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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
4章 各地を回って食材探し[カエルム]

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54話、ボロボロの俺とひきこもり女神2

 同じ敷地内にある転送陣の前に到着するとその場にいた神父さんに金貨を数枚、取り出して手渡す。


「頼むナギ!」

「はい!」


 教会の転送陣に乗ろうとした瞬間、全身を強く弾かれ、転送陣が拒絶したかのように弾き飛ばされた。


 ナギがいたため、吹き飛ばされた直後に無傷でキャッチされたので顔面ダイブは免れたが、正直マジに焦った。


 一部始終を目の当たりにしていた神父さんも驚いた表情を浮かべていたが、俺は諦めずに最初に[癒しの街・カエルム]に飛んだ際に使った地下室に続く転送陣を思い出して、そちらに向かってもらうことにした。


「ナギ、悪い外だ! 繁華街の先にあるレイラホテルに向かってくれ!」


「場所が分からない、指示をお願い」

「わかった! このまま、突っ切ってくれ!」


 道案内をしながら、ナギにできる限り出せる最高速度で一気に移動してもらう。


「悪い、ナギ、レイラホテルのすぐ側にあるはずなんだ!」


「わかった! あとは女神フライ様を信じれば大丈夫?」

「おう、頼むぞ!」


「あそこの路地裏だ!」


 ナギに抱き抱えられたまま[カエルム]の街を移動する俺は攫われるお姫様スタイルだったが、今はそれを気にする余裕がない。


 一分一秒でも早く、直接、言ってやらないと! 

 焦る俺、視線の先に最初に通り抜けた転送陣が見えてくる。


「構わないから飛び込め!」

「うん、分かった!」


 教会での一件があるため、吹き飛ばされる覚悟を決める俺はナギに抱かれたまま転送陣へと飛び込んでいく。


 眩い光が全身を包み込むと瞬く間に俺とナギは屋敷の地下へと移動していた。


 移動したと同時に勢いよく飛び込んだせいで壁ギリギリまで転がるはめになったが、無事に屋敷に戻ることができたな。


「大丈夫か、ナギ?」

「はい、大丈夫です。それよりどうすればいいですか?」


「なら悪い、このまま2階に向かってくれないか」

「分かった!」

「あと、無茶をさせて、悪いな。もう少し、付き合ってくれ」

「わかった、優しい言葉、ありがとう。嬉しい……マイマスター」


 少し照れくさい呼び方をされたが、今は保留だな。


 2階に移動するとペコとグーの2人が扉の前で待機していた。


「あ、主様!」

「え、主様だ!」

「「無事に目覚めてくれたんですね。良かったです」」


「2人とも、ご苦労様だな。飯は食べたのか?」

「「見張りは終わるまで、食事は食べない決まり、だからあと数時間はご飯抜きです」」


「なら、少し食べてきてくれ。俺が此処にいるからさ」


 “買い物袋”から『ホレホレ弁当』の海苔弁MAX盛りを2つ取り出してやる。


「「おぉ、で、でも……見張りが」」


 さらに“買い物袋”からコンビニの高級スイーツ『あたしのプリンアラモード』を追加で2人分出していく!


