44話、女神フライと転送陣、フライちゃんは、頑張ります
いきなり笑ったフライ像に一同が驚愕の表情を浮かべた瞬間、女神フライ像が突然崩壊し始め、俺を含め、全員が口を開けたまま固まった。
「な、な、な、女神の像が……な、貴様らッ!」
そんな声が向けられたが、俺の視線は崩れた女神像に向けられていた。
いや、だってさ、女神像が崩れたそこに尻もちをついたフライちゃんであろう、存在がいるんだよな……
「貴様らッ! これは天罰だ貴様らが──」
「いや、悪いが、それどころじゃないんだ、悪い」と言いながら、成金神官を無視して崩れた女神フライ像に向かって歩みを進めていく。
「お、おい、フライちゃん……だよな?」
なんで疑問形になってしまうかというと、俺の知ってるフライちゃんとはスタイルや身長がかなり違うサイズになっている。
簡単に言えば、知ってるイメージより、かなり幼くなっていたからだ。
ニアとミアやドーナと変わらないちびっ子になってるんだよな……
「お久しぶりです。きんざんさん。やらかしてしまいましたね……困ったものです」
いや、やらかしたとかじゃなくて……寧ろ、困ってるのは俺なんですが。
「貴様らッ! そのガキも仲間か! 女神像に悪戯など、許されんぞ!」
成金神官がフライちゃん相手に、なんか叫んでるけど、本当に黙ってくれないかな……
「はぁ、とりあえず……幾らなんだよ?」
「貴様に払える金額な訳ないだろうが! 貴様らもその悪戯したガキも全員奴隷落ちさせてやるからな!」
「お前、本当に神官かよ……発言がエグいぞ? で幾らなんだよ?」
成金神官が俺達全員の財布袋を確認する様に視線を向けてくる。
俺が全ての金銭を【ストレージ】で管理してるため、見た目では判断ができないはずだ。
「ふん! 即決で金貨200枚だ! どう見ても貴様らみたいな奴が払える金額じゃないだろう!」
あ、意外に安いな……なら、勿体ないが、フライちゃん像のために払って終わらせるか。
「ほい、200枚な、中身は自分で数えてくれ」
【ストレージ】からスっと金貨100枚の入った袋を2つ成金神官に手渡した。
「な、中身が違ってたら、ゆ、許さんぞ! 誰か! 数えるのを手伝え!」
慌てて、シスターを呼び出し、2つの袋を同時に声を出して数えていく。
「98……99……100ま、枚……」
成金神官が震えながら、数え終わると同時にシスター側も数え終わり、こちらに苛立ちを顕にする様に視線を向けてきた。
「ひ、一桁ま、間違えたな、女神像が200枚程度でできるわけがないな……」
「一桁か、まぁ、いいや、ならホラよ。もう後出しジャンケンは無しだからな」
悩まずに金貨の袋を18個を取り出し、その場に置くとフライちゃんと嫁ちゃん達、全員をつれて教会から外に向かって歩いていく。
「ま、まて! まだ数え終わってないぞ!」
「はぁ、俺はズルとかしないから、あとさ、もしも、女神像をちゃんと作ってなかったらさすがに俺も我慢しないからな?」
「キサマ、偉そうに!」
「あと、貴様じゃなくて、冒険者で揚げもん屋『フライデー』の料理人、キンザンだ。アンタの名前は知らないけど、真面目にやれよな?」
「き、キンザン……神父様、いけません! あのオークジェネラルを討伐した冒険者です……『チームフライデー』のリーダーです」
なんか、シスターは俺のことを知ってるみたいだな?
「な、そんな馬鹿な……だが、そうだとしても、こんな大金を冒険者が簡単に出せるはずが!」
「他にも貴族の……伯爵様を領主様と結託して、爵位を失わせたと噂になっていた。じ、人物です……」
唐突に説明されて、成金神官改め、成金神父は顔を青ざめさせて下を向いた。
それよりも、なんか凄い噂が一人歩きしてるんだが、領主のイヒトさんと結託なんかしてないから、爵位が失われたのも裁判だから!
