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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
4章 各地を回って食材探し[カエルム]

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53話、ボロボロの俺とひきこもり女神1

 咄嗟に目の前に立たれたブルーノさんの驚く表情が視界に入った瞬間だった。

 腹部から強烈な痛みと焼けるような感覚が走り、全身を駆け巡る。

 暖かくすら感じる血液の感覚が次第に冷たくなるのが分かる。


「──ッ!」


「痛すぎて、わりぃが、何言ってるか分からないんだわ……」


 ブルーノさんは握っていた剣をその場に投げ捨てると、すぐに押さえるように両手を傷に当てていた。

 まぁ、あれだ。ブルーノさんに悪いことしちまったな。皆にも謝らないとだな。


〘まだれす! 勝手にあきらめるら、女神の名にかれれ、らすけますかられ!〙


 頭にフライちゃんの声がするが、俺の意識のせいなのか、それともまだフライちゃんが酔っ払ってるからなのか、よく聞き取れないんだよな。


 すごく眠みぃ、4日間、徹夜してた時と似た感覚だ……やばいな、こりゃ。


────

───

──


 俺が意識を取り戻したのは、真っ白な小さな部屋だった。

 ベッドに寝かされた状態で、どこかフライちゃんと最初にあった時の感覚に似てるように感じる。

 1つ違うのは俺の寝てるベッドの周りを嫁ちゃん達が囲んで()()して寝ていた。さらに言うなら、部屋の隅や床にも仮奴隷となったナギ達が眠っていた。


「キンザンさん……! 皆、キンザンさんが起きたわよ!」


 ベリーがすぐに目を覚まして、叫ぶとその場の全員が一斉に目を覚まして立ち上がり俺へと駆け出して来る。


「お、落ち着いてくれ、先ずは皆に言わないといけないことがある本当にごめん、悪かった」


 ベッドで上半身を起こした状態での謝罪になったが、俺は今伝えないと駄目だと思い、できる限り深く頭を下げた。


「オッサン、そんなの、そんなのいいんだよ、死んだかと思って、本当に、本当に心配したんだからな!」


 ミアの目は腫れ上がっていて、頬も涙が通った痕がしっかりと残っている。


「鬼を泣かすなんて、オッサンは本当に本当に心配ばっかり掛けやがって、でも本当に良かった」


 そんな一言が俺に向けられる言葉なのだから有り難い以外の言葉が浮かばない。

 自分の知識の儚さを呪いたくなる、もっといい言葉をもっと何か違う言葉を、そんな思考する意味が無いことは既に理解してるのに探してしまう。


「なんか、いい言葉が出てこないもんだな。本当にありがとうな」


「なに、2人だけの世界を作ってるのにゃ〜! ニア達もいるにゃ! 心配したにゃ!」

「そうです。ご主人様のそういう所が本当に駄目だとずっと考えておりました。もう少し皆様を私も含めて、見て欲しいものです」


 ポワゾンとニアに言われて改めて皆を見れば、未だに心配そうな視線をこちらに向けている。

 皆にもしっかりと謝りながら、事の顛末と今の状況について説明してもらうことにした。


 数時間前、意識を失った俺の姿を見た嫁ちゃん達と仮奴隷達は怒り狂い、一触即発を絵に描いたような状況になっていた。

 ブルーノさんを含むその場の警備兵達も戦闘態勢に入り、僅かな動作で後戻りのできない状態になる一歩手前になっていたそうだ。


 耳鳴りが響く中で互いの言葉は聞き取れず状況だけが支配するその場で冷静な判断が可能な者はいなかった。

 意識を失った俺の存在だけが物語る状況は明らかな最悪を予期させた。


「頼む、キンザン、目を開けろ、開けてくれ!」


 ブルーノさんの叫びすらその場の誰にも届くことはなかった。

 しかし、そんな状況でフライちゃんが片手を伸ばし、光の柱を空に輝かせた瞬間、全員の視線が空に集められる。