「「分かりました! 主様の言うことに従います」」


 2人は下の階に移動して行った。


「2人にご飯抜きは可哀想だからな。これでよしだな」


 俺はナギとともに、フライちゃんが閉じ籠っている部屋へと入っていく。


「入らないでください……誰にも会いたくないのです」


 暗い部屋のベッドに体育座りをして膝に頭をうずめていた。

 小さくなって消えそうな雰囲気と声が微かに耳に伝わる。


 無言のまま、俺が頷き、ゆっくりとベッドへと近づいていく。


 ナギがベッドの横まで移動してから、俺はベッドに腰掛ける。


「フライちゃん、心配かけたね」

「私のせいで……死にかけてしまったんですよ、私がもっと上手く止められたなら、あんな、あんなことには、わたしが……」


 自分を責め続けるフライちゃんの泣き声が耳に響く。それと同時に小刻みに震える姿を見て、すぐに優しく両手を広げて包み込むように抱きしめる。


「大丈夫だから、俺は大丈夫だからさ、だから泣かないでよ。フライちゃんが泣いてたら俺も悲しくなっちゃうしさ、治ったばかりで心に傷ができちまうよ」


「なんですかそれ、それじゃ、わたしは泣いたりもできないじゃないですか、ずるいですよ」


「ずるいか、悪いな。でも笑ってるフライちゃんが1番だからさ」

「女連れの男性が言うには少し、キザ過ぎですね、ふふ」


 フライちゃんが泣きやみ、僅かに笑い声が聞こえた。小さく弱々しい声だったが、俺にはそれでいい。


「マイマスター、ナギは出てた方がいい?」


「いいえ、ナギさんもいてください。こちらにきて欲しいのです」


 フライちゃんの言葉を聞いてから、俺に一度視線を向けたナギに軽く頷く。


「ナギはナギ、女神様? マイマスターは大丈夫だよ」


「ありがとうございます。ナギさん、情けない姿を見せてしまいましたね」

「大丈夫、“ギュッ”って、されたら皆、暖かくなるから、だから、いっぱい“ギュッ”ってしてあげる」


 俺がフライちゃんを抱きしめて、そんな俺とフライちゃんがナギに抱きしめられる。

 不思議な感覚の温もりが全身に伝わり、俺達は次第に笑い出していた。


 安心したからなのか、それともこの不思議な状況になのか、分からないがただ、笑顔で笑っていた。


「きんざんさん、わたしは謝らなければなりません。ですが、不安なんです。だから、あの念書を使って嘘偽りのない会話で謝罪をさせてもらえませんか?」


「え、構わないけど、心が読めるんだから、フライちゃん大袈裟じゃないかな?」


 少しモジモジしながら、念書の紙を即座に作成したフライちゃんが俺の顔を“ジッ”と見つめてくる。


「女神だからこそ、不安になるんです、他にも色々と……」

「え、最後が聞こえなかったけど?」

「いいから、サインしてください! ナギさんアナタもですよ」


「わかったよ。ナギもサインしてくれ」

「わかった」


 3人の名前が刻まれた念書が光り輝き出していく。

 それとは別に光の粒子が部屋全体を包み込むように広がっていき、部屋が光に包まれる。


「時間停止の結界を張りました。これで、この空間の時間は完全に止まりました。外から干渉も受けません。き、きんざんさん! ま、先ずは本当にすみませんでした」


 いきなりの全力謝罪に俺も慌てて返事をする。


「大丈夫だよ。怒ってないし、恨んでもないよ」


「ですが、それだと、わたしの気持ちと覚悟が無駄になってしまいますので。だから、許さないで欲しいのです」


「え、え? なんで許さないで?」

「マイマスター、話を合わすのが優しさ」


「あ、ああ、許したけど、許さないこともない、というか……」


 念書のせいで嘘がつけないから、会話が少し変になるな。


「ゆ、許されないなら、わたしは女神フライはきんざんさんの傍でずっとずっと、許してもらえるように一緒にいると誓います」


「ふ、フライちゃん? 本当にどうしたんだよ」


「わたしは、誓います。一緒にいると、許してもらえない時は、二度と顔を見せないと……」


「ま、待ってくれ! フライちゃん、す、ストップ!」


「誓います……許してもらえないなら、わたし、女神フライは、消滅しても構わないと!」


「わかった、許すから、全部許すから! 落ち着いてくれ、フライちゃん!」


 叫び声のような俺の声にやっと落ち着きを取り戻したフライちゃんは泣きながら、その場で「ごめんなさい」と呟いている。


「全部話してよ。フライちゃん」

「わたしはズルいことをじまじた……ごべんなざい」


 途中から、泣きながらの言葉に俺は慌てながらも、優しく微笑む。


「そうだね、たしかに少しズルかったかな、でもいいんだよ。よしよし」

「うぅ、うぅぅ」


 フライちゃんが泣き止むまでゆっくりと頭を撫でてやった。


 ナギもそれに合わせて俺とフライちゃんの顔をキョロキョロと見ては不思議そうに表情を浮かべる。


「仲直り? マイマスター」


「はは、そうだな。これが1番いい結果だな」


 俺がニッコリと笑いかけた瞬間だった。柔らかい感触が俺の口元に触れる。


「へ、フライちゃん」

「女神からの接吻は、真実の愛なんですからね。きんざんさん」


「あ、おん」


「マイマスター、真っ赤?」


「わ、わざわざ、言うなよ」

「でも、真実しか喋れない、悪気ない」


「きんざんさん、最後のズルをします。わたしは愛される価値はありますか?」

「当たり前だろ」

「嬉しいです。きんざんさん」


 俺の首に手が回されるとフライちゃんは優しく抱きしめてきた。


「解除します。きんざんさん、ナギさん、すみませんでした」

「まだ早い、ポワゾン姉様から、使うように言われたから、使う」


 ナギは悩むこと無く、預かった袋を開き中から、見慣れた小瓶を取り出した。


「またかよ! ナギ、それを開くな!」

「無理、昨晩、ポワゾン様からその言葉が言われたら瓶を壊せって言われた」


「ポワゾンッ! あ、あの毒メイドがぁぁぁぁーーッ!」


 そこから俺は罰当たりなことになってしまった。

 俺自身は毒は効かないから媚薬は無効化できたが、ナギとフライちゃんの2人に襲われることになった。

 ナギの力は強く。はい、力ずくでそうなりましたよ。


 いい感じの雰囲気を一瞬で吹き飛ばしたポワゾンは絶対に許してやんないからな。


 ただ、毒が効かないはずのフライちゃんなのに、やっぱり、ずるいと思ったそんな時間だった。

読んでくださり感謝いたします。

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