そんな心の叫びを丸呑みにしてから、俺達は教会から出て中央広場に向かっていく。
広場に向かう道中で、やはりというか、やっぱりかといった質問がミア達から問いかけられる。
「その女の子は誰なんだよ? オッサンはボク達の知らないところで何してんだよ!」
棘しかないな、久々のツンツンだな……他の嫁ちゃん達もベリー以外は疑いの眼差しを向けてきてるし。
「皆、紹介するよ。この子はフライちゃんだ。早い話が女神様だな」
「いやいや、オッサン? さすがに姿が違い過ぎるから、騙されないぞ」
ミアが両手を組んで、俺の正面に移動するとニアとドーナも真似をして道を塞いでくる。
赤髪のミア、ケモ耳のニア、和風黒ナースのドーナ、戦隊モノなら、間違いなく敵役だな……
「みんな、キンザンさんは嘘は言ってないのよ。私もあったことがあるから分かるけど、見た目は幼くなってるけど、女神フライ様よ」
ベリーの発言に俺に向けられていた疑いの眼差しが一斉にフライちゃんへと向けられる。
「本当に女神様なのかよ!」
「凄いにゃ! ニアは初めて女神様を見たにゃ」
「女神様ってよく分からないの! でもすごいの!」
3人の発言にアワアワしながら、俺の後ろに隠れるフライちゃん。
「あ、あの……そんなに見られたら、は、恥ずかしいのですが……」
相変わらずの恥ずかしがり屋だな……
「まぁ、そんな感じだから気楽にやってくれ」
自然と視線が集まるがまぁ、しゃあないな、女神だし、見られるのは有名税みたいなもんだな。
「はぅぅ……だから、きんざんさん、心で考えないでください……有名税とか……」
ありゃ、こちらでも、心が読めるんだな……気をつけないとな。
「本当に気をつけてください……」
ただ、今の問題は、転送陣を使えなくなっちまったことだな……せっかく、みんなが楽しみにしてたのに、やっちまったな……
「あ、あの……その話なんですが……あの転送陣を使えるようにしてあげたくて、皆さんの所に来ちゃったんですよね……」
「どういう事だ?」
「あ、あの……女神の仕事を引き継いでる最中にキンザンさんを覗いたら、大変そうだったので……」
フライちゃんは転送陣その物がスキルで作れる事実を教えてくれた。
そのスキルはフライ本人も持っているらしい。
「へぇ、流石、女神様だな。 転送陣を自分で作れるなら、大儲けできるじゃないか」
「うーん、それがそうもいかないんですよね……転送陣って魔力ってやつと違って、わたしの場合は、信仰心からなるんですよ」
「まあ、女神だしな?」
「だからですね、信仰心がない人や、信じてない人は飛ばせないんですよね……」
少し考えてみたが、とりあえず女神フライちゃんだと理解してる俺とベリーが実際にフライちゃんの作った転送陣に乗って見ることに決まり、一度、屋敷へと歩を進める。
当たり前だが外でいきなり消えたりしたら、少なからず、騒ぎになるかもしれないしな。
屋敷に戻ってから、使ってない地下のワインセラーへと続く階段を全員で降りていく。
「とりあえず、転送陣って広い部屋が必要なのか分からないから、使ってない此処を使ってくれ」
「ワインセラーですか、本当に広い家をもらったんですね。びっくりですね」
びっくりと言いながら、冷静なんだよな。まぁ頭の髪の毛がぴょんぴょん動いてるから、ウキウキなんだろうな。
「うぅぅぅ、なんで、そういうことを考えちゃうんですか! 恥ずかしいと言ってるのにぃぃ」
両手を顔にして、その場にしゃがみ込むと顔を真っ赤にしている女神のフライちゃん。
そして、嫁ちゃん達から疑われるような刺さる視線を向けられてしまった。
「ま、まて、俺はなんにも……やましいことは考えてないからな!」
「どうだかな? オッサン、ヘタレなのに変に勢いつくと止まらないしな?」
「それは言えるにゃ……あの時とか、あの日とか、激しいケダモノだったにゃ」
待て待て! なんで、ミアとニアの発言に全員が「うん、うん」ってなるんだよ!
「仕方ありません。ご主人様は性癖を拗らせたケダモノですから、野獣もご主人様には敵いませんからね」
「なの〜ッ! やっぱりマスターはケダモノだったの!」
ドーナ、頼むから……決めポーズみたいに両手をあげてびっくりするのはやめてくれ……
「話を戻していいか? フライちゃん大丈夫か?」
「だ、だ、大丈夫です……」
なんで、真っ赤になってるんだ? 熱でもあるんじゃないか?
「ち、違います……それより転送陣でしたね。これだけの広さがあれば、問題ありませんよ」
それからすぐにフライちゃんは、スキルだろうか、手を広げながら動かすと、光の円が地面に描かれていく。
素直に驚かされたし、転送陣を最初に作り出した後、円の中で演舞を踊るように転送陣が作られる光景は圧巻だった。
フライちゃんの舞が終わると、円の中心から文字が円に根を伸ばすように広がり、文字の渦が作られると光が収束して転送陣が完成した。
「ふぅ、無事に出来ましたよ……すこし、つか……れました……」とフラフラになるフライちゃん。
すぐに傍に駆け寄り、フライちゃんの身体を支える。
「大丈夫か、フライちゃん?」
「えへへ、頑張りすぎてしまいました……」
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