 一瞬、空に留まった光が閃光となり、その場に光の雨が降り注ぐ。

 降り注いだ光に当てられた者から傷が癒されていき、その光は俺にも降り注いでいた。


 その結果、俺の傷は塞がり、その場にいた全員の耳鳴りも治まっていく。


 睨み合っていた両者も耳鳴りが無くなれば、警備兵が「落ち着け! 今争ったら大変なことになるぞ!」といった叫び声がその場に響く。


 ミア達側からは「オッサンを殺したなッ! 絶対にお前ら全員を殺してやるッ!」と言った恨みのこもった叫び声が入り乱れていたらしい。


「キンザンは生きてる。意識を失ってるだけだ! 誰か手をォォォォォォ! 早く来てくれッ!」


 そんなブルーノさんの叫びに先頭でブチ切れていたミア達が駆け寄り、俺は一番近くにあった教会へと運ばれることになったらしい。

───

──


 “ガチャ”っと扉が開かれる音と同時に話が終了する。


 入ってきたのはブルーノさんだった。そんな彼の後ろには少し警戒した様子の部下が2人同行していた。


「目覚めたみたいだな、本当に良かった。これで一安心だ」


「ブルーノさん、何が良かったんですか。本当に痛かったんですよ?」


「それに関しては本当に済まなかった。さらに言えば、本当に生きてて良かった。としか言えない状態でな。敬語はやめてくれ、ブルーノで構わないし、普通に喋ってくれ」


「あ、はい? なら、そうさせてもらうが、困った顔してどうしたんだ?」


「理解が早くて助かるよ。だいぶ、話しやすくなったぞ。それでだが……キンザン、アンタが倒れてから、大変だったんだよ。説明するから、少し椅子を貸してもらえるか?」


「ああ、構わないよ。みんなもそんな睨むなよ、可哀想だろう」


 ミアを始めとした獣人、亜人種といった部屋にいる全員が敵に向ける殺気混じりの視線を向けており、ブルーノに同行してきた警備兵達は身を震わせていた。


「頼むから皆、やめてやってくれるか? 話が進まないからな」


「オッサンが言うなら、いいけど何かあれば、八つ裂きにするからな!」


 ミアが落ち着くと、その場の全員が静かになり、唸るような声が一瞬で静まると静寂が室内を包み込む。


「ぎゃ、逆におっかねぇな……まぁ、話させてもらうとしよう。お前達は、キンザン殿が意識を取り戻したことをすぐに[バリオン]領主 エヒト・ダーノ様に報告、同時に[バリオン]冒険者ギルドと調理師ギルドにも連絡を入れろ、急げ!」


「「はい、すぐに!」」


 慌てた様子で扉から走っていく2人の警備兵、ブルーノ1人になっちまったが、良かったのか?


「慌ただしくて済まないな。これでオレ達、警備兵団も死罪を免れたよ」


「話が見えないんだが? なんでエヒトさんに?」


 ブルーノは説明をしてくれた。


 俺が倒れてすぐに[バリオン]に身元確認を行っていた。

 確認した際に内容説明を求められ、説明をしたところ、領主のエヒトさんの知り合いであり、調理師ギルドの所属で竜切り包丁を完全に使いこなす数少ない料理人である事実が判明したそうだ。


 さらに冒険者ランクは低いが単独でオークジェネラルを討伐する実力者であることを冒険者ギルドから説明された。


 説明する度に、殺気に近い何かを向けられ、領主エヒトさんからは、毎日連絡するようにと念を押されたらしく[バリオン]に定時連絡に向かう際もかなり厳しい視線に晒されていたらしい。


「本当に、聞けば聞くほど大物で本当に焦ったぞ。しかも、国王が食べた竜料理の肉を捌いたのがキンザン、アンタだって話じゃないか?」


「何の話だ?」


「いや、今回の王宮で開かれた晩餐会のメイン料理の話だ。国王が絶賛した流れの竜切り包丁使いって話の正体がアンタとか本当に心臓に悪すぎる話だ」


 あの肉、王都に運ばれてたのかよ、しかも知らない間に王様とかが食べてるとか……切る前に煙草吸っちまったけど、大丈夫だったかな?


