わりに立派な尻尾を自在に操り移動や攻撃などを行う美しい紫と緑の髪をした女性で、最初に俺が『肉と欲望のバッカーン』で奴隷にした存在だ。
・三ツ目族の三姉妹──読んで字のごとく、通常の2つの目以外に額にもう1つ瞳が存在する種族だ。『肉と欲望のバッカーン』では注文の再確認や商品の準備などを担当していたらしい。
ちなみに長女がドド、次女がメメ、三女がキキとなっており、三ツ目族の名前は2つ同じ文字を並べるそうだ。
次が獣人の男性──
・熊人族──クマの獣人、ダイン。
見た目はずんぐりむっくりな感じで、のんびりした口調をしている。優しい性格で料理人奴隷として働かされていた。
・狼人族──オオカミの獣人、ガルダ。
元戦士の獣人傭兵だったが、戦場を離れることを決めてから、今までの罪を償うために奴隷堕ちを選択していた存在。店の用心棒をしていたらしい。
そして、獣人の女性陣だな。
・兎人族──ウサギの獣人、ミミ。
こちらも厨房側で働いていた獣人で接客は苦手のようで、見た目は良くも悪くも普通だろうか、大学生か高校生かと言われたら少し悩むくらいのスタイルをしていて、うさ耳がチャームポイントに感じる。
・狐人族──キツネの獣人、コン。
モフりたくなるくらいフサフサの尻尾を持った獣人だ。料理人として働いていた奴隷でデザートを担当していたらしい。どこか後輩系の雰囲気のある不思議な女の子だ。
この8人については、俺の奴隷とすることになったため、後日、『民間ギルド』で登録をしっかりとして、完全に俺が主であると示す必要がある。
解放した奴隷も報告が必要になるため、奴隷証明書に書かれた管理番号を控えてある。
これは解放後に奴隷が犯罪を犯した際に、関係がないという証明になるため、絶対に必要なんだそうだ。
これはポワゾンから教えてもらった知識に他ならない。
ポワゾン自身が奴隷という立場なので、しっかりと調べていたらしい。本当に抜け目のないやつだと感心するよ。
どちらにせよ、一度[バリオン]に戻ってからしか手続きができない事実が分かったので、俺は急いで戻ろうと考えて嫁ちゃん達にその話をすると猛反対された。
「オッサン、急ぐのは分かるけどさ、2日も意識を失ってたんだぞ! もう1日くらいは安静にしてろよ」
「そうね、ミアの言う通りよ。キンザンさん、なんなら手続きは私とポワゾンで代わりに行くわ。キンザンさんの身分証があれば大丈夫なはずだから」
ベリーとミアに言われて、俺は渋々、ベリーとポワゾンにギルド証を渡して、代理を頼むことに決めた。
「なら、その際に奴隷の皆の税金を払ってきてほしいんだ。解放した奴らの分も必要になるだろうから、多めに金貨を渡しておくよ」
「はぁ、本当にキンザンさんのその性格は理解に苦しむわね、甘すぎるといつか足元を掬われるわよ?」
「肝に銘じとくよ。なら頼んだよ」
「ええ、頼まれたわ」
会話が終わると、ベリーとポワゾンの2人が移動しようとしたが、そこにドーナが大きく声をあげた。
「待つの! 2人だけだと危ないのだから、ドーナもついて行ってあげるの」
「別に私達だけで、大丈夫よ?」
「ダメなの! マスターの金貨なの! 取られたり2人になんかあったら、マスターが泣いちゃうの!」
「ベリー様、ドーナ様の言葉は正しいかと、御一緒に向かうことにしましょう」
「まぁ、構わないけど。ならミアとニア、フライ様、ペコ、グー、皆でキンザンさんをしっかりと見張っててね」
見張ってて、って俺的に引っ掛かる言い方だなぁ。
3人が[バリオン]へと転送陣を通って向かい、残された俺はとりあえず、レイラと話すことにした。
話の内容はホテルの支払いについてだ。長々と世話になったため、ホテルを旅立った奴隷達の部屋の支払いを済ませておきたいからだ。
「話はわかったよ。支払い額がかなり高くなるが大丈夫なのかい? なんなら、キンちゃんだけ、特別に黒砂糖で支払っても構わないよ」
「はは、黒砂糖、何キロ分だよ……さすがに想像つかないぞ?」
「黒砂糖なら? まぁ、1000キロとかかな、まぁさすがに無理だろうな」
「いや、それでいいなら、支払うぞ?」
「マジに言ってるわけ! ならメンソールを10カートンも付けてよ」
「構わないぞ。だけど本当にいいのか?」
「構わないよ。むしろ、諦めてたメンソールが大量に手に入るなんて幸せだし」
予想外の支払い方法になったが、今回はレイラの話に乗らせてもらうことにした。すぐに“買い物袋”から黒砂糖1000キロを『レイラホテル』の厨房に置いていく。
「いやぁ、言ってみるもんだね。さすがに1000キロなんて、普通は無理って話だからね」
「構わないさ、それに俺が役に立てるならそれは嬉しい話だからな」
「そうなんだな。そういや、キンちゃんが揉めた『肉と欲望のバッカーン』が完全に[カエルム]から撤退するそうだよ。なんか奴隷差別とかで、印象が悪くなったみたいだね」
