42話、旅行に行くなら何処にする?
ドラゴン肉のせいで、風呂にカンバックさせられる事3回……流石に綺麗になったな。
悲惨だったのは臭いが落ちなかったため、二回目から嫁ちゃん達に、たわしでガリガリと全身を洗われたことだ。
スポンジも人数分用意しようと誓った瞬間だった。
色気のない風呂を全身真っ赤になりながら、終わらせて、たわしからのダメージを回復ポーションと【自己再生】で復活してから、リビングに移動する。
「ふぅ……酷い目にあったな」
ため息混じりに念願の煙草に火をつけて考えを整理する。
今回の収穫は当たり前だが、肩書きだけでなく、実際に『ドラゴン』という存在がこの世界には存在してることと小竜だとしても、それを討伐出来るくらい強い冒険者がいることだ。
だが、もっと重要なことがあった。
『調理師ギルド』でルンダが言った『転送陣』というワードだ。
これについて、詳しく調べたいってのが本題だな。
バタバタして、ルンダに聞きそびれたが、人も転送できるのかとか……。
この[バリオン]以外の街や他の場所の情報がないまま過ごしてる事実もかなりヤバい話なんだよな。
複雑な表情で両手を組み、なるべく悩んでるようにして考える。
見た目から入れば、なにか思いついたり、考えがまとまる気がするんだよな。
「オッサン? さっきから、なに変な顔で悩んでんだ?」
背後から、両手に木製のコップを持ったミアが声をかけてくると、テーブルにコップを置いた。
「はい、オッサンの分、水だけど風呂上がりだし、飲みなよ。それよりさ、なに悩んでたんだよ?」
置かれた水の入ったコップをグッと飲んでから、質問に答えていく。
「いや、今日は『調理師ギルド』に行ってたんだがな、そこで『転送陣』ってヤツの話を聞いてな?」
「あぁ、アレか……ボク、アレ嫌いなんだよなぁ、飛ばされた先で気分悪くなるんだよなぁ」
あ、アレって、人もやっぱりいけるんだ?
「ミアは『転送陣』を使った事あるのか?」
「まぁ、大概の冒険者なら、一回くらい、試しに使ったことあるんじゃないかな? 馬車の倍の値段はするけど、すぐに目的地に行けるからね。到着してから狩りやクエストで稼げば元がとれるし」
すんなりと悩みが解決してしまったが、もう一つの気になるワードも聞いておくか。
「なら、小竜ってどんなやつかとか、知ってるのか?」
「いきなり、話が変わりすぎだけど、小竜ってワイバーンとかだろ? 知ってるは知ってるけど、それがどうしたのさ?」
小竜はどうやら、俺の知ってる竜とは少し違うらしい。
物語に出てくるような。巨大な体にドデカイ翼なんかは無いらしい。
「なんだか、話だけだと蜥蜴みたいに聞こえるが、ワイバーンには羽があるんだろ?」
「あるけど、なんて言うか……空は飛べないんだよな、ワイバーンって」
「え? ワイバーンだよな?」
「逆にオッサン、ワイバーンを龍と勘違いしてないか?」
竜と龍の言葉に躊躇いが生まれたがそのまま説明を聞いていく。
「いいか、龍は羽があって、空も飛ぶし、馬鹿みたいに強いんだよ、それこそ見つけても刺激しないようにして、追われた時は大人しく食われて他への被害を減らせってレベルだな」
「逃げる事も禁止なのかよ!」
「当たり前だろ! 相手が龍なら、出会った時点で神頼みだよ。下手に動いて見つかれば終わりだからな」
絶対に龍と会うようなフラグは立てないようにしないとな……そんなヤバいやつとやり合う気ないからな。
「それで、ワイバーンの話だが、ワイバーンってどんなやつなんだ? と、言うより龍以外の竜について教えてくれ」
そこから教えてもらった内容を簡単に纏めるとこんな感じか……
『竜』とされる個体は陸上で活動する個体のことで、俺が捌いた肉もそれらしい。
水の中に住む竜は『シーサーペント』と呼ばれてるらしい。
陸上なのに『ワイバーン』か、なんか、残念ドラゴンだな……
「2人とも話は終わったかしら、あ、キンザンさんてば、灰が落ちてるじゃないの、集中しすぎよ?」
「話が長いにゃ〜ニアもキンザンと沢山、お話がしたいにゃ〜」
「ドーナも話したいの〜」
そんな嫁ちゃん達の賑やかな会話を止めるように、ポワゾンとツインズの2人がお茶を持ってリビングに入ってくる。
「いったん、お茶に致しましょう。ミア様もずっと説明をされている見たいですので、紅茶をどうぞ」
ポワゾンの提案に紅茶を受け取るとカラカラになった喉に程よい温度に調節された紅茶を流し込んでいく。
「美味いな。ポワゾンありがとうな、もしかして、ずっと話してたから、紅茶が冷めちまったのか?」
「いえ、紅茶に水を一杯入れて温度を調節致しました。紅茶そのものは先程入れた物にございます」
軽く頭を下げるポワゾンに再度感謝を伝えて、全員が紅茶を楽しんだ後に質問をしていく。
「なぁ、転送陣ってどこにあるんだ?」
質問に対して、ドーナとツインズの2人は俺同様に悩んで首を傾げたが、他の嫁ちゃん達は驚きと呆れた表情をこちらに向けていた。
「キンザンさん……『調理師ギルド』に所属したのよね、それなら簡単に説明されてるはずよ?」
ベリーの言葉に俺は忘れ去られた記憶を何とか蘇らせようとしたがやはり記憶にゃ御座いませんなんだよな……
「ははは、まじに分からないわ……」
「仕方ないにゃ、キンザンはたまにお馬鹿さんだにゃ! ニアが教えてあげるにゃ」
「お、教えてくれるのか?」
「いいにゃ! よく聞くにゃ。街の端のそばに行ったら、金をターンして、びゅーんなんだにゃ!」
まったくわからん……
「わるい、もう少し分かりやすく頼む」
「だから、街の端に行って、お金をポーンとしたら、ビューンなのにゃ! 覚えるにゃ!」
「うーん、済まない、まったくわからん……」
ベリーがみかねて、説明をしてくれた。
「仕方ないわね。ニアが言いたいのは、街外れの教会に転送陣を管理してる場所があるのよ。教会に寄付をして使うのが転送陣ね。あまり使われてないけどね」
「そうなのか? ミアは使えば便利だって言ってたんだがな?」
「それは寄付ができる人の話しよ、複数パーティで転送陣を使うなんて、幾らかかるか分からないもの」
予想よりも高い金額が必要なのか?