 てか、熟成したら分けてくれるって話だったが、無理そうだな……みんなで食べてみたかったんだがな。

 こんな時に、考える話じゃないが、少し残念だな。


「まぁ、とにかく、領主さんからの圧力に加え、各ギルドからの圧力、さらに国王様が褒めてたって竜切り包丁使いと、本当にヤバい奴がヤバいことになったって話だな」


「そいつは悪かったな、なら、後で俺からも挨拶に行かないとな」


「そうしてくれ、それとあの日の結果を話せば、ギリナスは汚職と賄賂、不当な罪を擦り付けて冤罪を作り上げていた罪で職を解任、今は警備団の地下牢に拘束中だ」


 ギリナスは汚職の証拠が大量に発見された。同時に汚職に関わっていた役人も芋ずる式に拘束される形となり、前代未聞の汚職事件に発展して今も次々に関係者が拘束されているようだ。

 警備兵だけでは手が足りず、中核の人物や権力者などには、王国騎士団も動き出しているそうだ。


 結果だけ見れば、王国を巻き込む大事件になっていた。

 ただ、飯を食べに行っただけなのに……なんでこうなったんだか。


「それは、なんか、色々悪かったな」


「悪くはないさ、アンタがなんかの力で全部表に出させたんだろ? そうじゃなきゃ、こんなに上手く話が進む訳ないからな」


「はは、多分、女神フライ様の力かな……」


 そういえば、ずっとフライちゃんの姿が見えないような?


「ブルーノ、悪いな。あとミア、フライちゃんは?」


「うーん、フライの奴は、スゴい責任感じちまって、先に屋敷に戻って引きこもっちまったんだよな……交代で話に行ってるんだけどさ、なかなかな」


 どうやら、姿が見えなかったペコとグーの二人が今はフライちゃんの元に向かっているらしい。


「そうなのか、わかった。すぐに戻るから転送陣に連れてってくれ、頼む」


 話を聞いてすぐに移動しようとして、ベッドから立ち上がろうとした瞬間その場に倒れ込んでしまった。


「危ないって! オッサン!」


 咄嗟に下にミア、ニア、ドーナの3人が滑り込み、頭上からはナギや蜘蛛の亜人達が糸や尻尾で支えてくれた。


「はあ、キンザンは本当に危なっかしいにゃ」

「なの! マスター、“メッ”なの!」


「悪かった、でも行かないとなんだ。頼む連れてってくれ」


「わかったから待てよ。オッサンはボクが連れてくよ」

「ダメにゃ! ミアがいなくなるとなんかあった際に奴隷さん達が止まらないにゃ! だから、ニアが連れて行くにゃ〜」

「いや、ニアも同じだろ! ニアがいないと獣人がキレたら止まらないだろ!」


「なら、ドーナが行くなの!」

「「いやいや、無理だろ(うにゃ~)」」


 3人が言い争いをしている間にナギが俺を抱き抱えてくれた。


「ナギが連れてく。皆、忙しいし、大変そうだから」


「なら、ドーナも行くなの!」

「「だーめだ!(にゃ!)」」

「やなの〜!」


「早く行ってあげなさい。キンザンさん。それがいい男ってもんよ」

「ですね、ご主人様を頼みます。ナギ、必要になるかもしれないので“この袋”を預けます。必要だと思ったら中身をフライ様に渡してください」


 結局、ミア、ニア、ドーナの3人は居残りとなり、ポワゾンとベリーにその場を任せることを決めてから、すぐにナギに転送陣へと向かってもらう。

読んでくださり感謝いたします。

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