「そりゃ悪いことしたな……」
「まぁ名前が派手だったけど、本来はすごくいい店なんだけどね。[カエルム]のオーナーが悪かったからね」
「あの店はどうなるんだ?」
「もう、売りに出されてるよ。まぁ騒ぎがあった店だから、次の店は大変だろうね」
「なら、俺が店を買っても問題ないってことか」
自分でもとんでもない発言をしてるのは理解してるが、どうせなら、ほしいよな。
「いやいや、キンちゃん、いきなり何言ってんだよ? 幾ら掛かるか分からないだろ?」
「まぁ、今から話を聞きに行ってみるかな?」
そんな発言にレイラが呆れたような顔をしていたが、諦めたように首を左右に振って見せる。
それから、レイラは不動産屋のルートと紹介状、さらに口利きの手紙を用意して俺に手渡してくれた。
「これがあれば、あの店について、値段交渉ができるはずさ、あとはキンちゃんが上手くやるだけさ」
「悪いな、助かるよ。そんじゃ行くとするかな、よっこらしょっと」
「そんなフラついた足で本当に行けるのかい?」
「まぁ、大丈夫じゃなくても行かないとだからな」
話を終わらせて部屋から出るとナギがその場に待機していた。
「何してんだ?」
「待ってた。部屋の前通ったら、マイマスターの匂いしたから」
「犬みたいな嗅覚してんな……でも丁度よかった。悪いが俺を不動産屋まで連れてってくれないか?」
「不動産屋? 場所が分かれば連れてくよ?」
「なら、頼むよ」
急いで、不動産屋に向かおうとした時だった。突然、横からミアとニアが俺に突進してくると、一瞬で倒れた俺の首をロックするミア、そして足を抑えるニアがいた。
「オッサン……大人しくするって話だったよな?」
「そうにゃ、ゆっくり休む話はどうしたにゃ!」
「ぎ、ギブ! ギブだ!」
「ギブってなんだよ?」
「知らないにゃ?」
それから、ナギが2人を俺から離してくれて何とか解放され、ミアとニアに説明をしていく。
「つまり、不動産屋に話を聞きに行きたかったんだよ、分かってくれたか?」
「なら、そう言えよ、悪かったな。オッサンがまたなんかする気なのかと思ってさ」
「早まったにゃ、ごめんにゃ」
2人が納得してくれたので、とりあえず俺が向かうことは納得してくれた。
そのため、俺はナギに不動産屋まで連れて行ってもらう。それにミアとニアも一緒に同行することになった。
しかし、店内に入るのは俺だけという条件を付けさせてもらう、理由としては、今回の一件で恨まれてる可能性があるためだ。
嫌味を言われるのは俺だけでいいからな。
若干の緊張と不安を感じつつ、俺は不動産屋の扉を開き、中に入っていく。
「いらっしゃいませ。『ニコニコ不動産』にようこそ。物件のお探しでしょうか? もしくは、別荘などをお探しでしょうか?」
愛想のいい受付のお姉さんにグイグイこられそうなので早めに話を進めていく。
「いや、繁華街にあった『肉と欲望のバッカーン』があった場所についてなんだが」
「あ、あの物件ですか、事故物件ですので、返金サービスとか、後から問題があっても、当店としては一切保証できませんが?」
「別に構わないんだが、その物件は買えるのかが知りたくて来たんだ」
「よくウチが取り扱い店舗だと知ってますね? 本当にびっくりしました」
そう言えば紹介状を預かってたな。渡すのを忘れてた。
思い出して、すぐにレイラから渡された口利きの手紙と紹介状を手渡す。
受け取った受付のお姉さんが内容を確認すると立ち上がり、1つの紙の束を目の前に持ってきた。
「手紙の内容を確認させていただきました。こちらの物件は月契約なら、ひと月あたり、金貨5枚(10万リコ)となります。購入でしたら金貨2500枚(5000万リコ)となります……どうなさいますか」
少し緊張したような受付のお姉さんは何かを願うような表情で俺に問い掛けてきたので、少し悩む素振りをしてみる。
お姉さんの顔が不安そうになったり、願うような表情になったりと七変化するのが面白くて、ついつい意地悪をしてしまった。
いまだに借りる際の説明をしてくれてる受付のお姉さんの話を聞きながら、こちらから話すタイミングを待つことにする。
既に値段を聞いて悩む必要が無いと分かっていたので受付のお姉さんに優しく笑みを浮かべてから口を開く。
「──と、いう形になりますが、店舗契約を致しますか? 今ならすぐに賃貸契約が可能ですが?」
「いや、借りるのはやめとくよ」
「やっぱりそうですよね……はは、少し焦りすぎましたよね」
なんか緊張の糸が切れたのか、話しやすくなった感じがするな。
「ああ、だから買う方向で話を進めたいんだ」
「え、えぇぇぇーーーっ!」
受付のお姉さんの声に心臓が飛び出るかと思った。
最後に店を後にした際、受付のお姉さんは素晴らしい笑顔で俺を見送ってくれた。
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