「ちなみに、1人幾らくらい掛かるんだ?」
「そうね、1人、金貨1枚(20000リコ)って感じね。冒険者のパーティー単位で考えれば赤字になりかねない金額ね」
全員の顔を見ながら、人数分の金貨を想像していく。
「ふむふむ、この場の全員合わせて金貨8枚か……悪くないな?」
「はぁ、普通はそうならないのよ? キンザンさん、最近、金銭感覚バクってるわよ?」
「まぁ、オッサンだからな、予想外で丁度いいんだよ」
両手を頭の後ろに組んでミアがそう言うとその場の全員が頷いていたのは軽くショックな光景だったが反論できないんだよな。
「まぁ否定はしないよ。つまり、常識的なこの場の全員が『転送陣』を使って遊びにいくのは反対なんだな、残念だなぁ」
意地の悪い言い方をして、反応を見ようとした瞬間、ニアとドーナが慌てて足にしがみついてくる。
「反対じゃないにゃ! キンザンは賢いにゃ!」
「なのなの! マスターは凄いの〜!」
素晴らしい手のひら返しに、むしろ感心したくなる。
それに釣られて、ペコとグーの二人はアタフタしてるし、ポワゾンは様子見か? ベリーはなんか悔しそうな表情を浮かべてるし、ミアは素直になれない感じか?
「俺はみんなと、遊びにいきたいんだけどなぁ。俺のわがままにみんなが付き合ってくれたら嬉しいんだが、みんなダメかな?」
とりあえず、ごめんねスマイルだな。
「そんなに言うなら、ボクはオッサンと行きたいかな……」
「私も……キンザンさんが、いいなら……」
「ワタシはご主人様の所有物、兼、嫁ですから、ついて行きます……ぽっ……」
「「私達もよろしいのでしょうか?」」
「おう、みんなで行きたいからな。なら今からどこにいくか話し合おう」
みんな素直で助かるな。行き先を決めると話したら、笑顔が戻ったな。
女心は秋の空っていうが、世界が違っても同じらしいな。
ただ、行く場所によって若干金額が変化するらしいから、どこを選ばれても構わないが何を持っていくかだけは決めないとな。
その日、夜遅くまで、嫁ちゃん達の会話が続いていく。
俺はそんな様子を庭から眺めつつ、煙草に火を灯すと空を見上げる。
「綺麗な星空だな、明日は晴れそうで安心だな。さて、どこに決まることやら、ふぅ……」
吸殻を“リサイクル袋”に放り込み、屋敷へと戻る。
扉を開くと、嫁ちゃん達の楽しそうな会話が聞こえてきたので、俺は“買い物袋”から“夜の紅茶”の1.5ペットボトルを取り出して、コップ注いでいく。
「ほら、これでも飲んで一服入れろよ」
テーブルに“夜の紅茶”を置いていく。
「ありがとうな、オッサン。それよりさ、オッサンは、いきたい場所とかないのかよ?」
「え、俺か?」全員の視線がこちらに向けられる。
たぶん、意見が割れてんだな……
「お、俺は、みんなと出かけられたら幸せなんだよな。だから、俺に気を使わずに決めてくれ、楽しみにしてるからな」
速攻で撤退する。巻き込まれたら、ヤバいと本能が叫んでやがる。
とりあえず、みんな用に風呂を沸かしてやるか。
俺の1日はこうして終わりに向かっていく。
嫁ちゃん達の話し合いは夜中まで続いていたので先に寝かして貰うことにした。
明日の朝に何処になったか聞くのが楽しみだな。
「とりあえず、おやすみ……」
意識が睡魔と共に夢の世界へと誘われていく。
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